東証グロース · 4493 · 12月決算 Cyber Security Cloud, Inc.
サイバーセキュリティクラウド
Webアプリケーションを守るサブスクリプション型セキュリティソフトウェア
終値
¥1,7215/27
24ヶ月高値 ¥2,425 から −29% · 24ヶ月安値 ¥1,342 から +28%
時価総額 / EV
¥176億 / EV ¥143億
ネットキャッシュ ¥34億 = 時価総額の 19%
EV / EBIT · 予想
11.9x
企業価値 ÷ FY2026会社予想営業利益
ROCE · 実績
24% · FY2025
営業利益 ÷ 使用資本 · ROE 27%(有報開示値)
営業利益率 · 全社
26.0% · Q1 FY2026
通期会社予想 20.0%
発行株式 & 浮動株
1,025万株 · 自己株控除後
浮動株 ~80% · SilverCape 9.5%(Q1 FY2026期末)
はじめに

サイバーセキュリティクラウドとは何か

サイバーセキュリティクラウド(CSC)は、企業のWebアプリケーションを不正アクセスやサイバー攻撃から守るサブスクリプション型のセキュリティソフトウェアを販売している。主力製品は2つ。攻撃遮断くんは自社運用のクラウド型WAF(Webアプリケーション・ファイアウォール)で、導入企業のWebサイトへの攻撃を検知・遮断する。WafCharmはAWS上のWAFルールを自動で管理するサービスで、AWSを利用する企業がセキュリティ設定を自力で運用する手間を省く。

顧客は月額または年額のサブスクリプション料金を支払い、売上の約90%がこのストック型収益で構成される。解約率は攻撃遮断くんが月次MRRベースで1.03%、WafCharmがユーザーベースで0.94%。Q1 FY2026時点のARR(年間経常収益)は¥51.9億、営業利益率は26.0%。上場企業約4,000社のうち、売上・営業利益ともに6期連続で前年比+25%超の成長を記録した企業はCSCを含め2社のみ。

投資論点はシンプルに整理できる。CSCは独立したアプリケーション・セキュリティのプラットフォームを構築しているのか、それとも事業の大部分がAWSに依存しすぎているのか。以下のレポートでは、株価の推移、市場で議論されている3つの問い、今後12ヶ月のカタリスト、そしてバリュエーションのシナリオを順に整理する。

01 · 株価レジーム

この2年間、株価はなぜ動いたか

2024年5月以降の株価を4つの局面に分けて整理する。¥2,300圏から¥1,300への下落、その後の¥1,700圏への回復。それぞれの局面で何が起きたかを追う。

4493 vs TOPIX · 日足ローソク+出来高
高値 ¥2,425 · 2024-07-17 安値 ¥1,342 · 2025-04-07 現在 ¥1,721
サイバーセキュリティクラウド · 日足 60日移動平均 TOPIXリベース(1308.T) 出来高

01 · 高値圏 2024年5月から8月にかけて、株価は¥2,200–2,400圏で推移した。FY2023の売上+35%・営業利益+43%を背景に、クラウド型WAF国内出荷金額シェア首位という位置づけとSaaS銘柄への資金流入が重なり、PER40–50倍が維持された。出来高は薄く、浮動株比率~80%にもかかわらず機関投資家のアクティブなポジション構築は限定的だった。

02 · 調整局面 2024年9月から2025年4月にかけて、日銀の利上げ示唆と米テック株の調整が国内グロース株全般を圧迫し、4493は¥2,300から¥1,300まで−43%下落した。PERは20倍を下回る水準に圧縮され、EV/EBITDA13倍台に沈んだ。前期末時点の主要株主Vector Group International(臨時報告書2025年2月12日提出)の退出が需給悪化を加速させた。

03 · 中計起点の回復 2025年3月、CSCはJICVGI Opportunity Fundへの第三者割当増資(¥18.5億、940,000株)を実行し、M&A加速のための資金を確保した。続く2026年2月13日、CSCは中期経営計画を公表し、2030年12月期に売上¥200億・営業利益¥40億を目指すと発表した。FY2025比4倍の目標と第三者割当が成長投資モードの本格化として受容され、6期連続の売上・OP+25%超成長の実績がクレディビリティを裏打ちし、株価は¥2,000圏を回復した。

04 · 現時点 Q1 FY2026の営業利益率26.0%(会社予想20.0%を+6pt超過)と、5月22日公表の自社株買い(発行済株式の2.43%にあたる上限25万株・¥4.5億、2026年5月21日時点の自己株式控除後ベース)が下値を支える。一方で通期予想のOP成長率は+8.8%と前年の+42.5%から大幅に減速しており、今後4四半期で確認すべきは3点に集約される。第一に、Q1の26%マージンが通期で22%以上を維持できるか。第二に、ARRの約57%がAWS連動製品(WafCharm ¥18.3億 + Managed Rules ¥7.6億 + CloudFastener ¥3.8億 = ¥29.7億)である構造が、AWS自身のWAF管理機能強化によって棄損するか。第三に、2030年売上¥200億の中計がオーガニック成長で到達可能な水準なのか、¥50–100億規模のM&Aを前提とするのか。

02 · 投資家論点

市場で議論されている3つの問い

CSCの投資判断は3つの問いに集約される。それぞれの問いに強気派と弱気派の見方を並べ、どの開示が論点を決着させるかを示す。

論点 01 · マージン
Q1の営業利益率26%を維持できるのか、それとも下期の投資増で20%に戻るのか。
BULL
強気派は、インフラコスト最適化(サーバー契約見直し)で粗利率+3.8ptの改善が恒久的であること、AIによるサポートコスト削減が進行中であること、売上¥1,393百万に対しSG&A¥586百万——人員179名で売上高人件費比率が改善基調にあることを観察している。次の確認ポイント:H2の営業利益率が22%以上を維持し、通期着地が会社予想の20.0%を2pt以上超過する場合である。
BEAR
弱気派は、脆弱性診断スポット収益が上場来最高であること、下期にR&D・広告投資の本格化と新卒採用コスト増を予定していること、会社自身が通期20.0%を据え置いている以上、H2は投資加速でマージンが後退する見通しであることを観察している。弱気シナリオの信憑性が高まるのは、H2の営業利益率が20%を下回り、通期着地が会社予想±1pt以内に収まる場合である。
論点 02 · プラットフォーム依存
AWSはCSCの成長を助けているのか、それとも脅かしているのか。
BULL
WafCharmはAWS WAFのルールを自動管理し、Managed RulesはAWS Marketplaceで販売される。いずれもAWS課金に統合され、乗り換えコストが高い。AWS Premier Tier15社中13社がCSCパートナー。4,035ユーザー(2025年12月末、100カ国超)がManaged Rulesを利用。国内ISVとして初のSecurity Incident Response Ready認定。AIエンジンは年間20億件超(2025年実績)の攻撃データを学習し、新規参入者が数年では追いつけないデータ優位を持つ。AWSが次の大型WAF機能拡張を出した後、WafCharmの解約率が2四半期横ばいなら、モートは維持される。
BEAR
CSCはARRの57%を載せるプラットフォームを自社で支配していない:WafCharm ¥18.3億 + Managed Rules ¥7.6億 + CloudFastener ¥3.8億 = ¥29.7億(全社ARR ¥51.9億中)。AWSがAI生成のルール提案を自社コンソールに追加するだけで、WafCharmの差別化は縮小しうる。Marketplace手数料率は非開示。マルチクラウド展開(Azure/GCP版は2024年投入)は初期段階。AWSの次の機能強化後、WafCharm ARR成長が2四半期連続で10%を割れば、プラットフォームがCSCの価値レイヤーを吸収し始めた兆候になる。
論点 03 · 中計成長
2030年までに売上を現在の4倍にできるのか。自力成長だけで届くのか、大型買収が必要なのか。
BULL
強気派は、国内サイバーセキュリティ予算が3年で2.7倍(¥2,560億)に拡大していること、能動的サイバー防御法案やASEAN展開が追い風であること、2030年の国内サイバーセキュリティ対応可能市場は¥3,000億に拡大する見通しで、CSCシェア6.6%は控えめな目標であること、6期連続25%超成長の実績が裏付けとなることを観察している。強気派の見方が裏付けられるのは、FY2027通期売上が¥75億を超え、オーガニックCAGRが20%以上に加速する場合である。
BEAR
弱気派は、オーガニックCAGRが~18%にとどまることを観察している。CSCはFY2030目標の¥200億のうちM&A寄与分を開示していない。JIIの試算では、FY2026会社予想¥60億を起点にオーガニック成長率~18%が続く場合、FY2030時点のオーガニック売上は約¥115億。残り約¥85億を買収で補う計算になる。これまでの実績はM&A 2件+子会社設立1件(各¥5億未満)にとどまり大型M&Aの統合能力は未検証であることも観察している。このリスクが顕在化するのは、FY2027までに¥20億超の買収を実行し、統合後12ヶ月でのれん減損が発生するか、あるいは買収先のARR成長率が被買収前を下回る場合である(弱気シナリオ)。
03 · カタリスト

今後12ヶ月で何が変わりうるか

3つのカタリストを整理する。いずれもCSCの経営判断で加速できるが、それぞれにコストとリスクが伴う。

梃 01 · 収益梃
CSCは複数の製品で値上げを予定している。顧客あたり売上は増えるか、解約が増えるか。
ARR構成(Q1 FY2026, 百万円)
攻撃遮断くん
¥1,732M
WafCharm
¥1,826M
CloudFastener
¥384M
Managed Rules
¥763M
SIDfm + webtru
¥488M
合計ARR ¥5,194M · 前年同期比 +16.2%
WafCharmは基本料金+超過従量課金のモデルである。AIクローラーやLLM学習用ボットが顧客のWebサイトへのアクセスを増やしており、WAF検査イベントが増加。約30%のWafCharmユーザーが基本料金の通信量枠を超過し、自動的に従量課金が発生した。これはCSCによる値上げではなく、AIが生むWebトラフィック増に起因する構造的な単価上昇である。2026年内に複数製品で機能拡充と組み合わせた価格改定を予定しており、短期の解約率上昇リスクと中長期のARR加速を天秤にかける局面にある。確認すべきは攻撃遮断くんのARR成長率+4.7%——同製品はARR全体の33%を占めるが成長が停滞しており、価格改定がこの停滞を反転させるか、それとも解約率の上昇に吸収されるかを、Q3以降の四半期ARR推移で検証可能になる。
経営コスト
低(既存基盤への適用)
最早トリガー
2026年Q2–Q3
梃 02 · 事業梃
CSCはAIを3つの方法で使おうとしている。既存製品へのAI組込み、AI自体を守る新製品、社内業務のAI化。
AI戦略3本柱
AI for Security
実装済み
Security for AI
構想段階
AI-Native Org
推進中
AI Trust Board 2026年Q1設立 · CTO直轄
Cyneural(AI検知エンジン)やWRAO(自動ルール生成)は既に製品に組込済みであり、「AI for Security」の実装は進んでいる。次の成長軸は「AIを守る」側——AIエージェント監視、AIガードレール、AIガバナンスツール——にある。市場タイミングは合致するが、同領域の競合(Palo Alto, CrowdStrike, Wiz)はR&D予算が100倍超。確認すべきは、CSCがニッチなWAF隣接領域に集中し、グローバル大手と正面衝突しない製品設計を維持できるかどうかである。
経営コスト
高(R&D人材確保)
最早トリガー
2027年Q1
梃 03 · 資本梃
手元の¥36億をどう使うか。小粒なM&Aを重ねるか、大型案件に踏み込むか。
M&A・子会社設立実績と資金余力
Softec (2020.12)
~¥2.5億
Generative Tech (2024.10設立)
資本金¥0.09億
DataSign (2025年2月)
¥4.5億
手元キャッシュ
¥36.4億
グッドウィル毀損ゼロ原則 · パイプライン拡大中
過去のM&A 2件(Softec、DataSign)と子会社設立1件(Generative Tech)は全件統合後に成長しており、のれん減損はゼロ。第三者割当(JICVGI ¥18.5億)の使途はM&A加速と明示されている。手元¥36億はDataSign級(¥4.5億)の案件を5–7件実行可能な水準である。一方でJIIの試算ではFY2026会社予想¥60億を起点にオーガニック成長率~18%が続く場合FY2030のオーガニック売上は約¥115億、残り約¥85億を買収で補う計算になり、これまでの「規律ある小口M&A」路線と中計が要求する「規模の飛躍」は両立しにくい——確認すべきは、FY2027までに¥20億超の案件が実行されるか、そしてその統合が既存の規律を維持するかどうかである。
経営コスト
中(PMI工数)
最早トリガー
2026年H2
04 · バリュエーション

この株価から、何が正しければ投資が成立するか

以下はJIIの試算シナリオであり、会社の業績予想ではない。2026年5月27日終値¥1,721、FY2026会社予想営業利益¥12億、企業価値(時価総額から純現金を差し引いた値)¥143億を起点に、ARR成長率と営業利益率の組み合わせでレンジを算出した。

弱気シナリオ
¥1,200 – ¥1,400
−18% から −30%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~8–10x
ARR成長が10%台前半に減速し、AWS自身のWAF管理機能強化でWafCharmの差別化が棄損する。大型M&Aが統合不振でのれん減損が発生し、営業利益率は18%に後退、FY2026 OPは¥10.8億に留まる。3つの梃のいずれも具体化しない。
弱気帯の¥1,200–¥1,400は予想EV/EBITで~8–10xに相当し、国内SaaS類似企業の下限帯に位置する。Q1のスポット収益上振れが剥落し、下期のコスト増が想定通り発現する経路。
主なドライバー
  • ARR成長10–13%に失速
  • AWS WAF自動管理の競合化
  • 大型M&A統合不振
  • 営業利益率18%に後退
基本シナリオ
¥1,600 – ¥1,900
−7% から +10%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~11–14x
会社予想通りFY2026売上¥60億・OP¥12億を達成し、ARR成長16–18%が持続する。価格改定がQ3から小幅に寄与し、M&Aは小規模1件にとどまる。営業利益率は通期20–22%に着地し、3つの梃のうち1つが具体化する。
主なドライバー
  • ARR成長16–18%持続
  • 価格改定がQ3から小幅寄与
  • 小規模M&A 1件
  • 営業利益率20–22%着地
強気シナリオ
¥2,200 – ¥2,800
+28% から +63%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~16–22x
3つの梃のうち少なくとも2つが具体化する:価格改定とAIトラフィック増でARR成長が20%超に加速し、M&Aが成功し、プライム市場移行で機関投資家の買い余地が拡大する。営業利益率22–25%が定着し、EPS¥90超で予想EV/EBIT16–22xが正当化される。
強気帯の¥2,200–¥2,800は予想EV/EBITで~16–22xに相当し、中計の「2030年売上¥200億」パスに乗ったと市場が認識する経路。
主なドライバー
  • ARR成長20%超に加速
  • M&A成功 + プライム市場移行
  • 営業利益率22–25%定着
  • EPS¥90超・PER20–25x
SOTP · WAFコア事業
攻撃遮断くん + WafCharm + Managed Rules
Q1 FY2026 ARR(年率化)¥43.2億
成長率12–15%
想定 EV/Revenue3.0–4.0x
想定事業価値 ¥130–173億
SOTP · 成長事業
CloudFastener + IRDF + AIセキュリティ新規
Q1 FY2026 ARR(年率化)¥3.8億
成長率20–30%
想定 EV/Revenue5.0–8.0x
想定事業価値 ¥19–30億
SOTP · ネットキャッシュ + その他
SIDfm, webtru, 脆弱性診断, 余剰資金
ネットキャッシュ¥34億
その他事業 ARR¥4.9億
想定 EV/Revenue1.5–2.0x
想定事業価値 ¥41–44億
SOTP · 株主価値ブリッジ
想定株主価値レンジと理論株価
WAFコア事業(3.0–4.0x)¥130–173億
成長事業(5.0–8.0x)¥19–30億
ネットキャッシュ+その他¥41–44億
SOTP想定株主価値¥190–247億
自己株控除後株式数(Q1 FY2026期末)1,025万株
理論株価レンジ¥1,854–¥2,410
現在株価 ¥1,721 はSOTPレンジの下限付近。ベースケース中央値は ~¥2,130(現在値から約+24%)。
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