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代表メッセージ

初めて海外投資家との面談で通訳を務めたときのことは、今でもよく覚えています。

かなり緊張していました。80億円は8 billion。今なら迷うこともありませんが、当時は数字の桁を間違えないようにするだけでも神経を使いました。相手の話を聞き漏らさず、できるだけ正確に訳すことで精一杯でした。

その後、通訳を重ねるうちに、英語が話せることと、投資家面談で通訳ができることは別だと感じるようになりました。

当時の私は、投資家がなぜそこまで細かい数字を確認するのか、十分に理解していませんでした。

なぜセグメントごとの利益率を知りたいのか。なぜ製品別の売上成長率や価格、数量まで聞くのか。

投資家は、そうした情報をもとに、自分たちで12カ月先、24カ月先の業績を予想しています。会社が示している計画についても、その前提を確認しながら、自分たちの見方と比べています。

こうした投資家の考え方を知るうえで役に立ったのが、証券会社のアナリストレポートや決算説明会の翻訳でした。

決算説明会を翻訳するときは、原稿に取りかかる前に、まず音声を最初から最後まで聞いていました。近所を歩きながら、一時間ほどの説明会をそのまま聞くこともよくありました。

経営陣がどんな話し方をするのか。アナリストはどんな聞き方をするのか。会社の回答を受けて、次にどんな質問が出てくるのか。

一つひとつの質問を覚えるというより、アナリストと経営陣のやり取りに慣れたかったのだと思います。

それを繰り返すうちに、海外投資家との面談でも、質問の背景を以前より理解できるようになりました。

これまで、300件を超える海外投資家との面談で通訳を務めてきました。

面談では、セグメント別の利益率や主要製品の成長率、価格や数量の見通しなど、開示資料には載っていないところまで聞かれることがあります。

例えば、会社が来期の増収を見込んでいるのであれば、その増収が数量によるものなのか、値上げによるものなのか、新製品によるものなのか。利益率が改善するのであれば、製品構成が変わるのか、原価が下がるのか、固定費の負担が軽くなるのか。

そうした前提を確認しながら、投資家は自分たちの業績予想を作っています。

日本企業の開示資料では、そこまで細かな情報が出ていないこともあります。そのため面談では、決算説明資料に書かれている内容を確認するだけでなく、その数字の背景まで聞いていくことになります。

通訳する側も、投資家が何を確認しようとしているのかを理解していた方が、やり取りをより正確に追うことができます。

一方で、投資家の質問意図を理解することと、投資家の立場に立つことは別です。

通訳では、話し手の言葉は正確に伝えますが、その感情まで自分の声に乗せないようにしています。

以前、ある面談で、投資家が会社の回答に苛立っていたことがありました。私はその言葉だけでなく、相手の苛立ちまで自分の口調に乗せて訳してしまい、経営陣の方を不快にさせてしまったことがあります。

それ以来、厳しい質問であっても、内容はそのまま伝えつつ、自分の感情は加えないようにしています。

議論が熱くなったときには、少しゆっくり訳すこともあります。

投資家の代わりに会社を問いただすことも、会社の代わりに投資家を説得することも、通訳者の役割ではありません。

JIIを設立したきっかけは、SNSで日本の小型株について発信していたことでした。

投稿を見た海外投資家から、「この会社と話をしたい」という相談を受けるようになりました。

特に、証券会社のアナリストがカバーしていない小型株の場合、海外投資家が関心を持っても、会社と直接話す機会をつくるのは簡単ではありません。

そこで私が企業に連絡を取り、面談をお願いし、当日は通訳をするようになりました。

そうした依頼が増え、2023年に株式会社ジャパン・インベスター・インターフェースを設立しました。

現在は、海外投資家との面談のアレンジや通訳に加え、英文IR資料や英文開示の翻訳も手がけています。

海外投資家が何を知りたいのかを理解したうえで、企業と投資家の間のやり取りをできるだけ自然に進めること。

投資家の考えを企業に押しつけるのではなく、双方がそれぞれの立場からきちんと話せるようにすること。

JIIでは、これからもその役割を丁寧に果たしていきたいと考えています。

株式会社ジャパン・インベスター・インターフェース
代表取締役 屋山 テディ