株式会社ジェノバ
ジェノバはどんな会社か
ジェノバは、GPSなどの衛星測位を数センチメートル単位まで正確にするサービスを提供している。主な利用者は、土地を測る測量士、建設現場で重機を動かす施工会社、田畑で農機を走らせる農業者、森林を空撮するドローン事業者だ。こうした現場では、受信機だけで測ると数メートルの誤差が生じ、仕事に必要な精度には届かない。そこで顧客の受信機が大まかな位置をジェノバのサーバーへ送ると、サーバーが誤差を直すための信号を返し、測位精度を数センチメートル単位まで高める。顧客はこのサービスを月額料金で利用する。
このサービスは、国土地理院が全国に設置した約1,300点の電子基準点データを利用している。ジェノバは日本測量協会を通じてリアルタイムの観測データを取得し、独自アルゴリズム(特許第5832050号)で解析したうえで配信する。2025年9月期の売上高は13億6,700万円、営業利益は7億7,400万円。売上高100円のうち57円が営業利益として残る計算である。期末契約数は9,348件で、過去5年間は年率6%で増えてきた。
事業の強さと、株式としての評価は分けて考える必要がある。事業そのものは非常に強い。17名の従業員で9,000件超の契約を支え、売上が増えても費用はほとんど増えず、解約も少ない。一方、ROEは2021年9月期の20%から2025年9月期の16%まで低下した。現金が増える速さに、株主還元が追いついていないためである。2026年3月末の現金残高は¥3,050Mと、時価総額の3割超に相当する。2026年5月、会社は通期予想を据え置く一方、配当予想を6円から7円へ引き上げた。今後の評価は、この約30億円が株主還元、M&A、運転資金のどれに配分されるかで変わる。本レポートでは、株価推移、3つの論点、今後の評価を変え得る材料、企業価値の順に整理する。
この2年間、株価を動かしてきたものは何か
過去2年間、株価は大きく上下した。2024年7月に¥875まで上昇した後、2025年4月には¥539まで38%下落し、その後¥677まで戻している。下のチャートは、株価の動きと会社開示のタイミングを重ねたものである。
01 · 上場後の高値圏 ジェノバは2023年4月、東証グロース市場に上場した。上場後初の通期決算(2023年9月期)は売上高3.8%増、契約数純増+626件と順調だった。安定して成長しながら、売上高100円のうち57円が営業利益として残るサービス会社として評価され、2024年7月には株価が¥875まで上昇した。当時のPERは約17倍で、これだけ利益率の高い国内小型成長企業としては標準的な水準だった。
02 · 調整局面 2024年後半から2025年4月にかけて、株価は¥875から¥539へ38%下落した。同じ期間の東証全体はほぼ横ばいで、市場全体の下落だけでは説明できない。会社の数字には二つの変化があった。第一に、新規契約の増加ペースが鈍った(FY2024は純増535件、FY2025は純増284件)。第二に、ROEが2021年の20%から2024年の14.5%へ4年連続で低下した。投資家はこの二点を嫌気した。
03 · 自己株取得と最高益更新 2025年2月、日立産機システムとの業務提携解消に伴い、会社は同社保有の全100万株をToSTNeT-3で1株740円、総額¥7億4,000万円で取得した。自己株式控除後の発行済株式総数の7.21%にあたる規模で、自己株式数は607千株から1,607千株へ拡大、1株当たり利益の押し上げ要因となった。2025年11月には最高益更新(売上高13.7億円、営業利益率57%)を発表。同月には更新版の「事業計画及び成長可能性に関する事項」を公表した。
04 · 足元 2026年5月12日、会社はFY26 Q2決算を発表した。売上高+4.8%、営業利益+3.3%、中間純利益+4.2%──いずれも中間期過去最高である。上期にサーバー更新として有形固定資産¥38M、無形固定資産(ソフトウェア)¥84Mを計上したため、売上総利益率は小幅に低下した。通期予想は据え置き(売上+4.8%、営業利益+0.7%)、配当予想は6円から7円へ引き上げられた。現在の¥677は過去2年レンジの中ほどにあり、現金は時価総額の34%相当である。
投資家の見方が分かれる3つの論点
利益率は維持できるのか、電子基準点データへの依存をどう見るのか、そして純現金をどう使うのか──強気派と弱気派の見方を整理する。
今後12ヶ月で評価を変え得るもの
売上、業務効率、株主還元の3つに分け、実行に必要な費用と、最初に確認できる時期を整理する。
ここから株価が見直される条件
以下はJIIの試算であり、会社計画ではない。参考価格は2026年5月27日終値の ¥669、FY2026会社予想営業利益の ¥779M、自己株式控除後EVの ¥5.81bn を用いた。各シナリオは、JIIが下記前提に基づいて試算した参考値である。
- 契約数成長率は 4〜5% へ減速
- ソフトウェア償却本格化で営業利益率50%へ低下
- 現金残高は¥3.5bnに積み上がるが還元なし
- みちびき無料信号が入口層を代替
- 契約数成長率 6% 維持
- FY2027営業利益率は56%前後で安定
- 配当性向 20〜25% へ引き上げ
- KDDI由来の新領域案件が個別発表
- 契約数成長率 7〜8% へ加速
- KDDI由来の新領域案件が個別収益化
- 初の対外M&Aを発表(¥5〜10億規模)
- 配当性向 30%超 へ引き上げ
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