楽待株式会社
この2年間、株価を動かしてきたものは何か
楽待は、賃貸アパート、駐車場、小型商業ビルなどの収益不動産を売りたい全国の不動産会社と、買いたい個人投資家をつなぐサイトである。不動産会社は物件を掲載するために月額料金を払う。「収益不動産」に関する検索で長年上位に表示され、不動産投資を解説するYouTubeチャンネルも2025年末に累計再生10億回を超えたため、利用者を集める費用はほとんどかからない。
01 · 上昇局面 楽待が運営する主なサービスは、収益不動産に特化した「楽待」(rakumachi.co.jp)である。2026年1月時点で約48.7万人の個人投資家が無料で利用し、5,459店の不動産会社が物件掲載のために月額料金を支払っている。これに三つの小規模な収入が加わる。投資家が登録した条件に合う物件を不動産会社が個別に提案できる特許機能、追加機能を利用できる個人投資家向け月額サービス「楽待プレミアム」(7/26期H1のARPUはYoY +17%)、そして不動産管理会社や金融機関向けのタイアップ動画広告である。営業利益率が高い理由は二つある。第一に、利用者を集める費用がほぼかからない。20年かけて検索順位を高めてきたサイトと、2025年末に累計再生10億回を突破したYouTubeチャンネルから会員が集まる。第二に、楽待プレミアムとタイアップ動画には値上げの余地がある。本業とは別に、会社は¥40.8億の米ドル建社債を満期保有している。平均利回りは5.5%で、半年ごとに約¥1.14億の利息を受け取る。この利息は営業利益より下に計上されるため、営業利益率には含まれない。ただし、社債に投じた資金の収益率は、本業に投じた場合の約5分の1にすぎない。自己株式取得などのために取り崩さない限り、この社債は会社全体の資本収益率を押し下げる。株価は2024年5月16日の¥501から2025年9月16日の¥1,479へと3倍近くに上昇した。きっかけとなったのは三つの開示である。2024年9月の7/24期通期決算では、売上が+13%の¥23.6億となり、営業利益率は44.9%を維持した。同時に、現金のうち約¥40億(開示上の取得総額は9銘柄・¥40.089億)を新たに米ドル建社債へ振り向けた。2025年9月12日の7/25期通期決算では、売上が33.6%増の¥31.6億、営業利益が45.6%増の¥15.5億となり、営業利益率は48.9%へ上昇した。同日には、創業者・坂口直大氏から長年マーケティング部門を率いた藤江良氏への代表取締役交代と、12ヶ月で4回目となる自己株式取得(上限50万株・¥7.5億)も発表された。
02 · 高値圏からの調整 2025年9月の高値から8ヶ月で上昇幅の約3分の1を失い、株価は2026年3月13日に¥990まで下がった。一方、この間の業績は良好だった。2025年10月の定時株主総会では、取締役を4名から7名へ増員し、長く部門を率いてきた2名が社内取締役に加わった。創業者の68.2%保有は変わらないが、日常業務を監督する取締役が増えた。2025年12月の7/26期Q1決算では営業利益が前年同期比+80.4%、売上が+17.0%。2026年3月の7/26期H1決算では営業利益が+43.4%、売上が+14.9%となり、H1の営業利益率は55.3%、上期累計売上は¥17.57億に達した。株価下落は事業の減速によるものではない。2024年5月の安値¥501から3倍近くまで上昇した2025年9月の高値が、少ない売買のなかで形成されていたと考える方が自然だ。坂口家が68.2%を保有し、開示上でほかに5%を超える株主はVIS Advisors LPの5.08%だけである。機関投資家が実際に売買できる株式は、発行済株式の約4分の1にとどまる。流通株が少ない銘柄は、小さな買いでも大きく上がる一方、買いが止まるだけで同じように大きく下がりやすい。
03 · 現時点 2026年5月25日、会社は二つの発表を同時に行った。一つは、上限60万株(自己株控除後の3.09%)・¥5.0億の自己株式取得で、取得期間は2026年11月27日まで。もう一つは、経営指標の訂正である。会社は、2025年9月の7/25期通期決算以降、過去6回の開示に記載したページビュー(PV)を遡って訂正した。訂正されたのはPVだけで、売上・利益には変更がない。加盟店が支払う月額料金は掲載件数によって決まり、PVとは連動しないためである。ただし、PVの過大計上幅は新しい開示ほど大きい。7/25期通期PVは−0.6%、7/26期Q1 PVは−5.6%、7/26期H1 PVは−8.5%下方修正された。この結果、7/26期H1の前年同期比PV成長率は+23.2%から+12.7%へ低下した。会社は、社内のPV集計手順を再点検した結果、誤りが見つかったと説明するにとどまる。今後4四半期で確認すべき点は三つある。第一に、今後の集計方法と複数年分の月次PVが開示され、会員数の伸びを元データと照合できるようになるか。第二に、本業に使われず残っている¥40.8億の米ドル建社債の活用方針が変わるか。この社債は総資産の約3分の2を占め、同じ資金を本業に投じた場合の5分の1ほどの利回りしか生まない。第三に、収益不動産に特化したサイトとしての競争力が今も高まっているのか、成長の成熟期に入ったのかである。現在の予想EV/EBITは11.3xと、国内デジタル・マーケットプレイス類似企業の中央値5.7xを上回る。
投資家の見方が分かれる3つの論点
直近の四半期決算と2026年5月25日の訂正開示から、三つの論点が浮かぶ。PV訂正の影響、社債に滞留する資金の使い道、そして「楽待」が今後も成長を続けられるかである。
資本効率を高めるためにできること
直近の四半期決算と2026年5月25日の訂正を踏まえると、会社が開示と資本政策でできることは三つある。利益が増えるのを待たなくても、実行すれば評価の見直しにつながり得る。
3つのシナリオ
今後4四半期に考えられる展開を、弱気・基本・強気の三つに分けた。前述の論点がどう決着し、資本政策がどう変わるかをもとに株価レンジを試算している。いずれも将来の株価を予想するものではない。
弱気シナリオの¥700〜¥850は予想EV/EBITで~5.5〜6.5xに相当し、国内デジタル・マーケットプレイス類似企業の中央値5.7x(LIFULL 5.8x、GAテクノロジーズ 5.6x、Temairazu 5.0x)とほぼ同水準である。日本の小型上場マーケットプレイスを非公開化する買い手が一般に支払う5〜7x EV/EBITに近い。
強気ケースの¥1,350〜¥1,650は、予想EV/EBITで ~10〜13x に相当する。国内デジタル・マーケットプレイス類似企業の上位帯(Azoom 15.5x、GAテクノロジーズ 5.6x)の範囲内で、海外ニッチポータル(Rightmove、REA、Hemnet)の ~17〜25x を下回る。上限近辺でも、現状の 11.3x から評価倍率が約2ポイント上がる程度である。
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