ベイカレントとは何か
ベイカレントは日本で生まれたコンサルティング会社である。外資の親会社も系列も持たない。顧客は日本最大級の企業群で、経営戦略、デジタルトランスフォーメーション(DX)、生成AIの導入、その後のITシステム実装までをプロジェクト単位で請け負う。報酬はコンサルタントの稼働時間に対して案件ごとに支払われ、サブスクリプション型の収益層はない。約5,600人のコンサルタントを業種別の固定チームに分けず、1つのプールとして運用する。テーマに合わせてチームを組成し、需要の変化に応じて人員を再配置する仕組みである。
2026年2月期(2026年2月に終了した年度)は、売上が+27.8%の¥1,483億、営業利益が+19.5%の¥509億——営業利益率34.3%で着地した。使用資本利益率(ROCE)は46%、自己資本利益率(ROE)は35.8%、バランスシートには¥657億のネットキャッシュを抱える。2027年2月期予想は売上¥1,900億(+28%)、営業利益¥648億(+27%)である。
投資論点は2つに集約される。人の時間を請求する事業は、生成AIの時代に25%超の複利成長を続けられるのか。そして年25%のペースでコンサルタントを増やしながら、質を薄めずにいられるのか。本レポートでは株価の推移、市場で議論されている3つの問い、倍率を動かしうる開示、そしてバリュエーションのシナリオを順に整理する。
この2年間、株価はなぜ動いたか
過去24ヶ月の株価を4つの局面に分けて整理する。2024年6月の安値¥3,059から高値¥9,075へ、そこから5ヶ月足らずで57%下落、その後¥5,857まで回復。各局面で何が起きたかを追う。
01 · 上昇局面 2024年6月の安値¥3,059から、株価は16ヶ月上昇を続けた。2025年2月期は売上+23.6%・営業利益+24.5%で着地。2025年4月の決算は売上¥1,430億の新年度予想と、61%増配の年間¥100を示した。コンサルタント数・案件数・1人当たり売上が揃って伸びる構図が四半期ごとに確認され、2025年10月6日に終値¥9,075の高値を付けた。会社予想営業利益の約26倍にあたる。
02 · 下落局面 2025年10月から2026年2月24日にかけて株価は57%下落し、¥3,861を付けた。業績は崩れず、1月開示の売上も+27%だった。上期にコンサルタント数が2月比ほぼ横ばい(4,784人→4,842人)と判明し、再配置の代償を市場は成長モデルの変調と読んだ。同時に、生成AIは時間課金の需要を縮めるのかという問いが業界を直撃した。倍率は予想営業利益の約26倍から約10倍へ縮んだ。
03 · 自社株買いによる反転 2026年3月18日、取締役会は株価に直接応えた。上限660万株・¥300億の自己株式取得——自己株控除後株式の4.3%、前年枠の10倍である。開示は株価と実態の乖離を理由に挙げ、取得株式は2026年8月19日に全株消却される。4月14日の通期決算は売上¥1,483億を示し、2027年2月期を売上¥1,900億(+28%)・営業利益¥648億(+27%)と予想。株価は¥5,000台半ばへ回復した。
04 · 現時点 ¥5,857(2026年6月4日)の株価は、2027年2月期営業利益予想に対し予想EV/EBIT 12.7倍。取得は7月31日まで続く。今後4四半期の確認点は決算FAQに示された計画値である。コンサルタント数は約25%増の約7,000人、案件数は約25%増、1人当たり売上は約5%増。稼働率は80–90%、EBITDAマージンは30–40%のレンジで管理される。最初の関門は7月中旬のQ1決算である。
市場で議論されている3つの問い
直近決算、投資家向けFAQ、株価の動きから浮かび上がる3つの問い。それぞれに強気・弱気の論拠を並べ、どの開示が決着させるかを示す。
今後12ヶ月で何が変わりうるか
会社開示から導かれる、経営が打ちうる3つの一手を整理する。いずれも増益を待たずに、市場の評価軸を動かしうる。
この株価から、何が正しければ投資が成立するか
以下はJIIの試算シナリオであり、会社の業績予想ではない。起点は6月4日終値¥5,857、2027年2月期会社予想営業利益¥648億、企業価値(時価総額から純現金を差し引いた値)¥8,240億。コンサルタント数・請求単価・利益率の組み合わせでレンジを算出した。
- 1人当たり売上が横ばいか計画割れ
- 案件数の伸びが20%未満
- 稼働率がレンジ下限に低下
- 営業利益が¥600億近辺で着地
- コンサルタント数~7,000人(+25%)
- 1人当たり売上~5%増
- 自己株式取得を完了し全株消却
- EBITDAマージン35%近辺を維持
- 1人当たり売上が+5%計画を超過
- 2028年2月期予想が~25%超成長を維持
- 12ヶ月以内に¥200億超の第2弾取得
- EBITDAマージン35%以上
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