東証プライム · 6532 · 2月決算 BayCurrent, Inc.
株式会社ベイカレント
日本を代表する大企業向けのプロジェクト型総合コンサルティング — 戦略からデジタル・生成AI実行まで
終値
¥5,8576/4
2025年10月高値 ¥9,075 から −35% · 2026年2月安値 ¥3,861 から +52%
時価総額 / EV
¥8,890億 / EV ¥8,240億
ネットキャッシュ ¥657億(現金¥723億 − 有利子負債・リース¥66億)= 時価総額の 7%
EV / EBIT · 予想
12.7x
企業価値 ÷ 27年2月期会社予想営業利益 ¥648億 · 実績 16.2x
ROCE · 実績
46% · 26年2月期
営業利益 ÷ 平均使用資本 · ROE 35.8%(年次報告書)
営業利益率 · 全社
34.3% · 26年2月期
27年2月期予想 34.1% · EBITDAマージン目安 30–40%
発行株式 & 浮動株
1.52億株 · 自己株控除後
¥300億の自社株買いで最大 4.3% 消却 · 売買代金 ~¥90億/日
はじめに

ベイカレントとは何か

ベイカレントは日本で生まれたコンサルティング会社である。外資の親会社も系列も持たない。顧客は日本最大級の企業群で、経営戦略、デジタルトランスフォーメーション(DX)、生成AIの導入、その後のITシステム実装までをプロジェクト単位で請け負う。報酬はコンサルタントの稼働時間に対して案件ごとに支払われ、サブスクリプション型の収益層はない。約5,600人のコンサルタントを業種別の固定チームに分けず、1つのプールとして運用する。テーマに合わせてチームを組成し、需要の変化に応じて人員を再配置する仕組みである。

2026年2月期(2026年2月に終了した年度)は、売上が+27.8%¥1,483億、営業利益が+19.5%¥509億——営業利益率34.3%で着地した。使用資本利益率(ROCE)は46%、自己資本利益率(ROE)は35.8%、バランスシートには¥657億のネットキャッシュを抱える。2027年2月期予想は売上¥1,900億(+28%)、営業利益¥648億(+27%)である。

投資論点は2つに集約される。人の時間を請求する事業は、生成AIの時代に25%超の複利成長を続けられるのか。そして年25%のペースでコンサルタントを増やしながら、質を薄めずにいられるのか。本レポートでは株価の推移、市場で議論されている3つの問い、倍率を動かしうる開示、そしてバリュエーションのシナリオを順に整理する。

01 · 株価レジーム

この2年間、株価はなぜ動いたか

過去24ヶ月の株価を4つの局面に分けて整理する。2024年6月の安値¥3,059から高値¥9,075へ、そこから5ヶ月足らずで57%下落、その後¥5,857まで回復。各局面で何が起きたかを追う。

6532 vs TOPIX · 日足ローソク+出来高
高値 ¥9,075 · 2025-10-06 安値 ¥3,861 · 2026-02-24 現在 ¥5,857
ベイカレント · 日足 60日移動平均 TOPIXリベース(1308.T) 出来高

01 · 上昇局面 2024年6月の安値¥3,059から、株価は16ヶ月上昇を続けた。2025年2月期は売上+23.6%・営業利益+24.5%で着地。2025年4月の決算は売上¥1,430億の新年度予想と、61%増配の年間¥100を示した。コンサルタント数・案件数・1人当たり売上が揃って伸びる構図が四半期ごとに確認され、2025年10月6日に終値¥9,075の高値を付けた。会社予想営業利益の約26倍にあたる。

02 · 下落局面 2025年10月から2026年2月24日にかけて株価は57%下落し、¥3,861を付けた。業績は崩れず、1月開示の売上も+27%だった。上期にコンサルタント数が2月比ほぼ横ばい(4,784人→4,842人)と判明し、再配置の代償を市場は成長モデルの変調と読んだ。同時に、生成AIは時間課金の需要を縮めるのかという問いが業界を直撃した。倍率は予想営業利益の約26倍から約10倍へ縮んだ。

03 · 自社株買いによる反転 2026年3月18日、取締役会は株価に直接応えた。上限660万株・¥300億の自己株式取得——自己株控除後株式の4.3%、前年枠の10倍である。開示は株価と実態の乖離を理由に挙げ、取得株式は2026年8月19日に全株消却される。4月14日の通期決算は売上¥1,483億を示し、2027年2月期を売上¥1,900億(+28%)・営業利益¥648億(+27%)と予想。株価は¥5,000台半ばへ回復した。

04 · 現時点 ¥5,857(2026年6月4日)の株価は、2027年2月期営業利益予想に対し予想EV/EBIT 12.7倍。取得は7月31日まで続く。今後4四半期の確認点は決算FAQに示された計画値である。コンサルタント数は約25%増の約7,000人、案件数は約25%増、1人当たり売上は約5%増。稼働率は80–90%、EBITDAマージンは30–40%のレンジで管理される。最初の関門は7月中旬のQ1決算である。

02 · 投資家論点

市場で議論されている3つの問い

直近決算、投資家向けFAQ、株価の動きから浮かび上がる3つの問い。それぞれに強気・弱気の論拠を並べ、どの開示が決着させるかを示す。

論点 01 · 生成AIと課金モデル
生成AIはベイカレントの仕事を増やすのか、奪うのか。
BULL
強気派は会社開示のKPIを根拠にする。2026年2月期の案件数は+20.7%、1人当たり売上は計画を約4%上回った。決算説明資料は国内大手の複数年AI投資計画——¥1兆、¥5,000億、¥3,000億——を10件前後、需要パイプラインとして列挙する。AIは作業を自動化するより速くプロジェクトを生んでいる、という読みである。この見方が成立するのは、2027年2月期の1人当たり売上が計画通り約5%伸び、案件数が約25%増となる場合である。
BEAR
弱気派は、生成AIが工数を圧縮する領域——調査、資料作成、分析——こそ時間課金の中核だと指摘する。会社は1人当たり売上を開示するが、1人当たりコストや職位構成は開示しない。請求単価と人件費の差が縮んでも、表面化するのは利益率が落ちた後になる。弱気の見方が説得力を増すのは、1人当たり売上の伸びが2四半期連続で計画を下回るか、EBITDAマージンが30–40%レンジの下限を試す場合である。
論点 02 · 採用エンジン
2026年2月期の人員増減速は一時要因か、新たな巡航速度か。
BULL
採用自体は2026年2月期も計画を上回った。コンサルタント数+16.8%への減速は業界・テーマ別組織への意図的な再配置によるもので、候補者プールが細ったわけではないと会社は説明する。前年に整備した採用体制は過去最多の採用を見込み、4月には新卒約710人が加わる。この見方が成立するのは、Q1で会社計画の約5,750人(研修中の新卒を含まない数値)に到達し、2027年2月までの約7,000人路線を維持する場合である。
BEAR
7,000人到達には1年で約1,400人の純増が必要で、競合は同じ限られた人材プールから採用を続ける。会社は離職率もコホート別の生産性も開示していない。採用加速の代償——層の薄い世代、シニア層にかかる指導負荷——は、公表される4つのKPIには表れない。リスクが顕在化するのは、上期決算でコンサルタント数が7,000人路線から遅れ、同時に稼働率が80–90%レンジを割り込む場合である。
論点 03 · 現金ルール
売上40%の現金上限は資本規律か、遊休資金の容認か。
BULL
2025年4月公表の枠組みは、手元現金を予想売上の約40%に制限し、上限を超える資金はすべて自己株式取得に充てると定める。会社は実行している。前年の10倍となる¥300億の取得枠と全株消却、2021年2月期以来毎年の増配、配当性向40%の目安である。この見方が成立するのは、2027年4月の通期決算で上限超過分が再び株主還元に回る場合である。
BEAR
上限は予想売上に連動し、経営は売上を年約20%伸ばす計画である。つまり許容される遊休現金も同率で膨らみ、2027年2月期予想ベースで約¥760億に達する。現金はすでに自己資本の約60%を裏付け、使用資本利益率40%超の本業に対しほぼゼロの利回りしか生まない。弱気の見方が説得力を増すのは、2027年2月期末の現金が上限に張り付き、基準が営業費用に再設定されない場合である。
03 · カタリスト

今後12ヶ月で何が変わりうるか

会社開示から導かれる、経営が打ちうる3つの一手を整理する。いずれも増益を待たずに、市場の評価軸を動かしうる。

梃 01 · 資本政策
現金上限の基準を予想売上から営業費用に付け替える
期末現金残高と政策上限(億円)
2023年2月期末
¥366億
2024年2月期末
¥458億
2025年2月期末
¥606億
2026年2月期末
¥723億
2027年2月期上限
¥760億
上限 = 予想売上の40% · 売上が増えるほど上限も増える
会社は手元現金を予想売上の約40%——運転資金が約25%、成長投資が15%——以内に置く。予想売上が今期約28%伸びるため、許容される現金も連動して増え、2027年2月期の上限は約¥760億になる。代替基準となる営業費用3ヶ月分は~¥250–300億にとどまる。上限を費用基準に付け替え、差額を自己株式取得に充てると約束すれば、今年限りの¥300億は同規模の恒常的な年次プログラムに変わる。必要なのは取締役会決議1本と説明資料の1枚である。
経営コスト
取締役会決議1本
最早トリガー
2027年2月期決算 · 2027年4月
梃 02 · 開示
1人当たりコストを1人当たり売上と並べて開示する
2026年2月期に開示された指標と、されなかった指標
1人当たり売上
計画比+4%
案件数
+20.7%
稼働率
80%台半ば
1人当たりコスト
非開示
離職率
非開示
公表KPIはすべて量の指標 · 価格とコストの差は非開示の2系列の間にある
会社が公表するKPI——コンサルタント数、案件数、稼働率、1人当たり売上——はすべて量を測る。生成AI論争の本質は価格対コスト、つまり請求単価が人件費より速く上がり続けるかにある。人件費関連の費用基盤~¥840億に1ポイントの逆風が生じれば、開示KPIが警告する前に年約¥10億のEBITDAが失われる。半期ごとに1行——1人当たりコストか職位構成——を加えるだけで、AIが単価を押し上げるという会社の主張を投資家が検証できるようになる。
経営コスト
説明資料の表1行
最早トリガー
Q1決算 · 2026年7月中旬
梃 03 · 開示
7,000人体制の前に離職率とコホート生産性を開示する
期末コンサルタント数 · 2023年2月期 → 2027年2月期計画
2023年2月期末
2,961
2024年2月期末
3,837
2025年2月期末
4,784
2026年2月期末
5,590
2027年2月期計画
~7,000
1年で約1,400人の純増が必要 · 離職率は一度も開示されていない
採用エンジンを外から測れる数字は、計画比の採用実績しかない。各年の入社世代が定着し戦力化しているかは開示されず、離職率は開示資料のどこにも見当たらない。平均勤続年数も持株会社の866人分しか公表されない。コホート別の定着率や生産性を開示すれば、最も深い弱気の問い——年25%採用で質は薄まらないか——が検証可能な系列に変わる。それまでの外部チェックは、人数が増えながら1人当たり売上が伸び続けるかどうかしかない。
経営コスト
半期ごとのKPI表
最早トリガー
上期決算 · 2026年10月
04 · バリュエーション

この株価から、何が正しければ投資が成立するか

以下はJIIの試算シナリオであり、会社の業績予想ではない。起点は6月4日終値¥5,857、2027年2月期会社予想営業利益¥648億、企業価値(時価総額から純現金を差し引いた値)¥8,240億。コンサルタント数・請求単価・利益率の組み合わせでレンジを算出した。

弱気シナリオ
¥4,300 – ¥4,700
−27% から −20%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~9–10x
生成AIがジュニア層の作業の値付けを変え始める。1人当たり売上は+5%計画を下回り、案件数も+25%に届かず、稼働率は80–90%レンジの下限へ低下。2027年2月期営業利益は¥648億ではなく¥600億近辺に着地する。
¥4,300–¥4,700は予想EV/EBITで~9–10倍に相当し、2026年2月の安値局面で倍率が底入れした水準に近い。
主なドライバー
  • 1人当たり売上が横ばいか計画割れ
  • 案件数の伸びが20%未満
  • 稼働率がレンジ下限に低下
  • 営業利益が¥600億近辺で着地
基本シナリオ
¥5,600 – ¥6,400
−4% から +9%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~12–14x
会社が2027年2月期予想——売上¥1,900億・営業利益¥648億——を達成する。コンサルタント数は約7,000人に到達し、¥300億の自己株式取得は8月に完了・消却、EBITDAマージンは35%近辺を維持する。
主なドライバー
  • コンサルタント数~7,000人(+25%)
  • 1人当たり売上~5%
  • 自己株式取得を完了し全株消却
  • EBITDAマージン35%近辺を維持
強気シナリオ
¥7,300 – ¥8,100
+25% から +38%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~16–18x
需要が計画すら上回る。AI関連案件の拡大で1人当たり売上が+5%を超え、2028年2月期予想が~25–28%成長路線を延長。余剰現金ルールに基づく第2弾の大型自己株式取得が2027年4月の決算と同時に発表される。
レンジ上限は2025年10月高値¥9,075に届かない。あの価格には予想営業利益の約26倍が必要だった。
主なドライバー
  • 1人当たり売上が+5%計画を超過
  • 2028年2月期予想が~25%超成長を維持
  • 12ヶ月以内に¥200億超の第2弾取得
  • EBITDAマージン35%以上
SOTP · コンサルティング事業
単一セグメント:日本の大企業向けプロジェクト型コンサルティング
2027年2月期営業利益予想¥648億
予想売上成長率+28.1%
想定 EV/EBIT~11–14x
想定事業価値¥7,130–9,070億
JII想定レンジ——成長率と利益率を映し国内類似中央値(~9x)より上、2025年の自社高値倍率より下。
SOTP · ネットキャッシュ
現金から借入金・リース負債を控除(2026年2月末)
現金同等物¥723億
借入金−¥3億
リース負債−¥63億
ネットキャッシュ¥657億
¥300億の自己株式取得(2026年4–7月)を満額実行すれば、この残高の約半分を使う。
SOTP · 類似企業倍率ラダー · 2026年6月4日時点
国内上場のコンサルティング・人材レバレッジ企業
6532 ベイカレント · 本レポート予想 12.7x · ROCE 46%
4307 野村総合研究所 · コンサル+ITサービス予想 16.2x · ROCE 19%
3697 SHIFT · ソフトウェアテスト・人材レバレッジ実績 11.0x · ROCE 33%
446A ノースサンド · IT/DXコンサル・2025年上場予想 9.1x · ROCE 53%
9168 ライズ・コンサルティング · DX/戦略コンサル予想 8.6x · ROCE 27%
6088 シグマクシス · DXコンサル予想 5.7x · ROCE 38%
EV=6月4日終値 ÷ 各社の最新営業利益予想。SHIFTは予想非開示のため実績、NRIの実績期は一過性損失を含む。
SOTP · 株主価値ブリッジ
想定株主価値レンジと理論株価
コンサルティング事業(~11–14x)¥7,130–9,070億
ネットキャッシュ¥657億
SOTP想定株主価値¥7,790–9,730億
自己株控除後株式数(2026年4月開示)1億5,185万株
理論株価レンジ¥5,130–¥6,410
現在株価 ¥5,857 はレンジの上半分に位置する。¥300億の取得を満額実行すれば株式数は約4%減り、レンジは相応に切り上がる。
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