銘柄レポート

銘柄レポート東証スタンダード · 6835 · 12月決算

アライドテレシスホールディングス株式会社

アライドテレシスは、ネットワークスイッチや無線LAN機器を開発・製造し、導入支援と複数年の保守を組み合わせて、主に国内の学校・病院・自治体へ販売しています。2026年6月16日には新たな自己株式取得を決議しました。株価は企業価値(EV)/EBIT約4倍で、ネットキャッシュは時価総額の約46%に相当します。

企業

アライドテレシスホールディングス株式会社

Allied Telesis Holdings K.K.

ネットワークスイッチや無線機器の販売から、現地での設置、長期保守までを担う創業40年の企業。主な顧客は日本の学校・病院・自治体

終値
¥238 6/16
2026年2月高値 ¥376 から −37% · 24カ月で +143%
時価総額 / EV
¥248 億 / EV ¥134億
ネットキャッシュ ¥114億 (現金¥173億 − 有利子負債・リース¥59億)= 時価総額の 46%
EV / EBIT · 予想
4.1x
企業価値 ÷ 26年12月期会社予想営業利益 ¥33億 · 実績 3.2x
ROCE · 実績
16% · 25年12月期
営業利益 ÷ 平均使用資本 · 23年12月期の9%から上昇 · ROE 14.3%
営業利益率 · 全社
8.5% · 25年12月期
26年12月期予想 6.3% 。事業売却後の一段の低下
発行株式 & 浮動株
1.04 億株 · 自己株控除後
新規自社株買いで最大 0.96% 消却 · 売買代金 ~¥1億/日
はじめに

アライドテレシスはどんな会社か

アライドテレシスは、建物内のパソコンやサーバー、無線機器を互いにつなぎ、インターネットにも接続するためのネットワーク機器を手がける会社である。主力製品はネットワークスイッチだ。複数の機器を一つのネットワークにまとめる中継装置である。ほかにも、無線LANアクセスポイント、ルーター、サーバーやPCをネットワークに接続するインターフェースカードを扱う。同社グループは約40年にわたり、19カ国27社でこれらの機器を開発・製造・販売してきた。

同社は、単に機器を出荷するだけの会社ではない。ネットワークの設計と現地での設置を手がけ、その後も複数年にわたって保守・サポートを提供することで、大型案件を獲得している。日本では、老朽化したITシステムを更新する自治体、学校、病院が主要顧客である。25年12月期の売上収益のうち約39%は、製品出荷時に一括計上する売上ではなく、サービスや保守の提供期間に応じて計上する売上だった。こうした継続収益があるため、純粋なハードウェアメーカーよりも業績は安定しやすい。

アライドテレシスは、製品別ではなく地域別に業績を開示している。売上の9割超を単一の製品カテゴリーが占めるためである。日本は売上の約3分の2を占める主力市場であり、利益の中心でもある。残りを米州、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、APAC(アジア・オセアニア)が分け合う。APACには、主にグループ内へ供給する中国とシンガポールの工場が含まれる。

25年12月期(2025年12月終了の期)は、売上収益が3.1%増の¥499.5億、営業利益が23.5%増の¥42.3億となり、営業利益率は8.5%だった。3期連続の増益である。使用資本利益率(ROCE)は、2年前の9%から16%に上昇した。手元の現預金から有利子負債を差し引いたネットキャッシュは¥114億と、時価総額の約46%に相当する。株主還元の余力が大きい反面、これだけの資金を十分に活用できているのかという疑問も残る。

投資上の焦点は、評価倍率が低く、手元資金が厚いこの会社が、改善してきた利益率と株主還元をさらに高め、現在の低い評価を変えられるかにある。26年12月期の会社予想では、営業利益は22%減の¥33億となる。ただし、この減益は需要の弱さではなく、米国事業の売却と成長投資によるものだ。実際、第1四半期の営業利益は20%増えた。今後は、3つの論点である利益成長、海外投資、資本政策の進展が株式評価を左右する。

01 · 株価の局面

この2年間、株価を動かしてきた要因は何か

株価は2024年5月の ¥98 から、2026年2月12日の高値 ¥376 まで上昇した。その後は37%下落し、¥238 を付けている。上昇局面では利益回復が評価され、下落局面では減益予想が嫌気された。各局面を順に見る。

6835とTOPIX · 日足ローソク足+出来高
高値 ¥376 · 2026-02-12 現在 ¥238 · 2026-06-16 24カ月で +143%
アライドテレシス · 日足 60日移動平均 TOPIXリベース(1308.T) 出来高

01 · 上昇 2024年5月の¥98から、株価は18カ月でおよそ4倍になった。原動力は着実な利益回復である。営業利益は23年12月期の¥22億から24年12月期¥34億、25年12月期¥42億へと増えた。会社は株主還元も強めた。23年12月期に1円で配当を再開し、続く2年間で6円、8円へ引き上げ、自社株買いも実施した。長く市場で見過ごされてきた小型メーカーが、利益と現金を着実に生む会社として見直された。

02 · 高値 終値は2026年2月12日に ¥376 の高値を付けた。その翌日の引け後、同社は25年12月期決算、新たな 2028年中期計画、そして26年12月期予想を開示した。日本企業の決算は15時30分の取引終了後に開示される。そのため、¥376 の高値は、投資家が新しい数字を確認する 前 に付けたものだった。開示された数字には、減益予想も含まれていた。

03 · 下落 その後4カ月で株価は37%下落して¥238を付けた。26年12月期予想は営業利益が22%減の¥33億で、市場はこれを業績悪化の兆しと受け止めた。減益予想の要因は2つあり、いずれも需要の弱まりではない。米国事業の売却(後述)で約¥8億の利益がなくなることと、海外の営業人員と技術者への投資を増やすことである。5月15日の第1四半期決算では営業利益が実際には20%増えたが、評価倍率の低下には歯止めがかからなかった。

04 · 現在 ¥238(2026年6月16日)で、株価は予想EV/EBITの4.1倍、ネットキャッシュは会社全体の約46%に相当する。次の確認点は具体的である。一つは、米国の契約移管が完了したときに、売却した米国事業の売却益が計上されるか。もう一つは、6月16日に決議された自社株買いに、より大規模な枠が続くか。三つ目は、会社が投資を進める米州とEMEAが下期に再び成長に転じるかである。

02 · 投資家論点

市場が見極めようとしている3つの論点

同社の決算、中期計画、株価の動きを見ると、投資家がまだ判断しきれていない論点は3つに絞られる。それぞれについて、強気・弱気の見方と、判断材料になり得る開示を整理する。

論点01 · 実質悪化か見かけの落ち込みか
22%減益は事業の悪化なのか、売却と再投資による一時的なものなのか

26年12月期予想は営業利益が¥42億から¥33億へ低下する。判明している2項目が減少の大半を説明する。約¥8億の利益を抱えていた米国事業の売却と、海外の営業人員・技術者への支出増である。注目点は、この2項目を除いても本業に弱さが出ているのかどうかである。

強気
第1四半期を見る限り、減益予想は実態より保守的に見える。米国事業が2月下旬に切り離された後も、グループ営業利益は第1四半期に19.9%増え、日本の販売好調によって粗利益率は3.4ポイント上昇し、60.2%となった。通期予想の¥33億は据え置かれたが、第1四半期だけですでに44%を稼いでいる。この見方が説得力を持つのは、上期の営業利益が再び会社想定を上回るペースで進み、日本が成長を続ける場合である。
弱気
弱気の論拠は、再投資が実らないかもしれない点にある。会社が費用を増やしている米州とEMEAでは、足元の売上が落ちている。米州の売上は25年12月期に11%減り、EMEAは第1四半期に21%減った。この支出が成長につながらなければ、利益の出ていた事業を手放した一方で、固定費だけが高止まりする。弱気の見方が説得力を増すのは、米州とEMEAの売上が下期までマイナスのまま、新たな費用だけが残る場合である。
論点02 · 日本の収益力と海外事業の負担
日本で稼いだ利益を海外3地域に投じ続けるべきか

日本は売上の3分の2を占める明確な利益の源泉である。米州、EMEA、APACはより小さく、利益率もはるかに低い。海外子会社のうちイスラエルと中国の2社は25年12月期末に債務超過だった。問われているのは、海外展開が企業価値を高めているのか、それともグループ全体の利益率を押し下げているのかである。

強気
強気の論拠は、採算の悪い海外事業の整理が進んでいる点にある。同社はタイとフィリピンの赤字拠点を閉鎖し、減少する米国ケーブル事業を売却した。APACは主にグループ全体へ供給する中国とシンガポールの工場を抱えるため、外部売上の小ささはその役割を過小評価している。この整理が進む間に、グループROCEは2年で9%から16%へ上昇した。この見方が成立するのは、米州とEMEAが成長に戻り、海外でこれ以上の減損が出ない場合である。
弱気
弱気の論拠は、収益性の低い地域に資本を投じ続けている点にある。EMEAの利益率は4.5%で、債務超過の2子会社も依然として残る。会社は、縮小してきた地域を伸ばすために支出を増やしている。日本で得た利益を低採算の海外へ再投資すれば、その資金を株主に還元する場合よりもグループROCEは低くなる。同社は地域別の売上と利益を開示しているが、地域別の使用資本は開示していないため、投資負担の大きさを直接測れない。各地域の資本収益性が開示され、資本コストを上回ることが確認できれば、この懸念は和らぐ。
論点03 · 現金の問い
厚い現金と増配で株価は見直されるのか、それとも割安なままか

ネットキャッシュは約¥114億と、時価総額の46%にあたる。同社は減配しない累進配当を掲げ、自社株買いも繰り返してきた。それでも事業価値は予想営業利益の約4倍にとどまる。株主還元によって低い評価が改まるのか、それとも割安な状態が続くのかが論点である。

強気
強気の論拠は、株主還元が実際に増えている点にある。配当は3年で1円から8円になり、28年12月期には12円を目標とし、中間配当も始まった。2025年12月には自己株式を消却し、6月16日には新たな自社株買いを決議した。EVがわずか¥134億であるため、年間の自社株買いが小幅でも、消却できる株式の割合は大きくなる。再評価の可能性が高まるのは、自社株買いが現在のごく小さな規模から拡大し、配当性向が上がり続ける場合である。
弱気
弱気の論拠は、現在の還元規模では資本構成への影響が限られる点にある。6月の自社株買いは¥2.5億——時価総額の約1%——が上限で、¥114億の現金残高に対し予想配当性向は約45%にとどまる。このペースでは現金は還元より速く積み上がり、価値の大半が遊休現金にある薄商いの小型株は何年も割安のままでありうる。割安な状態が続くリスクが高まるのは、26年12月期末に現金残高がさらに増え、自社株買いもごく小規模にとどまる場合である。
03 · 評価が変わるきっかけ

今後12カ月で評価を変え得るもの

会社の開示から、評価を左右し得る3つの変化が見える。いずれも、利益成長を待たずに市場の見方を変え得る。

手立て01 · 資本政策
小規模な自社株買いは継続的な還元策に広がるか
ネットキャッシュ 対 直近の自社株買い枠(億円)
ネットキャッシュ(26年3月)
¥114億
25年12月期 配当支払
¥8億
26年6月 自社株買い上限
¥2.5億
直近の自社株買いはネットキャッシュの約2%、時価総額の1%
同社はすでに、累進配当、中間配当、自己株式の消却、複数回の自社株買いを実施している。現時点では規模が限られる。6月16日の自社株買いは¥114億のネットキャッシュに対し¥2.5億が上限で、このままでは残高が積み上がり続ける。継続的な自己株取得や、余剰現金に連動する総還元目標が明確になれば、市場は現金を還元可能な資産として評価しやすくなる。実行負担は取締役会決議1件と政策の明示である。
実行コスト
取締役会決議1件
最短のきっかけ
26年12月期決算 · 2027年2月
手立て02 · 開示
地域別の使用資本と利益率
25年12月期 地域別セグメント営業利益率
APAC
16.4%
米州
13.1%
日本
7.0%
EMEA
4.5%
地域別の使用資本
未開示
利益率は地域で4倍の開きがあるが、地域別の使用資本は未開示
投資家は各地域がどれだけ売り、稼ぐかは見えるが、在庫、売掛金、設備にどれだけ資本を使っているかは見えない——だから低利益率の地域や債務超過の2子会社が資本コストを稼いでいるか誰も判断できない。その欠けた数字が、日本対海外の論点の中心にある。地域別の使用資本と利益率が年1回でも開示されれば、市場は海外展開が企業価値に貢献しているかを判断しやすくなる。地域別の資本効率は、各地域への投資方針を考えるうえでも有用である。
実行コスト
年1回の表1枚
最短のきっかけ
26年12月期決算 · 2027年2月
手立て03 · 資本配分
売却益の計上と資金の使い道
米国事業の売却。判明分と保留分
売却完了
2026年2月27日
なくなる売上
~¥18億/年
売却益
未計上
売却益は米国の契約移管待ち。売却で得た資金は中核事業への投資に充当予定
2026年2月、同社はIPトリプルプレイ事業——米軍基地向けのケーブル・通信・電話サービス——を売却した。契約が2028年満了予定で売上が減少していたためである。売却で年約¥18億の売上と¥8億の利益がなくなり、26年12月期の減益予想の大半を占める。一時的な売却益は、米国の契約移管が先に終わる必要があり、まだ計上されていない。売却益の計上と、自社株買い、配当、計画のM&A枠での規律ある買収などの使途が明確になれば、減益要因として見られている売却は、資本配分を評価する材料に変わる。
実行コスト
移管完了後の開示
最短のきっかけ
米国の契約移管が完了したとき
04 · 価値評価

ここから株価が見直される条件

以下のシナリオは会社予想ではなくJIIの試算である。6月16日終値 ¥238、26年12月期会社予想営業利益 ¥33億、企業価値(時価総額マイナス・ネットキャッシュ) ¥134億 を起点とする。レンジは、地域別の回復度合い、利益率の改善ペース、株主還元の規模を組み合わせている。

弱気
¥185 – ¥205
−22% 〜 −14%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~3倍
海外再投資が実らない。米州とEMEAは縮み続け、利益率は26年12月期予想の6.3%付近にとどまり、営業利益は¥33億前後、現金は積み上がる一方で自社株買いはごく小さな規模のまま。市場の評価倍率は変わらない。
主な要因
  • 米州とEMEAがマイナスのまま
  • 営業利益率が 6.3% 付近
  • 自社株買いがごく小さな規模のまま
  • 現金残高が期末に増加
中立
¥270 – ¥310
+13% 〜 +30%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~5〜6倍
会社予想を達成し、売却事業の影響をこなした後、基調的な利益成長が戻る。日本は成長を続け、売却益が計上され、配当は12円目標へ向けて上がり、倍率はハードウェア同業の割安な水準へ向けて切り上がる。
主な要因
  • 日本の売上が成長を継続
  • 売却益を計上
  • 配当が 12円 へ向けて上昇
  • EV/EBIT ~5〜6倍 へ見直し
強気
¥340 – ¥375
+43% 〜 +58%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~7〜8倍
2028年計画が早期に視野に入る。営業利益は¥40億の目標へ向かい、米州とEMEAが成長に戻り、拡大した自社株買いと計上された売却益が現金還元の意思を示す。株価は同業他社の評価レンジの中位まで見直される。
レンジ上限は2026年2月の高値¥376にあたる――回復後の¥40億の利益に対しても、なお予想EV/EBITで約7倍にすぎない水準である。
主な要因
  • 営業利益が ¥40億 へ
  • 米州とEMEAが再び成長
  • 拡大した自社株買いが実現
  • EV/EBIT ~7〜8倍 へ見直し
SOTP · 事業
4地域でのネットワーク機器・設置・保守
26年12月期 会社予想営業利益¥33億
正常化営業利益(売却影響を除く)~¥40億
想定EV/EBIT~5〜7倍
試算上の事業価値¥180〜240億
JIIの想定レンジ。現在の株価に織り込まれた約4倍は上回るが、資産の軽い同業他社の平均よりは低い。低めの利益率と浮動株の少なさを反映している。
SOTP · ネットキャッシュ
現金マイナス有利子負債・リース債務(26年3月)
現金及び現金同等物¥173億
有利子負債・リース債務−¥59億
ネットキャッシュ¥114億
ネットキャッシュは現在の時価総額の約46%。6月の自社株買いはそのうち約¥2.5億を使う。
SOTP · 類似企業倍率 · 2026年6月16日時点
上場する日本のネットワーク機器・法人通信機器メーカー
6835 アライドテレシス · 本レポート予想 4.1倍 · ROCE 16%
6750 エレコム · ネットワーク周辺機器・アクセサリー予想 4.2倍 · ROCE 34%
6676 バッファロー · 個人・SOHO向けネットワーク・ストレージ予想 5.8倍 · ROCE 33%
6675 サクサ · 法人向け通信・ネットワーク機器実績 14.1倍 · ROCE 11%
6754 アンリツ · 通信計測機器予想 23.9倍 · ROCE 12%
6月16日終値ベースのEV ÷ 各社自身の営業利益予想。サクサは実績(営業利益予想なし、利益37%減)。ROCE = 営業利益 ÷ 使用資本。
SOTP · 株主価値ブリッジ
試算上の株主価値と1株当たりレンジ
事業(~5〜7倍)¥180〜240億
ネットキャッシュ¥114億
SOTPによる試算株主価値¥290〜350億
自己株控除後株式数(26年5月開示)1.04億株
試算上の1株当たり価値¥283〜¥340
現在値¥238は、このレンジを下回っている。この差は、市場が海外事業の負担と余剰現金をどう評価しているかを示している。
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