東証スタンダード · 6835 · 12月決算 Allied Telesis Holdings K.K.
アライドテレシスホールディングス株式会社
ネットワークスイッチや無線機器を、現地設置と長期保守をつけて売る40年企業 — 主な顧客は日本の学校・病院・自治体
終値
¥2386/16
2026年2月高値 ¥376 から −37% · 24カ月で +143%
時価総額 / EV
¥248億 / EV ¥134億
ネットキャッシュ ¥114億(現金¥173億 − 有利子負債・リース¥59億)= 時価総額の 46%
EV / EBIT · 予想
4.1x
企業価値 ÷ 26年12月期会社予想営業利益 ¥33億 · 実績 3.2x
ROCE · 実績
16% · 25年12月期
営業利益 ÷ 平均使用資本 · 23年12月期の9%から上昇 · ROE 14.3%
営業利益率 · 全社
8.5% · 25年12月期
26年12月期予想 6.3% — 事業売却後の一段の低下
発行株式 & 浮動株
1.04億株 · 自己株控除後
新規自社株買いで最大 0.96% 消却 · 売買代金 ~¥1億/日
はじめに

アライドテレシスとは何か

アライドテレシスは、建物内のコンピュータ同士を、そしてインターネットへとつなぐ機器をつくる会社である。主力製品はネットワークスイッチ——多くの機器を一つのネットワークにまとめる中継装置——である。加えて、無線LANのアクセスポイント、ルーター、サーバーやPCをネットワークに接続するインターフェースカードもつくる。同社グループは約40年にわたり、19カ国27社でこの機器をつくり、売ってきた。

機器を出荷するだけの会社ではない。ネットワークを設計し、現地で設置し、その後は複数年の保守・サポートで対価を得ることで、大型案件を獲得する。日本では、老朽化したITシステムを更新する自治体・学校・病院が最大の顧客である。25年12月期の売上収益のうち約39%は、製品出荷の瞬間に計上されるのではなく、サービスや保守として時間をかけて稼ぐものだった。この継続的な収益の層が、純粋なハードウェアメーカーよりも事業を安定させている。

アライドテレシスは製品別ではなく地域別で開示する。単一の製品カテゴリーが売上の9割超を占めるためである。日本は売上の3分の2を占める利益の源泉であり、残りは米州、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、APAC(アジア・オセアニア)が分け合う。APACは主にグループへ供給する中国とシンガポールの工場を抱えている。

25年12月期(2025年12月終了の期)は、売上収益が3.1%増の¥499.5億、営業利益が23.5%増の¥42.3億——営業利益率8.5%で、3期連続の増益だった。使用資本利益率(ROCE)は2年前の9%から16%に達した。貸借対照表には¥114億のネットキャッシュがあり、時価総額の約46%に相当する。これは株主還元の原資である一方、資本が遊んでいないかという問いも生む。

投資の論点は、割安で現金が厚く、緩やかに改善するハードウェア企業が、利益率と還元を高め続け、自社の価値との差を埋められるかにある。26年12月期の会社予想は営業利益が22%¥33億だが、この減少は需要の弱まりではなく、米国事業の売却と成長投資によるものである。第1四半期の営業利益は実際には20%増えた。本稿では株価の推移、3つの論点、経営陣が引ける手立て、そして株価シナリオの順に見ていく。

01 · 株価レジーム

この2年間、株価を動かしてきたものは何か

株価は2024年5月の¥98から2026年2月12日の高値¥376まで上昇し、その後37%下落して¥238を付けた。上昇は利益回復を、下落は減益予想を映した。各局面を順に見る。

6835 vs TOPIX · 日足ローソク足+出来高
高値 ¥376 · 2026-02-12 現在 ¥238 · 2026-06-16 24カ月で +143%
アライドテレシス · 日足 60日移動平均 TOPIXリベース(1308.T) 出来高

01 · 上昇 2024年5月の¥98から、株価は18カ月でおよそ4倍になった。原動力は着実な利益回復である。営業利益は23年12月期の¥22億から24年12月期¥34億、25年12月期¥42億へと積み上がった。経営陣はこれに現金還元を重ねた。配当は23年12月期に1円で再開し、6円8円へ引き上げ、自社株買いも実施した。長く見過ごされた小型メーカーが、稼ぐ・現金を生む企業として見直された。

02 · 高値 終値は2026年2月12日に¥376の高値を付けた。その翌日の引け後、同社は25年12月期決算、新たな2028年中期計画、そして26年12月期予想を開示した。日本の決算は15:30の引け後に開示されるため、¥376の高値は投資家が新たな数字を見るに付いた——そしてその数字には減益予想が含まれていた。

03 · 下落 その後4カ月で株価は37%下落して¥238を付けた。26年12月期予想は営業利益が22%減の¥33億で、市場はこれを悪化と読んだ。減益予想の要因は2つで、いずれも需要の弱まりではない。米国事業の売却(後述)で約¥8億の利益が消え、海外の営業人員と技術者への投資を増やしたためである。5月15日の第1四半期決算では営業利益が実際には20%増えたが、ディレーティングは続いた。

04 · 現在 ¥238(2026年6月16日)で、株価は予想EV/EBITの4.1倍、ネットキャッシュは会社全体の約46%に相当する。次の確認点は具体的である。一つは、米国の契約移管が完了したときに、売却した米国事業の売却益が計上されるか。もう一つは、6月16日に決議された自社株買いに、より大規模な枠が続くか。三つ目は、経営陣が投資を進める米州とEMEAが下期に再び成長に転じるかである。

02 · 投資家論点

市場が論じている3つの問い

同社の決算、中期計画、株価の動きから3つの未解決の問いが浮かぶ。それぞれについて強気・弱気の論拠と、決着をつける開示を示す。

論点01 · 実質悪化か見かけの落ち込みか
22%減益は本物の悪化か、売却と再投資の費用か

26年12月期予想は営業利益が¥42億から¥33億へ低下する。判明している2項目が減少の大半を説明する。約¥8億の利益を抱えていた米国事業の売却と、海外の営業人員・技術者への支出増である。論点は、この2項目を超えて弱まっているものがあるかどうかである。

BULL
第1四半期は落ち込みが見かけにすぎないことを示す。米国事業が2月下旬に外れた後も、グループ営業利益は第1四半期に19.9%増え、粗利益率は日本の販売好調で3.4ポイント拡大して60.2%となった。経営陣は通期予想を据え置いたため、¥33億は保守的に見える——第1四半期だけでその44%を稼いだ。見かけとの見方が成立するのは、上期営業利益が再び想定の進捗を上回り、日本が成長を続ける場合である。
BEAR
弱気の論拠は、再投資が実らないかもしれない点にある。経営陣は、まさに売上が落ちている米州とEMEAで費用を積み増している——米州の売上は25年12月期に11%減り、EMEAは第1四半期に21%減った。この支出が地域の成長につながらなければ、きれいな利益を恒久的に高い費用基盤と引き換えにしたことになる。弱気の見方が説得力を増すのは、米州とEMEAの売上が下期までマイナスのまま、新たな費用だけが残る場合である。
論点02 · 日本の収益力 対 海外の重荷
日本の利益は稼ぎの薄い海外3地域を抱える理由になるか

日本は売上の3分の2を占める明確な利益の源泉である。米州、EMEA、APACはより小さく、利益率もはるかに低い。海外子会社のうちイスラエルと中国の2社は25年12月期末に債務超過だった。問いは、海外展開が価値を生むのか、グループの利益率の重荷になるのかである。

BULL
強気の論拠は、海外の重荷が意図的に縮んでいる点にある。同社はタイとフィリピンの赤字拠点を閉鎖し、減少する米国ケーブル事業を売却した。APACは主にグループ全体へ供給する中国とシンガポールの工場を抱えるため、外部売上の小ささはその役割を過小評価している。この整理が進む間に、グループROCEは2年で9%から16%へ上昇した。この見方が成立するのは、米州とEMEAが成長に戻り、海外でこれ以上の減損が出ない場合である。
BEAR
弱気の論拠は、資本が弱い地域へ流れ続ける点にある。EMEAの利益率は4.5%、債務超過の2子会社は依然として帳簿に残り、経営陣は縮んできた地域を伸ばすため支出を増やしている。日本の高い利益を低い利益率の海外へ再投資するたびに、単に還元する場合と比べグループROCEは希薄化する。同社は地域別の売上と利益を開示するが地域別の拘束資金は開示せず、重荷を直接測れない。この懸念が和らぐのは、各地域が資本コストを稼いでいると経営陣が示したときだけである。
論点03 · 現金の問い
厚い現金と増配は株価を見直させるか、割安放置か

ネットキャッシュは約¥114億、時価総額の46%にあたり、同社は累進配当と度重なる自社株買いを行う。それでも株価は予想EV/EBITの約4倍で取引される。論点は、資本還元がこの差を埋めるのか、ディスカウントが続くのかである。

BULL
強気の論拠は、還元が実体を伴い増えている点にある。配当は3年で1円から8円になり、28年12月期に12円が目標で、中間配当も始まった。自己株式は2025年12月に消却し、6月16日には新たな自社株買いが決議された。EVがわずか¥134億であるため、年間の控えめな自社株買いでも相当な割合を消却できる。見直しの見方が強まるのは、自社株買いが現在のごく小さな規模から拡大し、配当性向が上がり続ける場合である。
BEAR
弱気の論拠は、還元が小さすぎて効かない点にある。6月の自社株買いは¥2.5億——時価総額の約1%——が上限で、¥114億の現金残高に対し配当性向は約40%にとどまる。このペースでは現金は還元より速く積み上がり、価値の大半が遊休現金にある薄商いの小型株は何年も割安のままでありうる。割安放置のリスクが顕在化するのは、現金残高が26年12月期末に増え、自社株買いがごく小さな規模にとどまる場合である。
03 · カタリスト

今後12カ月で何が変わりうるか

経営陣が取りうる3つの行動を、いずれも同社自身の開示から引いた。それぞれが、増益を要さずに市場の評価を変えうる。

手立て01 · 資本政策
ごく小さな自社株買いを常設の枠へ広げる
ネットキャッシュ 対 直近の自社株買い枠(億円)
ネットキャッシュ(26年3月)
¥114億
25年12月期 配当支払
¥8億
26年6月 自社株買い上限
¥2.5億
直近の自社株買いはネットキャッシュの約2%、時価総額の1%
同社は正しいことを小規模に既に行っている——累進配当、中間配当、自己株式消却、度重なる自社株買い。差は規模である。6月16日の自社株買いは¥114億のネットキャッシュに対し¥2.5億が上限で、残高は積み上がり続ける。散発的な買いを常設の枠に変える——あるいは余剰現金を毎年還元する総還元目標を掲げる——ことで、市場は現金を死蔵ではなく還元可能なものとして評価できる。費用は取締役会決議1件と政策の明示だけである。
実行コスト
取締役会決議1件
最短のきっかけ
26年12月期決算 · 2027年2月
手立て02 · 開示
地域別に拘束された資金と利益率を開示する
25年12月期 地域別セグメント営業利益率
APAC
16.4%
米州
13.1%
日本
7.0%
EMEA
4.5%
地域別の拘束資金
未開示
利益率は地域で4倍の開きがあるが、地域別の拘束資金は未開示
投資家は各地域がどれだけ売り、稼ぐかは見えるが、在庫・売掛金・設備にどれだけ資金を拘束しているかは見えない——だから低利益率の地域や債務超過の2子会社が資本コストを稼いでいるか誰も判断できない。その欠けた数字が、日本対海外の論点の中心にある。地域別の使用資本と利益率を、年1回でも開示すれば、市場は海外展開が価値を生むか壊すかを判断でき、経営陣も各地域を擁護・是正する物差しを得られる。
実行コスト
年1回の表1枚
最短のきっかけ
26年12月期決算 · 2027年2月
手立て03 · 資本配分
売却益を計上し、調達資金を再配分する
米国事業の売却 — 判明分と保留分
売却完了
2026年2月27日
外れた売上
~¥18億/年
売却益
未計上
売却益は米国の契約移管待ち。調達資金は中核事業への投資に充当予定
2026年2月、同社はIPトリプルプレイ事業——米軍基地向けのケーブル・通信・電話サービス——を売却した。契約が2028年満了予定で売上が減少していたためである。売却で年約¥18億の売上と¥8億の利益が外れ、26年12月期の減益予想の大半を占める。一時的な売却益は、米国の契約移管が先に終わる必要があり、まだ計上されていない。この売却益を計上し、使途——自社株買い、配当、計画のM&A枠での規律ある買収——を示せば、予想の逆風を目に見える資本の使途に変えられる。
実行コスト
移管完了後の開示
最短のきっかけ
米国の契約移管が完了したとき
04 · バリュエーション

ここから株価が報われるには何が必要か

以下のシナリオは会社予想ではなくJIIの試算である。6月16日終値¥238、26年12月期会社予想営業利益¥33億、企業価値(時価総額マイナス・ネットキャッシュ)¥134億を起点とする。レンジは地域の回復、利益率の道筋、還元額を組み合わせている。

BEAR
¥185 – ¥205
−22% 〜 −14%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~3倍
海外再投資が実らない。米州とEMEAは縮み続け、利益率は26年12月期予想の6.3%付近にとどまり、営業利益は¥33億前後、現金は積み上がる一方で自社株買いはごく小さな規模のまま。市場は倍率を据え置く。
主な要因
  • 米州とEMEAがマイナスのまま
  • 営業利益率が 6.3% 付近
  • 自社株買いがごく小さな規模のまま
  • 現金残高が期末に増加
BASE
¥270 – ¥310
+13% 〜 +30%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~5〜6倍
会社予想を達成し、売却事業の反動を越えると基調的な利益トレンドが戻る。日本は成長を続け、売却益が計上され、配当は12円目標へ向けて上がり、倍率はハードウェア同業の割安な水準へ向けて切り上がる。
主な要因
  • 日本の売上が成長を継続
  • 売却益を計上
  • 配当が 12円 へ向けて上昇
  • EV/EBIT ~5〜6倍 へ見直し
BULL
¥340 – ¥375
+43% 〜 +58%
想定倍率 · 予想EV/EBIT ~7〜8倍
2028年計画が早期に視野に入る。営業利益は¥40億の目標へ向かい、米州とEMEAが成長に戻り、拡大した自社株買いと計上された売却益が現金還元の意思を示す。株価は同業レンジの中位へ見直される。
レンジ上限は2026年2月の高値¥376にあたる——回復後の¥40億の利益に対しても、なお予想EV/EBITで約7倍にすぎない水準である。
主な要因
  • 営業利益が ¥40億
  • 米州とEMEAが再び成長
  • 拡大した自社株買いが実現
  • EV/EBIT ~7〜8倍 へ見直し
SOTP · 事業
4地域でのネットワーク機器・設置・保守
26年12月期 会社予想営業利益¥33億
正常化営業利益(売却の重荷を除く)~¥40億
想定EV/EBIT~5〜7倍
含意される事業価値¥180〜240億
JII想定レンジ——株価自身の約4倍より上、資産の軽い同業平均より下。低めの利益率と薄い浮動株を映している。
SOTP · ネットキャッシュ
現金マイナス有利子負債・リース債務(26年3月)
現金及び現金同等物¥173億
有利子負債・リース債務−¥59億
ネットキャッシュ¥114億
ネットキャッシュは現在の時価総額の約46%。6月の自社株買いはそのうち約¥2.5億を使う。
SOTP · 類似企業倍率 · 2026年6月16日時点
上場する日本のネットワーク機器・法人通信機器メーカー
6835 アライドテレシス · 本レポート予想 4.1倍 · ROCE 16%
6750 エレコム · ネットワーク周辺機器・アクセサリー予想 4.2倍 · ROCE 34%
6676 バッファロー · 個人・SOHO向けネットワーク・ストレージ予想 5.8倍 · ROCE 33%
6675 サクサ · 法人向け通信・ネットワーク機器実績 14.1倍 · ROCE 11%
6754 アンリツ · 通信計測機器予想 23.9倍 · ROCE 12%
6月16日終値ベースのEV ÷ 各社自身の営業利益予想。サクサは実績(営業利益予想なし、利益37%減)。ROCE = 営業利益 ÷ 使用資本。
SOTP · 株主価値ブリッジ
含意される株主価値と1株当たりレンジ
事業(~5〜7倍)¥180〜240億
ネットキャッシュ¥114億
SOTP含意株主価値¥290〜350億
自己株控除後株式数(26年5月開示)1.04億株
含意される1株当たり¥283〜¥340
現在値¥238はレンジの下に位置する——この差が、市場が海外の重荷と遊休現金に与えている評価である。
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