東証スタンダード · 4628 · 3月期エスケー化研株式会社
エスケー化研株式会社
建物の改修・保護に使われる建築用塗料および仕上げ材
終値
¥9,1002026年8月25日
公開日 2026年8月26日
時価総額 / EV
¥122.760bn
EV ¥80.012bn
EV / 営業利益 · FY03/27
7.0x
FY03/27営業利益予想 ¥11.4bn
ROCE · 直近
7.0%
FY03/26
FCF利回り · FY03/26
7.5%
FCF ¥9.196bn
ネットキャッシュ / 時価総額
34.8%
¥42.748bn
60日平均売買代金約6,500万円2026年8月25日まで
自己株式控除後株式数1,349.0万株2026年3月31日
藤井家・関連会社の開示持分41.17%自己株式控除後
筆頭株主Shikoku Kosan YK31.88%
INTRODUCTION

SK KAKEN(4628)

マンションの大規模修繕を思い浮かべると、塗料そのものは工事費の一部にすぎない。足場を組み、下地を補修し、職人を手配し、安全と工程を管理する。住民への負担もある。そこで問われるのは、何キログラム塗るかではなく、次の大規模修繕まで建物をどれだけ長く保護できるかだ。

SK KAKENは、この建築改修の経済圏にいる。建物の外装を保護・更新する建築仕上材を手掛け、国内の建築仕上材市場で約52%のシェアを持つとしている。03 販売は代理店や施工会社を通じて行う一方、デベロッパー、ゼネコン、設計事務所、建物オーナーにも上流から働きかけ、最終発注の前段階で自社製品を仕様に組み込む。03

この仕様採用力が重要なのは、建物オーナーが買っているものが塗料の重量ではなく、耐久性、美観、施工性、そして次回修繕までの時間だからだ。物量が減る市場でも、1件の改修から得られる経済価値が増える余地はある。

5年間の推移

FY03/22–FY03/26

金額:億円FY03/22FY03/23FY03/24FY03/25FY03/26
売上高882.82955.801,008.831,061.421,097.07
連結営業利益124.44122.18
経常利益129.28128.03170.58148.74169.67
ROE6.96%6.63%8.06%6.79%7.24%
CFO77.3771.5491.7682.77127.58
現金同等物726.37587.78580.18529.53457.48

改修金額は増え、塗料の量は減っている

4628 vs TOPIX · 24カ月 · 日足+出来高
ピーク終値 11,670円 · 2月10日ピーク後安値終値 8,670円 · 8月3日終値 9,100円
エスケー化研60日移動平均TOPIX(起点=株価)出来高
14万4,370トン2025年 建築仕上塗材
−9.8%改修用塗材の最大品目
+18.7%改修・更新工事受注高
1,097億円FY03/26 連結売上高

CY2025の建築仕上塗材の生産量は前年比8.5%減の14万4,370トン、最大の改修向け塗料カテゴリーも9.8%減の4万7,060トンだった。01 一方、国土交通省によると、2026年3月期に相当する建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は18.7%増の16兆4,104億円となった。02

両者は矛盾しない。改修工事のコストには、塗材だけでなく、足場、人件費、下地処理、工程管理、居住者への負担が含まれる。こうした周辺コストが高まるほど、次回修繕までの期間を延ばせる高耐久材料の価値は上がる。少ない材料でより長く建物を保護できるなら、塗料使用量が減っても改修1件当たりの付加価値は増えうる。

SK KAKENは、プレミアムシリコンなどで高耐久性やライフサイクルコスト低減を訴求している。05 さらに、仕様決定の上流に入り込む販売モデルを持つ。物量ではなく性能で選ばれる比重が高まれば、塗料市場のトン数が縮小しても、1件当たりでより多くの売上を取り込める構造になり得る。

実績も、その可能性とは整合的だ。連結売上高はFY03/22の882.82億円からFY03/26の1,097.07億円へ増えた。FY03/26の営業利益は122.18億円、CFOは127.58億円、現金ベースのFCFは91.96億円だった。04

投資の仕組み
01建物所有者・設計事務所デベロッパー、ゼネコン
02製品を仕様へ組み込む将来の発注に先立つ上流段階
03販売店・施工店製品を施工現場へ
04耐久性ライフサイクルコストの低減
05改修1件当たりの価値より多くの金額を取り込む

ただし、ここには価格改定という大きな要因がある。SK KAKENは2023年にも価格改定を実施しており、2026年4月7日の公式発表でもその事実に言及している。0607 2026年の改定幅は水性製品15~25%、溶剤系製品20~30%、粉体製品10~15%と大きく、原材料高と供給制約が背景にあった。06

したがって、売上高が伸びる一方で業界トン数が減っているという事実だけから、プレミアムミックスの進展、仕様採用力の強化、シェア上昇を読み取ることはできない。売上増の一部は明らかに価格要因だ。より強いフランチャイズと評価できるのは、価格改定後も売上高が業界物量に対して相対的に強く、かつ利益率が維持される場合だ。現時点では、数量・価格・ミックス・シェアの分解開示がなく、その中身は見えない。

重要なのは「高齢化で塗り替え需要が増える」という単純な話ではない点にある。高耐久化が進めば、むしろ塗り替え頻度も材料使用量も減りうる。それでもSK KAKENが改修1件当たりの価値を取り込めるなら、物量減少は必ずしも利益成長の否定材料にはならない。

01
事業の問い

FY03/27第1四半期は実力値ではない

FY03/27第1四半期は、一見すると大幅な収益性改善に見える。売上高は前年同期比21.2%増の317.53億円、営業利益は84.4%増の51.98億円、営業利益率は16.4%に達した。08

しかし、会社側は、溶剤不足への懸念と将来の値上げを見越した駆け込み受注が発生し、その反動を見込んでいると説明した。強い第1四半期の後も、上期予想は売上高541億円、営業利益54億円、通期予想は売上高1,120億円、営業利益114億円で据え置かれた。08

この上期予想から逆算すると、第2四半期は売上高223.47億円、営業利益2.02億円、営業利益率約0.9%となる。前年のFY03/26上期は売上高529.63億円、営業利益57.64億円だったため、第1四半期を差し引いた前年第2四半期は売上高267.55億円、営業利益29.44億円、営業利益率11.0%だった。0809

第1四半期の16.4%を新しい平常利益率として扱うのは不自然だ。4月に公表された供給制約と大幅な価格改定も、需要前倒しという説明と整合する。06 連結営業利益の実力値としては、100~120億円程度を見るのが妥当だ。会社計画の114億円もその範囲に収まる。

前倒し需要が一巡した後に、通常の需要環境でどの程度の利益率を保てるかが次の確認点になる。そこで売上高の底堅さと100~120億円規模の営業利益が維持されるなら、物量減少下でも仕様採用力を生かして経済価値を取り込むという見方に厚みが出る。

FY03/27第1四半期実績と通期会社予想
1Q売上高317.53億円+21.2% YoY
1Q営業利益51.98億円+84.4% YoY
通期営業利益予想114億円据え置き
02
資本配分の問い

金融資産は時価総額を上回る

SK KAKENを単なる塗料株として見にくい最大の理由は、貸借対照表にある。

2026年3月末時点で、現金・預金1,052.40億円、長期預金260.11億円、投資有価証券189.56億円を保有し、負債は30.00億円だった。これを合算すると、簿価ベースの負債控除後の広義金融資産は1,472.07億円となる。10

ただし、この全額を即時に使える現金とみなすべきではない。投資有価証券の中心は満期保有目的の債券で、償還まで1~5年を要するものがある。長期預金にはオプション性を伴う預金や期間延長型の預金が含まれる。開示された時価を用いると、負債控除後の広義金融資産は約1,466.47億円となる。10

それでも規模は大きい。2026年8月25日時点の時価総額は約1,227.60億円であり、広義の金融資産は時価総額を上回る。

本業も現金を生んでいる。FY03/26のCFOは127.58億円、固定資産の現金取得額は35.62億円で、現金ベースFCFは91.96億円だった。04 大規模な再投資を必要としない成熟企業がこの水準のFCFを続ければ、配当や自社株買い、投資に振り向けない限り、金融資産はさらに積み上がる。

一方、金融資産が会社の中に存在することと、それが1株当たり価値として顕在化することは別の話だ。

2024年にはAVI Japan Opportunity Trustが、自己株式197万3,183株の消却と、FY03/24の年間配当を290円へ引き上げる株主提案を行ったが、SK KAKEN取締役会は双方に反対した。会社側は、投資その他の企業活動に備えて財務余力を維持する意義を強調した。11

現在、ROE8%超とP/B1.0倍超を目標として掲げる一方、蓄積した金融資産とそれらの目標を結び付ける定量的な資本配分方針は示されていない。10 FY03/26の年間配当230円には50円の記念配当が含まれ、普通配当は180円だった。FY03/27の会社予想も180円である。04

自己株式の消却は資本構成上のシグナルにはなるが、現金を株主へ渡す行為ではなく、既に発行済株式数から除かれている自己株式を消却しても、流通株式数は減らない。

したがって、1,472.07億円の金融資産は確かな価値を持つ一方、そのどこまでが事業上必要で、残余をどう使い、どの速度で1株当たり価値へ結び付けるかは、今後の資本配分に依存する。

株価が織り込む本業価値

SK KAKENの2026年8月25日終値は9,100円、自己株式控除後株式数は1,349.01万株で、時価総額は約1,227.60億円だった。08

現金同等物457.48億円から負債30.00億円を差し引いた通常のネットキャッシュは427.48億円。時価総額からこれを引くと、通常のEVは約800.12億円となる。FY03/27の営業利益/EBIT会社予想114億円に対して、約7.0倍のEV/EBITだ。

100~120億円の正常化営業利益に7倍を当て、通常のネットキャッシュだけを加えると、株式価値は次のようになる。

2026年8月25日終値1株9,100円
通常ベースのネットキャッシュ427.48億円
通常ベースのEV800.12億円
自己株式控除後株式数1,349.01万株

正常化営業利益 | 7倍の事業EV | 通常ネットキャッシュ加算後 | 1株当たり価値 | 100億円 | 700億円 | 1,127.48億円 | 約8,360円 | 110億円 | 770億円 | 1,197.48億円 | 約8,880円 | 120億円 | 840億円 | 1,267.48億円 | 約9,400円

正常化営業利益7倍の事業EV通常ネットキャッシュ加算後1株当たり価値
100億円700億円1,127.48億円約8,360円
110億円770億円1,197.48億円約8,880円
120億円840億円1,267.48億円約9,400円

9,100円という株価は、強い利益成長を前提にしなくても説明できる水準にある。通常のネットキャッシュだけを使った保守的な評価でも、株価は正常化営業利益レンジの中に収まる。

さらに広義の金融資産を機械的に差し引くと、割安さは極端に見える。時価総額1,227.60億円から、簿価ベースの負債控除後の広義金融資産1,472.07億円を差し引いた広義金融資産調整後EVは約マイナス244.47億円となる。これは正常化EBIT約120億円に対して約マイナス2.0倍、FY03/27会社予想114億円に対して約マイナス2.2倍に相当する。

ただし、この広義金融資産調整後EVは、実現可能価値でも目標株価でもない。すべての金融資産が即時換金可能なわけではなく、すべてが事業上の余剰資産とも限らず、株主還元に充てる方針も定まっていない。これは、時価総額に対してどれほど大きな金融資産が存在するかを可視化するための割安度の診断指標にすぎない。

つまり、現在の株価は本業に対してすでに低い倍率しか払っておらず、その上に、資本配分次第で1株当たり価値へ転化し得る大きな金融資産が乗っている。

投資判断

SK KAKENの魅力は、縮小市場の中で売上を守っていることだけではない。日本では改修工事の金額が増える一方、建築仕上材の物量は減っている。足場や人件費などの周辺コストが重くなるほど、耐久性やライフサイクル性能の価値は相対的に高まる。約52%の国内シェアと、発注前の仕様決定に入り込む営業モデルを持つSK KAKENには、その価値を取り込む余地がある。

ただし、現在の売上増には大幅な価格改定が混ざっている。プレミアムミックス、仕様採用力、シェア上昇の寄与を価格要因から切り分ける開示はない。FY03/27第1四半期も需要前倒しで大きく歪んだ。したがって、本業は100~120億円の正常化営業利益を軸に見るのが自然だ。

その前提でも、通常EVは約800.12億円、FY03/27会社予想営業利益114億円に対して約7.0倍にすぎない。大幅な利益成長を置かなくても、株価は十分に安い。さらに、1,472.07億円の負債控除後の広義金融資産を機械的に反映した広義金融資産調整後EVはマイナス244.47億円となり、貸借対照表の厚みがいかに大きいかが分かる。

もっとも、その金融資産がいつ、どの程度1株当たり価値に変わるかは、今後の資本配分に左右される。ここを確定価値として織り込むべきではない。

本業だけでも過大な成長期待を必要としない価格にあり、金融資産はその上に残る大きな選択肢だ。改修1件当たりの経済価値を本当に高めていることが確認できれば、低い本業評価には再考の余地が生まれる。そこに明確な資本配分方針が加われば、現在は貸借対照表の中に留まっている価値が1株当たり価値へつながる道筋も見えやすくなる。

Sources

  1. [^1]: Japan Building Coating Materials Association, CY2025 architectural finishing-material survey: official survey PDF
  2. [^2]: Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, building-renovation and renewal survey for the year ended March 2026: official MLIT release
  3. [^3]: SK KAKEN company materials describing its approximately 52% market share and upstream/downstream specification sales model: SK KAKEN Work & Challenge
  4. [^4]: SK KAKEN, FY03/26 full-year results, May 13, 2026: official results PDF
  5. [^5]: SK KAKEN Premium Silicone product materials: official product page
  6. [^6]: SK KAKEN, 2026 price revision, April 7, 2026: official notice PDF
  7. [^7]: SK KAKEN, 2023 price revision: official notice PDF
  8. [^8]: SK KAKEN, FY03/27 1Q results, August 7, 2026: official results PDF
  9. [^9]: SK KAKEN, FY03/26 H1 results, November 10, 2025: official results PDF
  10. [^10]: SK KAKEN, FY03/26 securities report, June 25, 2026: official securities report PDF
  11. [^11]: SK KAKEN, board opinion on AVI Japan Opportunity Trust shareholder proposals, May 13, 2024: official board opinion PDF
本稿について

JIIはIRコンサルティング会社です。本稿は公開情報をもとに、投資家が企業の経済性と開示を理解するための視点を示した編集記事であり、特定の有価証券の売買や保有を推奨するものではありません。株価、倍率、評価感応度は変化するため、判断にあたっては最新の一次開示をご確認ください。

Compounder Profiles 一覧 · 方法論言語: EN · JPJapan Investor Interface Co., Ltd.