NSD:大手銀行向け開発が伸長、2027年3月期予想を上方修正
NSDは金融機関などの業務システムを開発し、稼働後の運用まで手掛ける。2027年3月期第1四半期は、大手銀行の基幹システム更改や既存案件の拡大を背景に、金融ITの売上高が前年同期比14.7%増加した。同事業の受注残も前年同期末比23.6%増え、9月28日には通期の売上高・営業利益予想を上方修正した。長年の取引を通じて蓄積した顧客業務への知見を生かし、増益基調をどこまで持続できるかが焦点となる。
企業
株式会社NSD
NSD Co., Ltd.
銀行、保険会社、製造業、通信会社、公共団体などに向けて、システム開発、IT基盤の構築・運用、業務用ソフトウエアを提供する。
- 終値
- 2,946.5円
- 2026年9月30日
- 時価総額
- 2,223.2億円
- 自己株式控除後7,545.2万株
- 現預金
- 294.8億円
- 2026年6月30日
- 予想EV / 営業利益
- 9.6倍
- 2027年3月期会社予想
- 売上高
- 1,178.1億円、前期比9.3%増
- 2026年3月期実績
- 営業利益率
- 16.2%
- 2026年3月期実績
注:株価は9月30日の終値、株式数は8月31日時点の自己株式控除後7,545万2,365株を使用した。6月30日の現預金は294.8億円で、別に流動資産の有価証券30.0億円を保有する。本稿のEVは時価総額から現預金のみを控除してJIIが試算した。出所:資料1・11、東証取引データ。
要約
NSDは金融機関などの業務システムを開発・運用する。JIIでは、大手銀行のシステム更改と既存案件の拡大が、長期取引先向けの売上高・利益を押し上げているとみる。2027年3月期第1四半期の金融ITは、売上高が前年同期比14.7%増の95.9億円、営業利益が同13.2%増の18.0億円となった。受注残も前年同期末比23.6%増の116.5億円に積み上がった。案件が計画どおり進み、受注残の消化が進めば、今期の増収を支える要因となる。
銀行の基幹システムは、口座、決済、融資などの日常業務を支える。更改では新機能の開発に加え、現行業務を止めずに新システムへ移行する技術力が求められる。長期取引を通じて顧客固有の業務手順や既存システムを熟知した技術者を配置できることは、追加案件の提案から開発までを担ううえで強みとなる。こうした顧客理解の蓄積が継続受注を支えている。
9月28日には、2027年3月期の売上高予想を従来比20億円増の1,280億円、営業利益予想を6億円増の201億円へ引き上げた。4~8月累計売上高は前年同期比9.7%増の510.3億円となった。修正後予想の達成確度を見極めるうえでは、足元の売上進捗と金融ITの受注残の消化状況を確認したい。
図表1 業績・評価の要点
| 観点 | 足元の状況 | JIIの見方 |
|---|---|---|
| 金融IT | 第1四半期売上高14.7%増、受注残23.6%増 | 大手銀行の基幹更改と既存案件の拡大が今期の増収をけん引 |
| 顧客基盤 | 上位50社の8割以上と10年以上取引(2025年統合報告書) | 顧客業務への理解が次の案件獲得と安定遂行を支える |
| 収益性 | 第1四半期の連結営業利益17.4%増 | 増収額に対する営業増益額の比率は約23.5% |
| 中期投資 | 上流工程への要員配置とリーダー育成を計画 | 銀行更改後の案件も担える人材の確保が利益成長の持続性を左右 |
| 評価 | 9月30日終値で予想EV/営業利益9.6倍 | 受注残の消化が増収・増益につながるか、その持続性が評価の焦点 |
出所:資料2(6~8頁)、資料5(9~10頁)、資料6(5・15頁)、資料7・8。
事業内容
NSDは顧客の業務に合わせてソフトウエアを開発し、IT基盤の構築から運用・保守まで請け負う。2026年3月期の連結売上高1,178.1億円のうち、外部顧客向けのシステム開発事業が約1,001億円、ソリューション事業が約177億円を占めた。システム開発事業は金融IT、産業IT、社会基盤IT、ITインフラで構成され、このうち金融ITの売上高が最も大きい。
金融ITでは、銀行、保険、証券会社などの業務システムを手掛ける。大手銀行向けでは、基幹システムの更改と既存案件の拡大が、2026年3月期から2027年3月期第1四半期にかけての増収に寄与した。要件定義から運用・保守まで関わる技術者には、顧客固有の業務手順や既存システムへの知見が蓄積する。こうした人材を同じ顧客の次の開発案件に配置できることが、継続受注につながっている。
2025年統合報告書によると、取引先上位50社の8割以上と10年以上の取引がある。同報告書に示された過去3年間の不採算額は、売上高の平均0.04%にとどまる。受注時に採算を審査し、案件ごとに原価を見積もったうえで、各工程で品質を管理する。顧客業務への理解が追加受注につながり、案件管理の徹底が採算を支えている。
図表2 金融機関との長期取引が次の受注につながる経路
| 段階 | NSDが担う仕事 | 収益への影響 |
|---|---|---|
| 顧客業務の把握 | 行員や保険会社の実務、既存システムの仕様を理解 | 要件定義や改修の提案につながる |
| 更改計画 | 新旧システムを接続し、移行手順を設計 | 大型更新案件への参加範囲が広がる |
| 開発・試験 | 社員と協力会社の技術者を配置して案件を遂行 | 案件の進捗に応じて売上高を計上する |
| 品質管理 | 工程ごとに原価、納期、品質を確認 | 不採算案件を抑え、営業利益を守る |
| 運用・追加開発 | 稼働後の保守と次の機能追加に対応 | 顧客との接点が続き、新たな受注機会が生まれる |
出所:資料1・3~6・12。図表2はNSDの開示資料を基にJII作成。
業績動向
2027年3月期第1四半期の連結売上高は前年同期比9.6%増の299.3億円、営業利益は同17.4%増の41.8億円となった。売上総利益は同15.2%増の72.1億円と、販管費の同12.3%増を上回った。増収額26.3億円に対する営業増益額6.2億円の比率は約23.5%である。金融ITの増益に加え、ソリューション事業の営業損失縮小も連結営業利益を押し上げた。
金融ITの売上高は前年同期から12.3億円増の95.9億円、営業利益は2.1億円増の18.0億円となった。最終顧客の業種別に集計した大手銀行向け売上高も、前年同期比17.1%増の44.7億円だった。金融ITの数値は事業部門別でセグメント間取引を含む一方、大手銀行向け売上高は最終顧客別の外部売上高であり、両者は合算できない。集計範囲は異なるものの、金融IT全体、大手銀行向けともに増収が進んだ。
図表3 2027年3月期第1四半期の金融ITと連結業績
| 項目 | 前年同期 | 2027年3月期第1四半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 金融IT売上高 | 83.6億円 | 95.9億円 | +14.7% |
| 金融IT営業利益 | 15.9億円 | 18.0億円 | +13.2% |
| 金融IT受注残 | 94.3億円 | 116.5億円 | +23.6% |
| 大手銀行向け売上高(最終顧客別) | 38.1億円 | 44.7億円 | +17.1% |
| 連結売上高 | 273.0億円 | 299.3億円 | +9.6% |
| 連結営業利益 | 35.6億円 | 41.8億円 | +17.4% |
注:金額は百万円表示の会社資料を億円に換算し、小数第2位を四捨五入した。金融ITの売上高・営業利益はセグメント間取引を含み、大手銀行向け売上高は最終顧客別の外部売上高。
2026年6月末の連結受注残は前年同期末比11.5%増の319.7億円となった。うち金融ITは116.5億円で、連結受注残の36.4%を占める。案件が予定どおり進めば、受注残は次の四半期以降、順次売上高に計上される。一方、金融ITの第1四半期受注高は前年同期比1.4%増の72.2億円にとどまった。更改需要の継続性を見極めるうえでは、今後の受注高の推移が確認点となる。
ソリューション事業の第1四半期売上高は前年同期比18.9%増の40.7億円となった。医療・ヘルスケアは同38.8%増、セキュリティは同17.8%増、株主関連サービスは同21.8%増である。営業体制の強化に伴う費用負担から0.7億円の営業損失を計上したものの、損失額は前年同期の2.2億円から縮小した。今後は、増収が営業損益の黒字化につながるかを確認したい。
出所:資料2(4~11頁)。
今後の見通し
9月28日に引き上げた2027年3月期の会社予想は、売上高1,280億円、営業利益201億円、親会社株主に帰属する当期純利益133億円である。修正理由として、金融ITでの基幹システム更改と既存案件の拡大、ソリューション事業でのセキュリティ製品の販売を挙げた。4~8月累計売上高も前年同期比9.7%増の510.3億円となった。金融ITの受注残が予定どおり消化されるかが、今期の増収を見極めるうえで重要となる。
修正後の会社予想に基づく2027年3月期の営業利益率は15.7%と、2026年3月期実績の16.2%を下回る。人材育成、上流工程への要員配置、AI・ソリューションの研究開発に費用を投じる計画である。第1四半期は、売上総利益の増加が販管費の増加を上回り、連結営業利益率は前年同期の13.0%から13.9%へ上昇した。通期では、こうした先行費用を増収に伴う売上総利益の増加でどこまで吸収できるかが、営業増益幅を左右する。
図表4 2027年3月期会社予想と2029年3月期会社計画
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期会社予想 | 2029年3月期会社計画 |
|---|---|---|---|
| 連結売上高 | 1,178.1億円 | 1,280.0億円 | 1,500億円 |
| 連結営業利益 | 190.7億円 | 201.0億円 | 234億円 |
| 連結営業利益率 | 16.2% | 15.7% | 15.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 130.1億円 | 133.0億円 | 154億円 |
注:2027年3月期は2026年9月28日修正後の会社予想。2029年3月期は2026年5月8日公表の中期経営計画。
中期経営計画では、システム開発事業の売上高を2026年3月期の約1,008億円から2029年3月期に1,240億円へ伸ばす。両数値はグループ内取引消去前で、前述の外部顧客向け売上高とは集計範囲が異なる。要件定義やコンサルティングを含む上流工程の受注拡大に向け、コンサルティング関連人員を40人から70人へ増員し、プロジェクトを率いる人材も育成する計画である。既存顧客の次期システム投資に構想段階から関わり、開発全体を担う案件が増えれば、現在の銀行更改案件が一巡した後の売上高を補うことができる。
出所:資料2(5頁)、資料3(13頁)、資料5(15~18・24頁)、資料7・8。
財務状況・株主還元
2026年3月期の営業キャッシュフローは161.6億円、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計でみたフリーキャッシュフローは130.7億円だった。2026年6月末の現預金は294.8億円である。JIIでは、営業キャッシュフローと手元資金の水準を踏まえれば、人材育成や研究開発を進めながら株主還元を続ける余地があるとみる。
9月28日には、2027年3月期の年間配当予想を1株97円から100円へ引き上げた。会社予想に基づく配当性向は56.7%、自社株買いを含む総還元性向は71.6%となる。5月に決議した上限20億円の自社株買いでは、8月末までに14.2億円を取得した。10月16日には自己株式300万株を消却する予定である。今後は、人材・研究開発への投資と株主還元を営業キャッシュフローの範囲で両立できるかが焦点となる。
図表5 資金創出と資本配分
| 項目 | 金額・方針 | 時点 |
|---|---|---|
| 営業キャッシュフロー | 161.6億円 | 2026年3月期実績 |
| フリーキャッシュフロー | 130.7億円 | 2026年3月期実績、営業CF+投資CF |
| 現預金 | 294.8億円 | 2026年6月末 |
| 2027年3月期年間配当予想 | 1株100円 | 2026年9月28日修正 |
| 自社株買い実績 | 14.2億円 | 2026年8月末累計 |
| 成長投資 | 約250億円 | 2027~2029年3月期の会社計画 |
| 株主還元 | 約300億円 | 同上 |
注:成長投資には、営業キャッシュフローに反映される人材・研究開発などの費用が含まれる。出所:資料1・3・5・9~11。
株価と評価
2026年9月30日の終値2,946.5円と8月31日時点の自己株式控除後株式数から、時価総額を2,223.2億円と試算した。ここから6月末の現預金294.8億円を控除したEVは1,928.4億円となり、2027年3月期会社予想の営業利益201億円に対して9.6倍である。同じ株価と会社予想に基づく予想PERは16.7倍、年間配当予想100円に対する予想配当利回りは3.4%となる。9月30日までの60営業日の平均売買代金は約8.1億円だった。
現時点のEVを2029年3月期の会社計画営業利益234億円で割ると8.2倍となる。9月30日の株価と6月末の現預金を据え置き、会社計画が達成されると仮定した参考値である。JIIでは、受注残の消化が営業増益につながるか、さらに更改後の追加開発や上流工程の受注がどこまで続くかが、今後の株価評価を左右するとみる。
図表6 2026年9月30日時点の株価評価
| 項目 | JII試算・会社資料 |
|---|---|
| 終値 | 2,946.5円 |
| 自己株式控除後株式数 | 7,545.2万株(2026年8月31日) |
| 時価総額 | 2,223.2億円 |
| 現預金 | 294.8億円(2026年6月30日) |
| EV(時価総額-現預金) | 1,928.4億円 |
| 2027年3月期会社予想営業利益 | 201.0億円 |
| 予想EV/営業利益 | 9.6倍 |
| 予想PER | 16.7倍 |
| 予想配当利回り | 3.4% |
注:株価と売買代金は2026年9月30日までの東証取引データからJII集計。株式数はNSDの2026年8月31日時点の開示値。本稿のEVは時価総額から2026年6月末の現預金のみを控除したJII試算で、同日時点の流動資産の有価証券30.0億円は控除していない。出所:資料1・5・7・9・11。
注目点
金融ITの受注高と受注残は、基幹システム更改に伴う受注の継続性を見極める指標となる。第1四半期の受注高は前年同期比1.4%増にとどまった一方、受注残は23.6%増えた。次の中間決算で受注高の伸びが強まり、受注残も高水準を維持すれば、既存顧客の更改・追加開発が続いていることを確認する材料となる。
金融ITの利益率は、大型案件の採算を見極めるうえで重要である。第1四半期の営業利益率は18.8%と、前年同期の19.0%に近い水準を維持した。中期計画ではリーダーの育成と協力会社との連携強化を掲げている。案件拡大に必要な人材を確保し、増収で要員費用を吸収できれば、金融ITの増益が連結営業利益を押し上げる。
中期的には、既存の銀行顧客から上流工程や新たなシステム開発を受注できるかが焦点となる。コンサルティング関連人員を40人から70人へ増やす計画である。次期システム投資の構想段階から関わる案件が増えれば、現在の更改案件が一巡した後も新たな開発売上高を確保できる。
図表7 金融ITの成長を見極める先行指標
| 確認項目 | 次に見る開示 | JIIの見方 |
|---|---|---|
| 銀行更改の継続 | 金融ITの受注高・受注残 | 受注高と受注残の伸びが続けば、今期以降の売上高を支える |
| 大型案件の採算 | 金融ITの売上高・営業利益率 | 売上高増加と利益率維持がそろえば、既存顧客との取引拡大が増益につながる |
| 上流工程への進出 | コンサルティング人員、金融機関向け新規案件 | 更改後も構想・設計段階から受注できれば、案件の継続期間が延びる |
| 連結利益への波及 | 売上総利益、販管費、営業利益 | 売上総利益の増加で人的投資を吸収できれば、通期利益の伸びにつながる |
出所:資料2(7~8頁)、資料5(10・15・17~18・24頁)。
一次資料
本稿について
JIIはIRコンサルティング会社であり、投資助言業者ではない。本稿は公開情報に基づき、企業の経済性と開示を投資家が理解するための調査である。特定の有価証券の売買・保有を推奨するものではない。価格と倍率は2026年9月30日終値を基準としており、その後の市場変動を反映しない。
利益相反。 JII、その役員および関係者は、JII調査の対象企業の有価証券を保有または売買しない。掲載企業との有償契約がある場合は、該当する公表物でその関係を開示する。