銘柄レポート

銘柄レポート東証プライム · 2325 · 12月決算

NJS(2325):国内コンサルが収益をけん引、運営・デジタルの採算に注目

上下水道の計画・設計を主力とし、施設運営や業務システム、点検へ事業領域を広げている。FY12/26上期は国内大型案件の進捗により、売上高が前年同期比17.5%増、営業利益が同27.0%増となった。財務面では262.57億円のネットキャッシュを有する。今後は運営・デジタル分野が安定した収益源に育つかを見極めたい。

企業

株式会社NJS

NJS Co., Ltd.

上下水道の計画・設計を主力に、運転・維持管理、業務システム、点検まで事業領域を広げる建設コンサルタント。

終値
4,710円
時価総額
448.54億円
ネットキャッシュ
262.57億円
企業価値(EV) /
予想営業利益
5.17倍
FY12/25売上高
248.54億円(前期比10.0%増)
FY12/25営業利益率
13.15%

要約

NJSは、地方自治体や公共機関を主な顧客とする上下水道分野の建設コンサルタントである。上水道・下水道の計画、設計、耐震化、更新、資産管理が主力で、近年は運転・維持管理、業務システム、ドローン等を使った点検、海外コンサルにも事業を広げている。FY12/25の売上高は248.54億円(前期比10.0%増)、営業利益は32.68億円(同9.2%増)。国内業務が売上高の92.2%を占め、利益の中心となっている一方、海外業務は赤字が続く。

国内では上下水道施設の老朽化が進む一方、自治体では技術職員の不足が課題となっている。更新需要が増えるなかで発注者側の人員が限られれば、調査・設計だけでなく、資産管理、運転・維持管理、点検まで外部委託が広がる余地がある。NJSは全国63拠点、技術士388人、926自治体との取引実績を有する。既存顧客に運営、点検、システムまで提案できれば、1顧客当たりの受注機会拡大につながる可能性がある。

FY12/26上期は売上高167.91億円(前年同期比17.5%増)、営業利益49.66億円(同27.0%増)となり、営業利益は据え置かれた通期予想36億円を13.66億円上回った。同社は大型案件の進捗や完了が上期に集中したと説明している。このため、上期の営業利益率29.6%をそのまま通期の収益力とみるのは難しい。下期にどの程度の反動が出るか、そのうえで通期利益がどの水準に着地するかが当面の注目点となる。

2026年9月2日終値4,710円で時価総額は448.54億円。FY12/26上期末の現金及び預金から保守的な負債・リース代替値を差し引いたネットキャッシュは262.57億円で、時価総額の58.5%に相当する。企業価値(EV)は185.97億円、会社予想営業利益36億円に対するEV倍率は5.17倍。倍率は低いが、その一因は多額の現預金にある。評価が切り上がるには、運営・デジタル分野への投資が利益やFCFの持続的な増加につながることを確認したい。

事業内容

法定セグメントは国内業務と海外業務の2つである。主力の国内業務では、上下水道施設の基本計画、設計、耐震化、更新、資産管理などを受託する。FY12/25の国内売上高は229.10億円、セグメント利益は34.89億円。日本下水道事業団向け売上高は42.65億円で、連結売上高の17.2%を占めた。公共事業が中心のため、発注時期や予算、案件の進捗・検収時期によって年度内の売上高や利益は変動しやすい。

全国63拠点、技術士388人、926自治体との取引実績は、全国で案件を受注・遂行するうえでの基盤とみられる。ただし、これらの数字だけで価格決定力や高い参入障壁が確認できるわけではない。大型案件に人員を適切に配置し、人件費や外注費の上昇を吸収できるかが国内事業の採算を左右する。

海外業務は90カ国を超える案件実績を持つが、FY12/25は売上高19.45億円、セグメント損失2.20億円、FY12/26上期も0.68億円の損失だった。現時点では、まず採算改善を確認したい。

同社は法定セグメントとは別に、コンサルティング、オペレーション、グローバルなどの事業区分を示している。オペレーションでは施設の運転・維持管理を手掛け、現在26拠点を運営する。ソフトウェアは300都市超に導入され、開示契約数は172件。点検分野では管路ドローン、マンホール水位のミリ波計測、水中ドローンなどを展開している。導入実績は積み上がっているが、継続収入の規模、更新率、製品別の利益率は開示されていない。ソフトや点検を独立した成長事業として評価するには、採算面の開示がなお必要である。

図表1 FY12/25 法定セグメント別売上高・利益(連結売上高248.54億円基準)

セグメント 売上高(億円) 構成比 セグメント利益(億円) 利益率
国内業務 229.10 92.2% 34.89 15.2%
海外業務 19.45 7.8% −2.20 −11.3%
連結 248.54 100.0% 32.68 13.1%

注:管理上の事業区分と法定セグメントは異なる。端数処理により合計が一致しない場合がある。(出所)2025年12月期有価証券報告書を基にJII作成・計算。

図表2 国内事業の基盤(会社開示値)

項目 規模 見方
国内拠点 63 全国での案件対応
技術士 388人 技術審査・案件遂行を担う人員
取引自治体 926 全国の上下水道事業体との取引実績
ソフト導入 300都市超・172契約 業務システムの導入実績
運営拠点 26 運転・維持管理の受託実績

(出所)統合報告書2025(15–16、28頁)を基にJII作成・計算。

業績動向

売上高はFY12/22の192.32億円からFY12/25の248.54億円へ増加し、3年間の年平均成長率は8.9%となった。FY12/25単年では前期比10.0%増だった。営業利益はFY12/23に16.19億円まで落ち込んだ後、FY12/24に29.93億円、FY12/25に32.68億円へ回復し、FY12/25は同9.2%増となった。営業利益率はFY12/22から順に10.1%、7.3%、13.2%、13.1%で推移しており、案件構成や完了時期の影響を受けて振れが出ている。

FY12/26上期は受注高140.80億円(前年同期比15.3%増)、売上高167.91億円(同17.5%増)、営業利益49.66億円(同27.0%増)となった。国内の大型コンサル案件が寄与し、国内業務のセグメント利益は50.35億円に達した。一方、同社は通期予想を受注高290億円、売上高280億円(前期比12.7%増)、営業利益36億円(前期比10.2%増)、経常利益37億円、親会社株主利益24.5億円(同12.3%増)で据え置いた。上期営業利益が通期計画をすでに上回る異例の形だが、同社は大型案件の早期完了などを説明している。下期の反動を踏まえても通期計画に上振れ余地があるのかを見極めたい。

上期の営業キャッシュフローは93.98億円だった。ただし、入金や契約負債など運転資本の変動による影響が大きく、通期の実力値とはみなしにくい。FY12/25は営業キャッシュフロー20.75億円から有形・無形固定資産の取得額6.61億円を差し引いたFCFが14.14億円だった。利益だけでなく、案件の進捗が最終的にキャッシュへ転換されるかも確認したい。

図表3 FY12/22~FY12/25 業績推移(億円、利益率を除く)

FY12/22 FY12/23 FY12/24 FY12/25
売上高 192.32 220.28 225.94 248.54
営業利益 19.35 16.19 29.93 32.68
営業利益率 10.1% 7.3% 13.2% 13.1%
FCF — — 14.06 14.14

(注)FCFは営業キャッシュフローから有形・無形固定資産の取得による支出を控除してJII計算。(出所)2022年12月期決算短信、2023年12月期決算短信、2025年12月期決算短信、2025年12月期有価証券報告書を基にJII作成・計算。

図表4 FY12/26上期実績と通期会社予想(億円、進捗率は通期予想比)

項目 上期実績 前年同期比 通期予想 進捗率
売上高 167.91 +17.5% 280.00 60.0%
営業利益 49.66 +27.0% 36.00 137.9%
親会社株主利益 36.20 +34.9% 24.50 147.8%

注:同社は大型案件の早期完了と上期への進捗集中を説明している。上期数値の年率換算は適切ではない。(出所)2026年12月期中間決算短信(2026年8月12日)、同決算説明資料(2026年8月28日、4、8頁)を基にJII作成・計算。

今後の見通し

同社は2030年の売上高目標を400億円としている。これはFY12/26予想280億円を42.9%上回り、4年間の年平均成長率に換算すると約9.3%に相当する。FY12/26の事業別見通しはコンサルティング約209億円、オペレーション約49億円、グローバル約22億円で、合計は通期売上高予想と一致する。一方、2030年の事業別売上高や利益率は開示していない。このため、400億円に至るまでの事業構成や利益成長を現時点で具体的に見積もることは難しい。

現行の2024~2026年中期経営計画は、最終年度に受注高265億円、売上高250億円、営業利益25億円、営業利益率10%を掲げていた。現在のFY12/26会社予想は受注高290億円、売上高280億円(前期比12.7%増)、営業利益36億円(同10.2%増)で、いずれも計画を上回る。今後は旧計画の達成可否より、次の成長をどの事業が担うのか、その増収が利益やFCFの増加につながるのかが重要になる。

有力な成長分野の1つが長期運営である。豊橋市の浄水場再整備等事業は約30年、長崎市・長与町の浄水施設共同整備事業は約22年に及ぶ。設計や更新に加えて運転・維持管理まで受託できれば、1案件で担う業務範囲が広がり、受託期間も長くなる。ただし、公表されている事業費は共同企業体全体の数字であり、NJSの売上高、持分、利益を示すものではない。オペレーション事業の収益性を判断するには、NJSに帰属する契約額や利益率、資本負担の開示が必要である。

デジタルや点検技術は、技術者不足への対応という点で注目される。東京都向け固定資産管理システムは契約額約1.5億円で、年間約1,300時間の作業削減を目標とする。こうした案件が他自治体への有償導入や更新につながれば、コンサル事業の生産性向上にも寄与し得る。現段階では継続性や採算を判断できる開示はなく、導入件数とあわせて収益面の進展を確認したい。

図表5 2024~2026年中計、FY12/26会社予想、2030年目標の比較

項目 2024~2026年中計 FY12/26会社予想 2030年目標
受注高 265億円 290億円 未開示
売上高 250億円 280億円 400億円
営業利益 25億円 36億円 未開示
営業利益率 10% 12.9%(計算値) 未開示

注:2030年の事業別売上高・利益率は開示されていない。(出所)中期経営計画2024–2026(10頁)、2026年12月期中間決算短信、同決算説明資料(25頁)を基にJII作成・計算。

財務状況・株主還元

FY12/26上期末の現金及び預金は263.09億円、自己資本比率は78.8%だった。有利子負債は限定的で、その他固定負債0.52億円を負債・リースの代替値として全額控除しても、ネットキャッシュは262.57億円となる。財務余力は大きい。一方、株価評価の観点では現金残高そのものより、余剰資金をどのように活用し、資本効率を高めるかが重要になる。

FY12/25の研究開発費は9.28億円で、同社は2030年に年間15億円、FY12/25比61.6%増まで引き上げる方向を示している。2025年にはCDCアクアサービスを7億円と諸費用で買収し、約5.03億円ののれんを計上、10年間で償却する。運営事業やデジタル技術への投資を増やす方針は明確だが、研究開発や買収の投資効果は十分に開示されていない。今後は投資額の増加だけでなく、利益やFCFへの寄与を確認したい。

FY12/26の年間配当予想は1株110円で、FY12/25の105円から4.8%増配となる。基準終値4,710円に対する予想配当利回りは2.34%。2026年6月末時点で日本ヒュームが342万株、35.76%を保有する最大株主である。配当、研究開発、M&A、自社株買いをどう組み合わせるかは、中期的な資本効率と株主還元を考えるうえで重要な論点となる。

図表6 2026年9月2日時価総額448.54億円に占める保守的ネットキャッシュ

項目 金額 時価総額比
保守的ネットキャッシュ 262.57億円 58.5%
ネットキャッシュ控除後時価総額 185.97億円 41.5%

注:現金及び預金263.09億円から、その他固定負債0.52億円を保守的な負債・リース代替値として控除。(出所)2026年12月期中間決算短信、同半期報告書、J-Quants Standard(2026年9月2日終値)を基にJII作成・計算。

図表7 資本配分に関わる主要数値

項目 直近値 注目点
研究開発費 9.28億円 2030年に年15億円へ増額する投資効果
CDCアクア取得価額 7.00億円+諸費用 買収後の利益・FCFへの寄与
年間配当 110円予想 成長投資と株主還元のバランス
日本ヒューム保有比率 35.76% 今後の資本政策

(出所)2025年12月期有価証券報告書、統合報告書2025(27–28頁)、CDCアクアサービス子会社化(2025年3月25日)、2026年12月期中間決算短信、同半期報告書を基にJII作成・計算。

株価と評価

2024年9月2日から2026年9月2日までのNJS株の騰落率はプラス26.4%で、同期間のTOPIXはプラス50.3%。相対差はマイナス23.8ポイントとなった。期間中の最高終値は2025年9月4日の6,680円、その後の安値は2026年7月17日の4,295円。基準終値4,710円は最高値を29.5%下回り、安値を9.7%上回る。直近60営業日の平均売買代金は約1.43億円であり、機関投資家にとっては流動性も考慮する必要がある。

4,710円に自己株式と株式給付信託保有分を除く952万3,112株を掛けると、時価総額は448.54億円となる。ここから保守的ネットキャッシュ262.57億円を控除したEVは185.97億円。FY12/26会社予想営業利益36億円に対して5.17倍、FY12/25営業利益32.68億円に対して5.69倍である。FY12/25 FCF利回りは3.15%、FY12/26上期BPSを使ったP/Bは約1.46倍、予想配当利回りは2.34%となる。

EV倍率の低さは、時価総額の58.5%に相当するネットキャッシュを差し引いていることの影響が大きい。一方、FY12/25のFCF利回りは3.15%にとどまる。したがって、単にEV倍率が低いというだけでなく、本業のFCF創出力と余剰資金の使途を分けてみる必要がある。国内コンサルの収益が安定し、運営・デジタルへの投資がFCF増加につながれば評価の見直し余地が生じる一方、資金活用の成果が見えなければ、潤沢な手元資金だけで株価評価が切り上がるとは限らない。

図表8 NJSとTOPIXの株価推移(2024年9月2日~2026年9月2日、起点比較)

指標 期間騰落率・水準
NJS +26.4%
TOPIX +50.3%
相対差 −23.8pt
最高終値 6,680円(2025年9月4日)
最高値後安値 4,295円(2026年7月17日)
基準終値 4,710円(2026年9月2日)
60日平均売買代金 約1.43億円 / 日

(出所)J-Quants Standard(2024年9月2日–2026年9月2日)を基にJII作成・計算。

図表9 2026年9月2日終値4,710円時点の評価

計算 数値
4,710円 × 9,523,112株 時価総額448.54億円
現金及び預金 263.09億円
保守的な負債・リース代替値 −0.52億円
保守的ネットキャッシュ 262.57億円
時価総額 − ネットキャッシュ EV 185.97億円
EV / FY12/26会社予想営業利益 5.17倍
EV / FY12/25営業利益 5.69倍
FY12/25 FCF / 時価総額 3.15%
P/B 約1.46倍
予想配当利回り 2.34%

(出所)2026年12月期中間決算短信、同半期報告書、2025年12月期決算短信、J-Quants Standard(2026年9月2日終値)を基にJII作成・計算。

注目点

  1. FY12/26通期利益の着地。 上期営業利益49.66億円に対して通期予想は36億円のまま据え置かれている。下期の案件完了時期や費用発生を確認し、上期の高収益が案件の前倒しによるものか、基礎的な収益力も改善しているのかを見極めたい。
  2. 長期運営案件の採算。 豊橋、長崎・長与について、NJSに帰属する契約額、売上計上時期、利益率、出資・保証、物価連動、回収条件が開示されれば、オペレーション事業の収益性を具体的に評価しやすくなる。
  3. ソフト・点検技術の収益化。 有償導入数、更新率、継続収入、製品別粗利益率、技術者1人当たりの処理量などが分かれば、これらがコンサル業務の補完にとどまるのか、新たな収益源に育つのかを判断しやすい。
  4. 資本配分と海外採算。 研究開発、CDCアクアサービス、今後のM&Aの投資効果に加え、海外業務の赤字縮小と余剰資金の使途を確認したい。国内コンサルと財務余力はNJSの強みだが、今後の評価は運営・デジタルへの投資成果と資本効率の改善に左右される。

参考資料

本稿について

JIIはIRコンサルティング会社であり、投資助言業者ではない。本稿は公開情報に基づき、企業の経済性と開示を投資家が理解するための調査である。特定の有価証券の売買・保有を推奨するものではない。価格と倍率は2026年9月2日終値を基準としており、その後の市場変動を反映しない。

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