ルネサンスは何をしている会社か?
ルネサンスはスポーツクラブを運営する。ジム・プール・テニスコートを一つ屋根の下に収め、子ども向けのスイミング/テニススクールも併設する。そうした地域密着型の総合スポーツクラブを全国展開する国内最大手の一つである。2026年3月期末で231クラブに442,085人の会員を抱える。1979年にインキ・化学品メーカーのDICから分社して生まれ、DICは現在も17.8%を持つ筆頭株主である。
会員は月額会費を払うため、売上は一度きりの販売ではなく、小口の反復収入の積み重ねである。スポーツ施設——フィットネス会員とスイミング/テニススクール——が売上高649億円の84.9%を占める。残りは、同社が育てようとしている3つの新しい事業から来る。テレビショッピングとEコマースで販売するホームフィットネス機器、介護リハビリのデイサービス、自治体や企業の健康保険組合と結ぶ健康増進契約である。退会率は年約3.2%と低い。
この10年、同社は規模を買うことで成長してきた。競合の総合クラブチェーンである東急スポーツオアシスを買収し、2024年3月に完全子会社として連結し、2025年4月に吸収合併した。この取引で2025年3月期の売上高は436億円から637億円へ増え、ルネサンスは売上で業界最大手となった。さらに2025年12月に介護事業の楓の風を、2026年3月にアウトドアフィットネスのBEACH TOWNを買収した。
その規模を、ルネサンスは利益に変えられなかった。2026年3月期の売上高は1.9%増の649億円だが、営業利益は19.6%減の15.7億円、営業利益率は2.4%——コロナ前に稼いでいた8%を下回る。さらに、不採算の都心店を整理するために38施設で計上した30.6億円の減損が、21億円の純損失を生み、自己資本比率を17%へ押し下げた。使用資本利益率(ROCE)は3.9%と、妥当な資本コストを下回る水準である。
2026年5月8日の取引終了後、2025年4月に就任した望月美佐緒社長は、旧来の3カ年計画を撤回し、2026-2030年の中期経営計画を打ち出した。新計画は投資をクラブから、低資本のホームフィットネス・介護・自治体向け健康事業へ振り向け、2030年3月期に営業利益率4.5%、営業利益35億円を掲げる。投資家への問いは、2028年3月期にリース会計の新ルールが自己資本比率を10%近くまで下げる前に、コスト改革が利益率をほぼ倍にできるかである。本レポートはこの問いを、株価がここに至った経緯、投資家が割れている論点、すでに起きた変化、倍率を動かし得る開示、事業の価値という5段階で読み解く。
過去2年、株価を動かしたものは何か?
ルネサンスは総合スポーツクラブ——ジム・プール・テニスコートを一つ屋根の下に置き、子ども向けのスイミング/テニススクールも備える——を運営し、会員は月額会費を払う。この中核の周りで、ホームフィットネス機器を販売し、介護リハビリのセンターを運営し、指定管理者として自治体の公共スポーツ施設を運営する。
01 · 合併に買いが集まったとき 株価は2024年6月の¥960から上昇し、2025年9月25日に直近2年の高値¥1,290を付けた。ルネサンスは2024年3月に東急スポーツオアシスを連結し、2025年4月に合併した。2025年3月期の売上高は637億円へ増え、売上で国内最大手となり、投資家は規模に買いを入れた。市場は夏場を通じて拡大後の同社を回復ストーリーとして扱った。株価は上昇するTOPIXに終始遅れたが、なお上向きだった。
02 · 規模が利益にならなかったとき 9月の高値から株価は8か月下げ続けた。拡大した会社が四半期ごとに増益にならなかったためだ。第1四半期の営業損益は2.8億円の赤字(8月8日引け後)、上期はほぼ均衡、第3四半期の営業利益は前年比46%減(2月12日引け後)だった。オアシスの合併は、会員数の増加より速く減価償却と本社費を積み増し、自己資本比率は21.8%から17.0%へ下がった。株価はこの2年でTOPIXを約40ポイント下回った。
03 · 新経営陣が膿を出したとき 2026年5月8日の引け後、ルネサンスは多くを一度に発表した。2026年3月期決算は38施設で30.6億円の減損と21億円の純損失を計上した。岡本利治会長は代表取締役を退き、望月社長が単独の代表となった。会社は2024-2027年計画を2026-2030年計画に切り替えた。翌営業日の下落はわずか2.0%——高値からすでに約22%下げ、悪材料を概ね織り込んでいた。6月4日に¥973で底を打った。
04 · 現時点 株価は¥1,040へ戻し、6月安値から約7%上にある。この水準で、リース負債148億円込みの企業価値は約419億円である。会社の2027年3月期予想営業利益18億円の約23倍だが、2030年計画の35億円なら約12倍にとどまる。投資家は再建を一部織り込みつつ、数字での確認を待っている。問いは、2028年3月期のリース会計が自己資本比率を10%近くへ下げる前に、コスト改革が利益率を上げるかである。
市場で割れている論点
約44万人の反復収入基盤を持つ会社が、純損失を経てなお2025年の高値を下回って取引される理由を、3つの論点が説明する。いずれも2026-2030年計画が軌道を変えるかにかかり、今後1年以内の開示で検証される。
ルネサンスはコロナ前は営業利益率8%だったが、2026年3月期は2.4%である。経営陣は、不採算クラブの閉鎖、ソフトとAIで本社費を売上比6.1%から5.2%へ削減、値上げで立て直すという。論点は、これらが、資産の重い事業を圧迫する賃料・光熱費・人件費の上昇を上回れるかである。
計画はこの戦略を「スポーツクラブへの依存を超える」と呼ぶ。2030年3月期までに、自治体・企業向け健康増進、介護リハビリ、ホームフィットネスの低資本3事業を伸ばし、クラブ売上はほぼ横ばいに保つ。論点は、これらが採算に見合うか、経営資源を薄めるだけかである。
自己資本比率は17.0%で、計画は2028年3月期からのリース会計の新ルールが多くのリースを貸借対照表に載せ、10%へ押し下げるとする。リース込みのネット負債222億円は、時価総額197億円を上回る。論点は、会社がキャッシュフローで財務を立て直せるか、増資が要るかである。
すでに起きた変化
DICは創業以来17.8%を持ち、売っていない。ルネサンスは1979年にインキメーカーDICの社内ベンチャーとして始まり、上場までDICが全株を保有した。DICの株数はこの10年動いておらず、比率が下がったのは会社が新株を発行したためにすぎない。これは需給の重しではなく安定した錨である——ただしDICは意向を一度も示しておらず、最大の保有は据え置かれた問いのままである。
アドバンテッジパートナーズは2022年11月、35億円の資本・業務提携で参画した。非上場のA種種類株式2,092,000株——「9.9%」の持ち分を取得した。企業価値向上ファンドが名簿にいれば、通常はリターンと資本規律を求める。その優先株の構造は普通株主に優先する。意味するところは、関与する株主が再建を支えていることである。次の確認材料は、計画の進行とともにアドバンテッジの保有と意向が明確になるかである。
三菱地所は2023年3月期までに退出した。1991年からの合弁パートナーだった三菱地所は、従来の持ち分を売り切って上位10位から外れた——すでに移動した浮動株であり、名簿はDIC・保険各社・アドバンテッジにより集中した。
オアシスの合併は2025年4月に会員基盤を広げた。東急スポーツオアシスの吸収はクラブを増やし、より重要なことに、オアシスの販路で獲得した法人・健康保険の月会費会員を加えた。会員数は2026年3月期末に442,085人、1.7%増で終えた。意味するところは、会社全体を支える反復収入基盤が、利益が落ちるなかでも増えたことである。次の確認材料は、進行中のクラブ閉鎖を通じて会員数が保たれるかである。
数年ぶりの値上げが定着した。2025年10月にルネサンスは会費を上げ、平均会費収入は2.2%増の10,193円となり、退会率は3.2%に保たれた。価格に手を付けずコスト上昇を吸収してきた事業にとって、これはその一部を転嫁できる初の証拠だった。次の確認材料は、会員を失わずに2回目の値上げが受け入れられるかである。
安定、そしてその意味:44万人基盤の低い退会率は、損失の年でも株式の物語を壊さなかった理由である——経営陣がコスト側を作り直す間も、現金は入り続ける。
安価な24時間ジムが低価格帯をコモディティ化している。無人・小型のジム——チョコザップとその模倣——が増え、トレッドミルだけを求める会員に対し価格で総合クラブを下回る。ルネサンスはジムフロアを24時間営業に変え、浴場やコワーキングを加えて上位価格帯を守るが、低価格帯は競争にさらされる。これは進行中の脅威であり、検証の途上にある。
コスト上昇が2026年5月の整理を迫った。資産の重い店舗網の賃料・光熱費・人件費が売上より速く上がり、経営陣は38クラブを減損し、賃料の高い都心6店の撤退を決めた——30.6億円の減損である。意味するところは、「全クラブを維持する」前提が崩れたと認めた点にある。次の確認材料は、閉鎖が基盤を縮めずに平均利益率を上げるかである。
その答えは、資本の軽い領域に投じることである。2028年3月期のリース会計を前に、計画は新たな資金をホームフィットネス・介護リハビリ・指定管理へ振り向ける——10〜30年の建物リースなしに伸びる形態である。次の確認材料は、スライド上だけでなく設備投資が実際に移るかである。
開示と資本のレバー
計画が業績に表れるまで、市場は計画に対価を上乗せしない。日付を伴う3つの開示が、今後1年の評価の大半を左右する。
シナリオ
¥1,040(2026年7月9日)、リース負債148億円を含む約419億円の企業価値は、2027年3月期予想営業利益18億円に対しEV/営業利益で約23倍(リース除きで約15倍、EV/EBITDAで約8.5倍)を意味する。これは低迷した利益に対する高い倍率であり、以下のシナリオは倍率ではなく回復にかかる。JIIの試算であり会社計画ではない。
- 27年3月期の営業利益が18億円を下回る。
- 新たな減損か店舗撤退損が出る。
- リース会計で自己資本比率が10%へ下がる。
- 設備投資でネット負債が増え続ける。
この場合でも13円の配当は明文の方針であり、44万人の会員基盤は現金を生み続ける。
- 営業利益が予想の18億円に届く。
- 上期の利益率が2.4%を上抜ける。
- ネット負債が前年比で減る。
- 閉鎖を通じて会員数が保たれる。
- 営業利益率が3.5%超へ目に見えて上がる。
- 非クラブ事業が規模を伴って黒字化する。
- 新株発行なしにネット負債が減る。
- 自己資本の安定後に還元のシグナルが出る。
レンジ上限は2025年9月の高値¥1,290——奪回には計画だけでなく利益率が要る。
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