J|I Japan Investor Interface · Compounder 銘柄レポート
東証スタンダード · 2477 · 6月期 Temairazu, Inc.

手間いらず株式会社

宿泊施設が複数の予約サイトの在庫・料金を一画面で管理できるサブスク型ソフトウェア
終値
¥2,3142026年7月10日
−41% 2024年8月高値から · 2年来安値から+9%
時価総額 / EV
¥139億 / EV ¥75億
ネットキャッシュ ¥64億(時価総額の46%)· 無借金 · 自己株控除ベース
EV / EBIT · 予想
4.6
国内同業 ~18〜39倍 · FY26予想営業益 ¥16.4億
ROCE · 実績
26%
ROE 16% · 現金控除後の事業リターンは三桁
営業利益率 · 全社
73%
FY25 73.6% · FY26予想 69% · 従業員約41名
発行株式 & 浮動株
648万株 · 浮動株 約24%
創業家/68k 約62% · 自己株7.5% · 光通信6.7%
はじめに

手間いらずはどんな会社か

手間いらずの事業は、ほぼ一つの製品で成り立っている。予約サイトコントローラー『TEMAIRAZU』は、ホテルや旅館が楽天トラベル・じゃらん・Booking.comなど複数のOTA(オンライン宿泊予約サイト)と自社サイトに載せる在庫・料金を、一つの画面でまとめて管理するためのソフトウェアである。

顧客は月額のサブスクリプションを支払う。売上の約4分の3は基本料+オプションの月額固定収入で、残りは予約件数に応じて増える変動収入である。解約率は低く、毎年新規施設を獲得するため、固定収入が積み上がる一方、変動収入は訪日インバウンドの増加に連動する。

この事業の強みは、宿泊施設の日々の運営に欠かせないソフトウェアでありながら、提供にほとんど費用がかからないことだ。すべての販売経路をTEMAIRAZUで管理する施設にとって、他社製品への乗り換えは簡単ではない。従業員約41名で工場も持たず、FY2025は売上21.9億円から営業利益16.1億円(営業利益率73%)を稼ぎ、そのほぼ全額が現金として残った。

売上・営業利益は毎期増え、FY2025の営業利益は16.1億円(前期比+8.9%)となった。無借金で、貸借対照表には64億円のネットキャッシュがある。ROEは16%にとどまるが、これは使い道の決まっていない現金を多く抱えているためであり、事業に実際に投じている資本に対する利益率は100%を超える。

それほど収益力の高い会社なのに、株価は2年来安値圏にあり、純現金を差し引いた事業価値は営業利益の約4.6倍にすぎない。しかもネットキャッシュは時価総額の46%に達する。本レポートでは、まず株価が現在の水準に至った経緯を振り返り、評価倍率を左右する3つの論点、評価が変わるきっかけ、最後に事業価値の順に見ていく。

01 · 株価レジーム

過去2年、株価を動かしたものは何か

過去24か月で株価は28%下落した一方、TOPIXは44%上昇した。営業利益は一貫して過去最高を更新しており、業績が悪化したわけではない。株価が下がったのは、EV/営業利益が10倍台前半から約4.6倍へ低下したためだ。以下では、この2年間を4つの局面に分けて振り返る。

2477とTOPIX · 24か月 · 日足+出来高
ピーク ¥3,950 · 2024-08-01 安値 ¥2,120 · 2026-06-03 現在 ¥2,314
手間いらず・日足 60日移動平均 TOPIX リベース (1308.T) 出来高

01 · 高値圏 2024年夏、株価は¥3,500〜3,950で推移し、8月1日に ¥3,950 を付けた。FY2024は売上 +11.9% ・営業利益 +10.9% を達成し、インバウンド需要は過去最高だった。高値圏での事業価値はEV/営業利益で10倍台前半――73%の利益率を持つ事業としてはむしろ控えめ――だが、記録的な観光需要と、現金が還元されるとの期待に支えられていた。

02 · 評価倍率縮小 2024年8月から株価は22か月下落し、2026年6月3日に2年来安値 ¥2,120 を付けた。業績は落ちていない――営業利益は最高益を更新し続けた――ため、下落のほぼすべては評価倍率の低下による。東京市場で小型・成長株が広く売られ、予約連動の変動収入の景気循環性が懸念され、浮動株が約24%と少ないため売りを吸収する買い手も乏しかった。

03 · 株主還元への転換 株価下落のなか、会社は自己株買いを強めた。2025年9月に決議した8億円枠は、2026年5月までに上限の26万株を7.93億円で取得し終え、配当も¥34から¥38へ増えた。それでも株価は支えを欠いたが、現金は積み上がるだけでなく実際に還元され始めた。

04 · 現時点 株価は2026年6月5日(金)に¥2,146で引けた――2年来安値圏、予想EV/営業利益で約4.6倍、ネットキャッシュは時価総額の 46% に相当する。同日の引け後、同社は上限13万株(自己株式を除く発行済株式の約 2.2% )・上限 3億円 の自己株式取得を 決議 し、取得期間は6月8日〜10月30日とした。今後4四半期の注目点は、何が市場により高い倍率を払わせ、株主還元の拡大が評価を変えるのに十分かである。

02 · 投資家論点

投資家の見方が分かれる論点

評価倍率を左右する論点は3つある。高収益なのになぜ評価が低いのか、成長を続けられるのか、そして多額の現金を株主のために活用するのかである。

論点 01 · 評価倍率
利益率73%・無借金の企業がなぜ2年来安値なのか。

EV/営業利益は、64億円のネットキャッシュを除いた事業価値が営業利益の何倍かを示す。現在の4.6倍は、予約サイトコントローラー事業そのものに対する評価である。この低さは事業の成長力を妥当に映しているのか。それとも創業者の支配力と株式の流動性の低さによるものなのかが論点となる。

強気 強気派は、株価が下がりすぎたとみる。営業利益は過去最高で、売上の約75%は毎月継続して入る。解約率も低い。2年来安値での自己株買いは、同じ資金でより多くの株式を取得できるため、1株あたりの価値を高めやすい。比較対象のなかで最も倍率が低い優良企業のHENNGEでも、EV/営業利益は約18倍である。手間いらずの事業を9〜11倍で評価し、現金を加えるだけでも株式価値は現在を大きく上回る。評価倍率が同業に近づき、自己株買いで株数が減っていけば、この見方は成立する。
弱気 慎重派は、割安に見えても株価が見直されない可能性を指摘する。市場で売買される株式は約24%にとどまり、創業者が68k社と個人で約62%を握る。国内の宿泊施設数には限りがあり、その先の成長策も示されていない。割安で流動性が低く、創業家の支配が強い株は、何年も低く評価されたままになり得る。0.3〜0.8億円の自己株買いも、139億円の時価総額に対しては小さすぎる。新たな自己株買いがあってもFY2026決算でEV/営業利益が4〜5倍前後に留まれば、この見方は成立する。
論点 02 · 成長余地
成長は持続的か、それとも国内市場の天井が近いのか。

固定収入は新規施設の獲得と1施設あたり単価の上昇で増え、変動収入は予約件数で増える。いずれも最終的には有限な国内宿泊施設数とインバウンドの循環に依存する。

強気 訪日客数は過去最高で、人手不足に苦しむ宿泊施設にとってサイトコントローラーは欠かせない。手間いらずはKlook、Hopper、Nuitée、ANAのUniversal MaaSなど、連携するOTAやサービスを増やしている。TEMAIRAZU Autoや、国内で初めて連携したIDeaSの収益管理システム『G3』によって、費用をほとんど増やさずに1施設あたりの収入も高めている。1施設あたり単価の上昇とともに固定収入が年8%前後で伸び続ければ、この見方は成立する。
弱気 慎重派は、国内の施設数には限りがあり、規模が大きくなるほど成長率は鈍るとみる。FY2026の9か月営業利益は+6.6%と売上+9.8%を下回り、人材・開発への投資で費用が先に増えている。通期計画は営業利益+1.9%にとどまり、成長余地を広げる海外事業や周辺事業も開示されていない。FY2026の営業利益が+1.9%計画と同水準かそれを下回れば、この見方は成立する。
論点 03 · 現金
遊休現金の活用方針は、資本効率をどう変えるか。

64億円のネットキャッシュは時価総額の約46%に相当する。ほとんど利益を生まないまま残っているため、ROEは16%、ROCEは26%まで押し下げられている。事業にはその大半が必要ない。会社がこの現金をどう使うかで、株価の評価は大きく変わる。

強気 現金はすでに、しかも割安に還元されつつある。1年で2度の自己株買い(7.93億円完了・3億円開始)と¥40への増配は還元姿勢を示し、2年来安値での取得は1株価値を高める。約62%を保有する創業者は1株価値の上昇と最も利害が一致する株主だ。FY2026決算でより大型の、あるいは方針に基づく自己株買いや特別配当が示されれば、この見方は成立する。
弱気 自己株買いは小さすぎる。年3〜8億円は64億円の現金と年約10億円の創出に対して小さく、現金は積み上がり続ける。同社は還元方針も目標現金残高も示さないまま還元しており、約62%支配ゆえ外部からの圧力もない。FY2026時点でネットキャッシュが前年からなお増加していれば、この見方は成立する。
03 · カタリスト

資本効率を高めるためにできること

利益が増えるのを待たずに評価を変え得る材料が3つある。いずれも資本政策または会社開示に関わる。

注目点 01 · 資本政策
64億円の現金はどう活用されるか
現金と還元額(億円)
ネットキャッシュ
64億円
年間創出
~10億円
前回自己株買い
7.9億円
新規自己株買い
3.0億円
自己株買いは現金残高と年間創出に対してなお小さい
ネットキャッシュは時価総額の約46%に相当し無収益のため、これを減らす信頼できる方針は計算上、株式価値を引き上げる。新たな3億円枠は端緒だが64億円の残高に対して小さい。現行の22.5%を上回る配当性向、目標現金残高、フリーキャッシュフローの一定倍率に紐づく自己株買いといった「方針」化は、単発の取得を市場が信頼できる枠組みに変える。確認材料はFY2026決算(2026年8月)での資本政策の説明。
実行負担
取締役会決議1つ
最短の契機
FY2026決算 · 2026年8月
注目点 02 · 開示
導入施設数・1施設あたり売上・解約率の開示
市場が今は見えないもの
固定収入比率
~75%
導入施設数
非開示
1施設あたり売上
非開示
解約率
「低い」数値なし
継続の持続的な部分は主張されるだけで定量化されていない
同社は解約率が低く固定基盤が伸びていると説明するが、施設数・1施設あたり売上・解約率の数値は開示しない。これらがなければ市場は持続的なサブスク成長を景気連動の変動収入と切り分けられず、最も保守的に評価する。施設数と1施設あたり売上を四半期スライド1枚で示すだけで、投資家はリカーリングの実力を裏づけられ、弱気論の根拠である情報割引が縮む。確認材料はFY2026の開示でこれらの指標が出るか。
実行負担
四半期スライド1枚
最短の契機
FY2027 1Q · 2026年11月
注目点 03 · 売上
自動化とレベニューマネジメントで1施設あたり売上は伸びるか
収益構成 · FY2026 9か月
月額固定
~75%
月額変動
~23%
自動化/RMSの追加導入
拡大
インターネットメディア
~0.5%
自動化とレベニューマネジメントは1施設あたり単価をほぼ無コストで引き上げる
最も割安な成長は既存顧客からの追加収益だ。TEMAIRAZU Autoは動的価格設定と日次報告を自動化し、国内初のIDeaS『G3』レベニューマネジメント連携は施設の価格設定を精緻にする——いずれも月額単価を引き上げる理由になる。費用がほぼ固定のため、このアップセルの大半が営業利益に落ちる。インバウンド連動の変動収入と合わせれば、有限な施設基盤でも成長できる。確認材料は固定収入が施設純増を上回って伸びるか。
実行負担
製品投資(費用計上)
最短の契機
各四半期決算
04 · バリュエーション

シナリオ

¥2,314(2026年7月10日)、FY2026会社計画の営業利益16.4億円に対し、約75億円の事業価値は予想EV/営業利益で約4.6倍に相当する。以下の3シナリオは JIIの試算であり会社計画ではない

弱気シナリオ
¥1,800 – ¥2,100
−16% 〜 −2%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~4〜5倍
バリュー・トラップの見方が続く——倍率は4〜5倍に留まり、現金は無収益のまま、創業家支配の小型株に支配権・流動性の割引が残る。
成立の条件
  • FY2026営業利益が+1.9%計画かそれ以下。
  • 自己株買いの増額や還元方針なし、現金はなお増加。
  • 浮動株は約24%のまま、機関投資家需要は薄い。
  • 円高で予約連動の変動収入が鈍化。

この場合でも、時価総額の約46%にあたるネットキャッシュが株価を下支えする。事業の買収を考える企業にとっても、無視できない資産価値である。

基本シナリオ
¥2,500 – ¥3,100
+16% 〜 +44%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~7〜9倍
自己株買いで株数が減り、注目点が1つ——還元方針の明確化か初の事業指標——が実現し、倍率が同業へ部分的に近づく。
成立の条件
  • 固定収入が施設純増と単価上昇で年8%前後の成長を維持。
  • 自己株買いが続き、自己株控除後の株数が減少。
  • 導入施設数か1施設あたり売上が初めて開示。
  • EV/営業利益が高い1桁台へ切り上がる。
強気シナリオ
¥3,400 – ¥3,900
+58% 〜 +82%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~9〜11倍
3つのうち2つの注目点——実効的な還元の枠組みと事業指標の開示——が実現し、市場が事業を質に近い水準で、なお最割安のSaaS同業より低い倍率で評価する。
成立の条件
  • 現金に対する方針ベースの還元か特別配当。
  • 施設数・1施設あたり売上の開示が持続的成長を裏づけ。
  • FY2026営業利益が計画を上回る。
  • 自己株買いの加速でネットキャッシュが減少。

強気レンジも2024年8月の高値¥3,950をわずかに下回る水準に置いた。現金をほぼ額面どおり評価した下記のSOTPでは、1株価値は¥3,300〜4,600となり、さらに上振れる余地もある。

サム・オブ・パーツ · 事業価値
TEMAIRAZU 予約サイトコントローラー。売上の約99.5%
FY2026予想営業利益¥16.4億
FY2026予想売上 · 成長率¥23.65億 · +8.2%
営業利益率~69%(FY25 73.6%)
継続比率月額固定 ~75%
想定EV/営業利益9〜13倍
想定事業EV ~148〜213億円(9〜13倍)——国内同業の~18〜39倍をなお下回る。
サム・オブ・パーツ · 現金+メディア
現金・預金(無借金)+比較.comのレガシー
ネットキャッシュ(FY26 3Q)¥63.9億
有利子負債¥0
ネットキャッシュ/時価総額46%
インターネットメディア(比較.com)~¥0 · 非重要
適用する割引10〜20%
現金は~51〜64億円で計上——創業家が約62%を保有するため適用した現金評価の割引を反映。メディアはゼロ評価。
類似企業倍率 · 実績EV/営業利益
国内のソフト・ネットプラットフォーム(EDINET開示、直近通期営業益・EVは2026年7月10日終値ベース)
カカクコム(2371)~25倍 · 利益率29%
HENNGE(4475)~18倍 · 利益率16%
ラクス(3923)~20倍 · 利益率29%
インフォマート(2492)~39倍 · 利益率15%
手間いらず(2477)~4.6倍 · 利益率73%
手間いらずは最も割安かつ最も高採算。tripla(5136)は顧客預り金で当倍率が無意味なため除外。
株主価値ブリッジ · 1株あたり試算
事業EV+ネットキャッシュ ÷ 自己株控除後株式数
事業EV(FY26予想営業益9〜13倍)¥148〜213億
+ ネットキャッシュ(割引後)¥51〜64億
= 株主価値¥199〜277億
÷ 自己株控除後株式数5,995,073株
= 1株あたり試算¥3,320〜4,620
現値¥2,314比+43% 〜 +100%
中心値は1株約¥3,840。JIIの試算であり予測・目標ではない。自己株買いで株数が減れば1株価値は上がる。
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