J|I Japan Investor Interface · Compounder 銘柄レポート
東証スタンダード · 2477 · 6月期 Temairazu, Inc.
手間いらず株式会社
宿泊施設が複数の予約サイトの在庫・料金を一画面で管理できるサブスク型ソフトウェア
終値
¥2,1462026年6月5日
−46% 2024年8月高値から · 2年来安値
時価総額 / EV
¥139億 / EV ¥75億
ネットキャッシュ ¥64億(時価総額の46%)· 無借金
EV / EBIT · 予想
4.6
国内同業 ~16〜33倍 · FY26予想営業益 ¥16.4億
ROCE · 実績
26%
ROE 16% · 現金控除後の事業リターンは三桁
営業利益率 · 全社
73%
FY25 73.6% · FY26予想 69% · 従業員約41名
発行株式 & 浮動株
648万株 · 浮動株 約24%
創業家/68k 約62% · 自己株7.5% · 光通信6.7%
はじめに

手間いらずは何をしている会社か?

手間いらずの主力は1つの製品に集約される。予約サイトコントローラー『TEMAIRAZU』は、ホテルや旅館が楽天トラベル・じゃらん・Booking.comなど複数のOTA(オンライン宿泊予約サイト)と自社サイトの在庫・料金を、一画面で一元管理するためのソフトウェアである。

顧客は月額のサブスクリプションを支払う。売上の約4分の3は基本料+オプションの月額固定収入で、残りは予約件数に応じて増える変動収入である。解約率は低く、毎年新規施設を獲得するため、固定収入が積み上がる一方、変動収入は訪日インバウンドの増加に連動する。

この事業が重要なのは、基幹業務であり、かつ運営コストがほぼかからない点にある。すべての販売チャネルをTEMAIRAZU経由で管理する施設は簡単には乗り換えない。従業員約41名・工場なしで、FY2025は売上21.9億円から営業利益16.1億円(営業利益率73%)を生み、そのほぼ全額を現金化している。

こうした収益性は静かに積み上がってきた。売上・営業利益は毎期増加し、FY2025の営業利益は16.1億円(前期比+8.9%)、貸借対照表には無借金で64億円のネットキャッシュがある。ROEは16%にとどまるが、これは遊休現金の影響であり、事業そのものが実際に使う資本に対するリターンは三桁に達する。

では、なぜ株価は2年来安値圏、EV/営業利益で約4.6倍、ネットキャッシュが時価総額の46%という水準にあるのか。本レポートはこの問いを、まず株価がここに至った経緯、次に評価倍率を左右する3つの論点、その差を縮め得るカタリスト、最後に各事業の価値という順で読み解く。

01 · 株価レジーム

過去2年、株価を動かしたものは何か?

過去24か月で株価は28%下落し、TOPIXは44%上昇した。これは業績の問題ではない——営業利益は一貫して過去最高を更新した——が、評価倍率がEV/営業利益で10倍台前半から約4.6倍へ低下した。チャートは期間を4つの局面に分け、下のピンが各局面をたどる。

2477 vs TOPIX · 24か月 · 日足+出来高
ピーク ¥3,955 · 2024-08-01 安値 ¥2,101 · 2026-06-03 現在 ¥2,146
手間いらず・日足 60日移動平均 TOPIX リベース (1308.T) 出来高

01 · 高値圏 2024年夏、株価は¥3,500〜3,955で推移し、8月1日に¥3,955を付けた。FY2024は売上+11.9%・営業利益+10.9%を達成し、インバウンド需要は過去最高だった。高値圏での事業価値はEV/営業利益で10倍台前半——73%の利益率を持つ事業としてはむしろ控えめ——だが、記録的な観光需要と、現金が還元されるとの期待に支えられていた。

02 · マルチプル縮小 2024年8月から株価は22か月下落し、2026年6月3日に2年来安値¥2,101を付けた。業績は落ちていない——営業利益は最高益を更新し続けた——ため、下落のほぼすべては評価倍率の低下による。東京市場で小型・成長株が広く売られ、予約連動の変動収入の景気循環性が懸念され、浮動株が約24%と少ないため売りを吸収する買い手も乏しかった。

03 · 株主還元への転換 株価下落のなか、経営陣は自己株買いを強めた。2025年9月に決議した8億円枠は、2026年5月までに上限の26万株を7.93億円で取得し終え、配当も¥34から¥38へ増えた。それでも株価は支えを欠いたが、現金は積み上がるだけでなく実際に還元され始めた。

04 · 現時点 株価は2026年6月5日(金)に¥2,146で引けた——2年来安値圏、予想EV/営業利益で約4.6倍、ネットキャッシュは時価総額の46%に相当する。同日の引け後、同社は上限13万株(自己株式を除く発行済株式の約2.2%)・上限3億円の自己株式取得を決議し、取得期間は6月8日〜10月30日とした。今後4四半期の焦点は、何が市場により高い倍率を払わせ、株主還元の拡大が評価を変えるのに十分かである。

02 · 投資家論点

市場で割れている論点

評価倍率を左右する論点は3つ。いずれも開示資料、値動き、そしてこの事業と市場評価の差に表れている。

論点 01 · 評価倍率
利益率73%・無借金の企業がなぜ2年来安値なのか。

EV/営業利益は事業のみを評価し、64億円のネットキャッシュを除外する。この4.6倍は予約サイトコントローラー事業だけに付く価格であり、論点はこれが事業の実力を映すのか、支配権と流動性ゆえの割引かである。

強気 下げ過ぎだという見方。営業利益は過去最高、売上の約75%はリカーリング、解約率は低く、自己株買いは2年来安値で株式を消却するため1株価値を最も高める。最割安の優良同業HENNGE(EV/営業利益~16倍)並みへ近づくだけでも株式価値は倍以上になり、事業を9〜11倍で評価し現金を加えるだけでも現値を大きく上回る。同業へ向けて倍率が切り上がり、株数が減っていけば、この見方は成立する。
弱気 バリュー・トラップだという見方。浮動株は約24%、創業者が68k社と個人で約62%を支配し、有限な国内宿泊施設市場の先に成長ストーリーがない。割安・低流動・創業家支配の株は何年も割安のまま放置され得る。0.3〜0.8億円の自己株買いは139億円の時価総額を動かすには小さすぎる。新たな自己株買いがあってもFY2026決算でEV/営業利益が4〜5倍前後に留まれば、この見方は成立する。
論点 02 · 成長余地
成長は持続的か、それとも国内市場の天井が近いのか。

固定収入は新規施設の獲得と1施設あたり単価の上昇で増え、変動収入は予約件数で増える。いずれも最終的には有限な国内宿泊施設数とインバウンドの循環に依存する。

強気 インバウンドは過去最高で、人手不足に苦しむ宿泊施設にとってサイトコントローラーは不可欠だ。手間いらずはOTA連携(Klook、Hopper、Nuitée、ANAのUniversal MaaS)を増やし、TEMAIRAZU Autoや国内初のIDeaS『G3』レベニューマネジメント連携で1施設あたり収益をほぼ無コストで引き上げている。1施設あたり単価の上昇とともに固定収入が年8%前後で伸び続ければ、この見方は成立する。
弱気 施設数は有限で、大数の法則が表れ始めている。FY2026の9か月営業利益は+6.6%と売上+9.8%を下回り、人材・開発への投資で費用が先行している。通期計画は営業利益+1.9%にとどまり、成長余地を広げる海外・隣接事業は開示されていない。FY2026の営業利益が+1.9%計画と同水準かそれを下回れば、この見方は成立する。
論点 03 · 現金
創業者は遊休現金を還元するのか、死蔵させるのか。

64億円のネットキャッシュは時価総額の約46%に相当し、ほぼ無収益でROEを16%・ROCEを26%まで押し下げている。事業はその大半を必要としないため、この現金の使途が評価倍率をほぼ決める。

強気 現金はすでに、しかも割安に還元されつつある。1年で2度の自己株買い(7.93億円完了・3億円開始)と¥40への増配は還元姿勢を示し、2年来安値での取得は1株価値を高める。約62%を保有する創業者は1株価値の上昇と最も利害が一致する株主だ。FY2026決算でより大型の、あるいは方針に基づく自己株買いや特別配当が示されれば、この見方は成立する。
弱気 自己株買いは小さすぎる。年0.3〜0.8億円は64億円の現金と年約10億円の創出に対して小さく、現金は積み上がり続ける。同社は還元方針も目標現金残高も示さないまま還元しており、約62%支配ゆえ外部からの圧力もない。FY2026時点でネットキャッシュが前年からなお増加していれば、この見方は成立する。
03 · カタリスト

資本効率のレバー

増益を伴わずに評価倍率を引き上げ得るレバーが3つある。いずれも経営陣の裁量の範囲内にある。

レバー 01 · 資本政策
64億円の現金を活かす——増額自己株買い・還元目標・特別配当
現金と還元額(億円)
ネットキャッシュ
64億円
年間創出
~10億円
前回自己株買い
7.9億円
新規自己株買い
3.0億円
自己株買いは現金残高と年間創出に対してなお小さい
ネットキャッシュは時価総額の約46%に相当し無収益のため、これを減らす信頼できる方針は計算上、株式価値を引き上げる。新たな3億円枠は端緒だが64億円の残高に対して小さい。現行の22.5%を上回る配当性向、目標現金残高、フリーキャッシュフローの一定倍率に紐づく自己株買いといった「方針」化は、単発の取得を市場が信頼できる枠組みに変える。確認材料はFY2026決算(2026年8月)での資本政策の説明。
経営の負担
取締役会決議1つ
最短の契機
FY2026決算 · 2026年8月
レバー 02 · 開示
導入施設数・1施設あたり売上・解約率の開示
市場が今は見えないもの
固定収入比率
~75%
導入施設数
非開示
1施設あたり売上
非開示
解約率
「低い」数値なし
リカーリングの持続的な部分は主張されるだけで定量化されていない
同社は解約率が低く固定基盤が伸びていると説明するが、施設数・1施設あたり売上・解約率の数値は開示しない。これらがなければ市場は持続的なサブスク成長を景気連動の変動収入と切り分けられず、最も保守的に評価する。施設数と1施設あたり売上を四半期スライド1枚で示すだけで、投資家はリカーリングの実力を裏づけられ、弱気論の根拠である情報割引が縮む。確認材料はFY2026の開示でこれらの指標が出るか。
経営の負担
四半期スライド1枚
最短の契機
FY2027 1Q · 2026年11月
レバー 03 · 売上
自動化とレベニューマネジメントで1施設あたり売上を引き上げる
収益構成 · FY2026 9か月
月額固定
~75%
月額変動
~23%
自動化/RMSアップセル
拡大
インターネットメディア
~0.5%
自動化とレベニューマネジメントは1施設あたり単価をほぼ無コストで引き上げる
最も割安な成長は既存顧客からの追加収益だ。TEMAIRAZU Autoは動的価格設定と日次報告を自動化し、国内初のIDeaS『G3』レベニューマネジメント連携は施設の価格設定を精緻にする——いずれも月額単価を引き上げる理由になる。費用がほぼ固定のため、このアップセルの大半が営業利益に落ちる。インバウンド連動の変動収入と合わせれば、有限な施設基盤でも成長できる。確認材料は固定収入が施設純増を上回って伸びるか。
経営の負担
製品投資(費用計上)
最短の契機
各四半期決算
04 · バリュエーション

シナリオ

¥2,146(2026年6月5日)、FY2026会社計画の営業利益16.4億円に対し、約75億円の事業価値は予想EV/営業利益で約4.6倍に相当する。以下の3シナリオはJIIの試算であり会社計画ではない

弱気シナリオ
¥1,800 – ¥2,100
−16% 〜 −2%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~4〜5倍
バリュー・トラップの見方が続く——倍率は4〜5倍に留まり、現金は無収益のまま、創業家支配の小型株に支配権・流動性の割引が残る。
成立の条件
  • FY2026営業利益が+1.9%計画かそれ以下。
  • 自己株買いの増額や還元方針なし、現金はなお増加。
  • 浮動株は約24%のまま、機関投資家需要は薄い。
  • 円高で予約連動の変動収入が鈍化。

ここでも下値はネットキャッシュ(時価総額の約46%)に支えられ、事業会社の買い手が無視できない硬い下限を持つ。

基本シナリオ
¥2,500 – ¥3,100
+16% 〜 +44%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~7〜9倍
自己株買いで株数が減り、レバーが1つ——還元方針の明確化か初の事業指標——が実現し、倍率が同業へ部分的に近づく。
成立の条件
  • 固定収入が施設純増と単価上昇で年8%前後の成長を維持。
  • 自己株買いが続き、自己株控除後の株数が減少。
  • 導入施設数か1施設あたり売上が初めて開示。
  • EV/営業利益が高い1桁台へ切り上がる。
強気シナリオ
¥3,400 – ¥3,900
+58% 〜 +82%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~9〜11倍
3つのうち2つのレバー——実効的な還元の枠組みと事業指標の開示——が実現し、市場が事業を質に近い水準で、なお最割安のSaaS同業より低い倍率で評価する。
成立の条件
  • 現金に対する方針ベースの還元か特別配当。
  • 施設数・1施設あたり売上の開示が持続的成長を裏づけ。
  • FY2026営業利益が計画を上回る。
  • 自己株買いの加速でネットキャッシュが減少。

強気レンジは2024年8月の高値¥3,955の直下に留める。本源的価値はさらに上にあり得る——下のSOTPは現金をほぼ満額で評価すると¥3,300〜4,600を示す。

サム・オブ・パーツ · 事業価値
TEMAIRAZU 予約サイトコントローラー — 売上の約99.5%
FY2026予想営業利益¥16.4億
FY2026予想売上 · 成長率¥23.65億 · +8.2%
営業利益率~69%(FY25 73.6%)
リカーリング比率月額固定 ~75%
想定EV/営業利益9〜13倍
想定事業EV ~148〜213億円(9〜13倍)——国内同業の~16〜33倍をなお下回る。
サム・オブ・パーツ · 現金+メディア
現金・預金(無借金)+比較.comのレガシー
ネットキャッシュ(FY26 3Q)¥63.9億
有利子負債¥0
ネットキャッシュ/時価総額46%
インターネットメディア(比較.com)~¥0 · 非重要
適用する割引10〜20%
現金は~51〜64億円で計上——約62%の創業家支配下にある現金への割引を反映。メディアはゼロ評価。
類似企業倍率 · 実績EV/営業利益
国内のソフト・ネットプラットフォーム(EDINET開示、直近通期営業益・EVは2026年6月9日終値ベース)
カカクコム(2371)~21倍 · 利益率37%
HENNGE(4475)~16倍 · 利益率16%
ラクス(3923)~33倍 · 利益率21%
インフォマート(2492)~27倍 · 利益率15%
手間いらず(2477)~4.6倍 · 利益率73%
手間いらずは最も割安かつ最も高採算。tripla(5136)は顧客預り金で当倍率が無意味なため除外。
株主価値ブリッジ · 1株あたり試算
事業EV+ネットキャッシュ ÷ 自己株控除後株式数
事業EV(FY26予想営業益9〜13倍)¥148〜213億
+ ネットキャッシュ(割引後)¥51〜64億
= 株主価値¥199〜277億
÷ 自己株控除後株式数5,995,073株
= 1株あたり試算¥3,320〜4,620
現値¥2,146比+55% 〜 +115%
中心値は1株約¥3,840。JIIの試算であり予測・目標ではない。自己株買いで株数が減れば1株価値は上がる。
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