ロードスターキャピタル株式会社
ロードスターキャピタルの事業モデル
ロードスターキャピタルは、東京都心のオフィスビルを取得し、物件固有の課題を解消したうえで売却する不動産投資会社である。主な投資対象は、空室率の高さ、管理状態の悪さ、賃料水準の低さ、権利関係の複雑さなどを理由に、一般的な買い手が慎重になりやすい中規模ビルである。同社は不動産鑑定士や宅地建物取引士を社内に抱え、物件価値を自前で査定し、仲介会社から持ち込まれた案件に短期間で購入の可否を回答できる。自己資金と銀行借入を組み合わせて物件を取得し、改修、リーシング、賃料改定を通じて収益力を高めた後に売却する。2025年12月期は、このコーポレートファンディング事業が売上高44,633百万円のうち34,228百万円を占めた。
同社がバリューアップ中、または売却機会を待って保有している物件が、貸借対照表上の販売用不動産である。この中核事業に加え、周辺事業として4つの収益源を持つ。継続保有するビルからの賃料収入は、2025年12月期に3,525百万円だった。HIRAMATSU HOTELSの名を冠したリゾートホテル6施設は、運営を株式会社ひらまつに委託しており、4,261百万円を計上した。自ら物件を探せない機関投資家に代わって東京の不動産へ投資するアセットマネジメント事業は、2026年3月31日時点で1,200億円を超える受託資産残高(AUM)を預かり、1,763百万円を稼いだ。2014年に国内初の不動産特化型クラウドファンディングとして始めたOwnersBookは、個人が1口1万円から出資でき、829百万円である。
2025年12月期の売上高は前期比29.7%増の44,633百万円、営業利益は13,415百万円、営業利益率は30.1%だった。2024年12月期末と2025年12月期末の平均使用資本に対する利益率を示すROCEは13.7%だった。一方、同期間の借入金の加重平均利率は1.93%にとどまった。つまり同社の収益は、物件に投じた資本から得る収益率と、その取得資金の調達コストとの差によって決まる。ただし、この差を維持するには、改修やリーシングを進める間も物件を保有できるだけの資本が必要となる。2026年3月31日時点の販売用不動産は99,122百万円、借入金は76,252百万円、現金は13,276百万円、自己資本比率は26.6%である。
株価は2026年7月22日に2,750円で引けた。簿価ベースの1株当たり純資産は約1,720円であり、表面的なP/Bは1.60倍となる。ただし、この見方だけでは同社の資産価値を過小評価する可能性がある。保有不動産は取得原価を基礎に計上され、保有期間中に時価評価益が貸借対照表へ反映されるわけではない。同社は2025年12月期末時点の含み益を税引前約379億円と開示している。これを税引後で純資産に加味すると、1株当たり純資産は約3,069円となり、株価2,750円を上回る。したがって投資家が見るべき論点は、簿価P/Bの高さではなく、含み益調整後の資産価値に対する割安評価と、その含み益がどのタイミングで実現益に転化するかである。以下では、株価形成の経緯、投資家間で見方が分かれるポイント、株主構成・売却先・競争優位の変化、評価倍率を左右し得る開示、そして事業全体の価値を順に確認する。
過去2年、株価を動かしたものは何か
ロードスターキャピタルは、空室、管理不全、複雑な権利関係などを理由に他の買い手が敬遠しやすい東京都心の中規模オフィスビルを取得し、改修とリーシングを経て売却する。取得価格と売却価格の差額に、保有期間中の賃料収入を加えたものが収益の源泉となる。
01 · 2026年3月までの上昇 同社の売上高は、2025年12月期までの3年間で年率23.6%成長した。利益成長が株価上昇を上回ったため、株価は上昇しながらも利益倍率の面ではむしろ割安化していた。2026年2月13日の引け後、同社は2025年12月期の売上高29.7%増となる44,633百万円と営業利益13,415百万円を発表した。2026年12月期は増収25.8%・営業増益19.1%を予想した。株価はさらに上げ、3月2日に¥3,158を付けた。
02 · 6月までの下落 2026年4月30日の引け後、同社は第1四半期の売上高65.2%増となる18,261百万円と営業利益10.2%増を発表した。翌営業日から下げが始まり、6月4日の¥2,248まで続いた。売上高の伸びに対して利益の伸びが限定的だった背景は、前年同期の比較対象が極めて強かったことにある。2025年12月期第1四半期には、1棟の売却で売上総利益率60.0%を計上していた。一方、2026年12月期第1四半期はより大型の物件を36.6%の売上総利益率で売却した。四半期としては良好だったが、記録的だった前年同期との比較で見劣りした。
03 · 6月の決議 2026年6月12日の引け後、取締役会は 1株につき0.2株の株式の無償割当て を決議した。原資は長年買い戻してきた自己株式で、5月31日時点で発行済株式総数の21.13%にあたる。取締役会は同時に、増えた株式数の上で 期末配当予想を¥98に据え置いた。6月25日には 品川区のオフィスビルの売却 を決議し、金額は2025年12月期売上高の10%を超え、6月30日に引き渡した。株価は6月下旬から7月に戻した。
04 · 現在の位置 2,750円の株価は、時価総額558億円、企業価値1,188億円を意味する。会社予想の営業利益15,976百万円の7.4倍である。会社は第1四半期の後もこの予想を据え置いた。予想配当¥98の利回りは3.56%である。今後の検証材料は2つ残る。8月1日に募集の始まる初のセキュリティトークン・オファリング(STO)と、3月に取得した同社史上最大のビルGINZA PREX Eastの売却である。
投資家の評価が分かれる論点
使用資本に対して13.7%を稼ぐ会社が、会社予想営業利益の7.4倍、含み益調整後純資産の約0.9倍で取引されている。この評価を説明する主要論点は3つであり、いずれも2027年12月期決算までに公表される実績値で検証可能である。
同社のROCEは13.7%であるのに対し、投資資金を賄う借入の金利は1.93%である。同社の投資収益は、この差によって成り立っている。日本銀行は利上げを進めており、同社の借入の多くは変動金利であるため、まず調達コストが上昇する。焦点は、賃料と物件価格の上昇が、調達コストの上昇を上回るかどうかである。
中期経営計画では、販売用不動産を2024年12月期の815億円から2027年12月期までに1,500億円へ増やす。2026年3月末では991億円である。2025年12月期に110億円を積み増したが、残る7四半期では年290億円のペースが必要になる。問われるのは、これから取得する物件からどれだけの収益を得られるかである。
2025年12月、同社はHash DasH Holdingsを買収した。これにより、第一種金融商品取引業の登録とブロックチェーン基盤を取得した。この登録があれば、グループは自社のビルを裏付けとする証券を仲介業者を通さずに販売できる。販売費及び一般管理費は41.0%増を見込む。現時点では、当該プラットフォームを通じた販売実績はまだ確認されていない。
図解で確認すべき2つの論点
ロードスターは横浜のチサンホテルをすでに保有している。これを1人の買主に売るのではなく、ホテルを裏付けとした信託を7,660口に分け、多数の個人投資家に販売する。
つまりロードスターは、保有ビルを借入なしですぐに現金化し、その後も運用者として手数料を得られる。ビルの保有から証券業免許、トークンの発行、資産運用まで、一連の流れを自社で完結できる。通常の不動産会社や証券会社が単独ではできないことだ。トークン保有者の投資対象は賃料収入であり、将来の売却益ではない。
アセットマネジメント事業の手数料は2種類ある。継続的に積み上がるのは一方だけで、昨年の収益を押し上げたのはもう一方だった。
株主構成、売却先、競争優位の変化
すべての株主が、1株につき0.2株を自己株式から受け取った。持分の比率は誰も変わらず、新株も発行されていないため、この割当て自体は価値を1円も動かしていない。1株当たりの数字が16,910,899株から20,293,078株へ置き換わるだけである。価値を動かしたのは、増えた株式数の上で¥98の配当を維持するという別の決定であり、支払う現金は約20%増え、配当性向は18.0%から21.7%へ上がった。実質的な増配である。今後は、自己株式に残る1,150,922株のうち何株を報酬に充て、残りを消却するのかを確認したい。
2012年に同社を創業し、いまも経営している岩野達志氏は、期末時点で20.4%を保有し、売っていない。上位10位の合計は51.8%である。持分を動かしたのは1社だけで、Capital Generation株式会社は、自己株式を除く発行済株式数に対する保有比率を6.64%から4.96%へ引き下げた。保有株のおよそ4分の1を減らしたことになるが、理由は示していない。三井住友DSアセットマネジメントは別に5.03%を保有すると報告したが、同社が実質株主を確認できなかったため、上位10位の表には載っていない。次に確認すべき点:Capital Generationが2026年12月期の株主表に残るか。
2025年12月期の販売先上位3社は、いちご地所株式会社が8,800百万円、合同会社ウェルネス21が7,500百万円、JR西日本不動産開発株式会社が6,380百万円である。3社で売上高の50.8%を占めた。2024年12月期の上位3社はSanshin、Fukuhara、Shimizuで、合わせて48.6%だったが、いずれも2025年12月期の上位には残っていない。各社はビルを1棟、一度だけ購入しており、一般的な意味で継続取引のある顧客ではない。むしろ関係が繰り返されるのは、案件を最初に持ち込む仲介会社との間だが、同社はその社名を一つも開示していない。次の確認点:2期続けて上位に入る買い手が現れるか。
同社は GINZA PREX East の取得を完了した。これまで買ったなかで最大のビルで、中央区築地の角地に建つ2024年竣工、一部内装付きのオフィスビルであり、売主は住友商事のPREXシリーズである。同社の強みは、より小型の物件で培ってきた迅速な価値査定、改修、リーシング、売却の実行力にある。大きなビルは埋まるまでに時間がかかり、出口で買える相手も少ない。今後は、この物件を売却した際の売上総利益率と保有期間に注目したい。
売却したビルの売上総利益率を見れば、同社がいまも十分に安く物件を取得できているかが分かる。この利益率は2024年12月期に35.1%、2025年12月期に31.8%、2026年12月期の第1四半期は同社史上最大の売却で36.6%だった。2025年12月期の第1四半期に記録した60.0%は例外的な1棟によるもので、今期の数字が見劣りするのはそのためだ。2025年12月期の通期平均と比べれば、直近の四半期の方が高い。次に確認すべき点:2026年12月期通期の販売用不動産の売上総利益率が31.8%以上か。
募集は8月1日に始まり8月27日に締め切られる。対象はチサンホテル横浜伊勢佐木、金額は3,830百万円で、運用は8月28日に始まる。1口¥500,000で7,660口を販売する。運用期間はおよそ10年で、年間分配金総額を募集総額で割った想定分配利回りは約4.1%である。ホテルの取得に借入を使っていないため、受け取る賃料を貸し手と分ける必要がない。代替対象となるのは、2014年に始めたクラウドファンディングのOwnersBookである。年間の投資額は2024年12月期に134億円、2027年12月期の目標は200億円である。会社によると、この目標は一度掲げて届かず、今回あらためて掲げたものだ。次の確認点:2回目の募集が続くか。
評価を変え得る開示・資本政策
株主の評価を変え得るのは、同社がまだ開示していない3点である。直近に取得したビルの収益性、残る自己株式の扱い、そしてアセットマネジメント事業で受託資産が増えているのか、一時的な手数料だけが増えているのかだ。
バリュエーション・シナリオ
¥2,750(2026年7月22日)、2026年12月期の会社予想営業利益15,976百万円に対する企業価値1,188億円は、予想ベースのEV/EBITで7.4倍にあたる。以下の3バリュエーション・シナリオは JIIの試算であり会社計画ではない。
- 2027年12月期中に加重平均の借入金利が2.5%を超える。
- 2027年12月期の税引前利益率が25%の下限を下回ったままとなる。
- 販売用不動産が増える一方でROCEが13%を割る。
- GINZA PREX Eastが売上総利益率30%未満で売れる。
¥2,000では、市場は1株当たり純資産¥1,720の1.16倍、含み益を反映した¥3,069に対しては0.65倍を払うことになる。
- 2026年12月期の売上高・営業利益予想が修正なく達成される。
- 販売用不動産の売上総利益率が通期で31.8%近辺を保つ。
- ¥98の配当が増えた株式数の上で支払われる。
- 受託資産残高が1,400億円の出発点へ向けて戻る。
- 2027年12月期の税引前利益が25%以上の利益率で167億円に達する。
- GINZA PREX Eastが売上総利益率36%超で売れる。
- 2027年12月期までに2回目のセキュリティトークン・オファリングが値付けされる。
- 新しい受託で受託資産残高が2,000億円を超える。
¥3,800では、市場は含み益を反映した純資産¥3,069の1.24倍を払う。ビルだけの価値を上回る金額であり、手数料事業とトークン事業がその上に価値を足すという見方に立つことになる。
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