J|I Japan Investor Interface · Compounder 銘柄レポート
東証プライム · 3482 · 12月決算 LOADSTAR CAPITAL
ロードスターキャピタル株式会社
東京都心の低稼働・低収益な中規模オフィスを取得し、収益性を高めて売却する
終値
¥2,7502026年7月22日
−13% 2026年3月高値から · 2026年6月安値から+22%
時価総額 / EV
¥558億 / EV ¥1,188億
ネット負債 ¥630億 · 自己株控除後2,029万株
EV / EBIT · 予想
7.4
26年12月期営業利益予想15,976百万円ベース · 25年12月期実績では8.9倍
ROCE · 直近
13.7%
24年12月期は14.6% · 借入金利は1.93%
P / B · 含み益反映後
0.90倍 · 簿価ベース1.60倍
調整後1株純資産 約¥3,069 · JII試算
発行株式数 · 保有構成
2,029万株 · 上位10位で51.8%
創業社長 20.4% · 自己株式115万株
はじめに

ロードスターキャピタルは何をしている会社か?

ロードスターキャピタルは、東京都心部の中規模オフィスビルを取得し、稼働率や賃料、管理状態、権利関係といった課題を解消したうえで売却する不動産投資会社である。対象は、空室が多い、管理が行き届いていない、賃料が相場を下回る、権利関係が複雑といった理由で、一般的な買い手が慎重になりやすい物件だ。同社は不動産鑑定士や宅地建物取引士を社内に擁し、物件価値を自社で素早く見極め、仲介会社にも迅速に回答できる体制を持つ。取得後は修繕・リーシング・賃料改定を進め、収益性を高めて売却する。2025年12月期は、このコーポレートファンディング事業が連結売上高44,633百万円のうち34,228百万円を占めた。

取得後、改修や売却のタイミングを待つ物件群は、貸借対照表上「販売用不動産」として計上される。その周辺に複数の収益源がある。保有期間中の物件からは賃料収入が発生し、2025年12月期の不動産賃貸売上は3,525百万円だった。HIRAMATSU HOTELSの名を冠したリゾートホテル6施設は、運営を株式会社ひらまつに委託しており、4,261百万円を生んだ。機関投資家向けに東京の不動産投資を代行するアセットマネジメント事業は、2026年3月31日時点で1,200億円超の受託資産残高(AUM)を有し、2025年12月期の売上高は1,763百万円だった。2014年に国内初の不動産特化型クラウドファンディングとして開始したOwnersBookは、個人投資家が1口1万円から出資できるサービスで、同売上高は829百万円だった。

2025年12月期の売上高は前期比29.7%増の44,633百万円、営業利益は13,415百万円、営業利益率は30.1%だった。ROCEは13.7%で、2024年12月期末と2025年12月期末の使用資本を平均して算出した値である。同期間の借入金の加重平均利率は1.93%だった。つまり、物件に投下した資本から13.7%のリターンを得る一方、資金調達コストは1.93%にとどまっている。このスプレッドが同社の収益力の源泉である。ただし、その維持には資本が必要だ。改修やリーシングが完了するまで、同社は物件を自社のバランスシートで保有し続けなければならない。2026年3月31日時点で販売用不動産は99,122百万円、借入金は76,252百万円、現金は13,276百万円、自己資本比率は26.6%である。

株価は2026年7月22日に2,750円で取引を終えた。1株当たり純資産は1,720円で、簿価ベースのPBRは1.60倍である。ただしビルは取得原価で計上され、時価には置き換えられない。これは会計処理上の制約による。監査法人は、同社が保有するビルを、同社がそれをどうするつもりであるかにかかわらず、販売用不動産として棚卸資産に載せることを求めている。棚卸資産として持つビルは時価に評価替えされない。保有しているあいだ、ビルの値上がりは決算書のどこにも現れない。値上がりが数字になるのは、売った時だけである。同社が開示しているのは、ビルの税引後含み益を織り込んだ自己資本比率であり、2026年3月31日時点で39.3%、2025年12月期末で39.1%だった。含み益そのものは四半期決算では公表されないため、JIIはこの比率一つから逆算した。自己資本は34,912百万円、総資産は131,117百万円である。自己資本を総資産の39.3%にするために双方へ加える必要がある金額は、税引後で約274億円になる。これを自己資本に足すと、調整後の1株当たり純資産は約¥3,069である。現在の株価は、含み益を反映した実質純資産に対しておよそ0.9倍の水準にある。株価はどのようにしてこの水準まで来たのか。投資家は何を巡って割れているのか。株主構成はどうなっているのか。売却先は誰なのか。同社の競争優位は何で、どこに変化の兆しがあるのか。どの開示が評価倍率を動かし得るのか。そして事業全体をどう評価すべきなのか。

01 · 株価レジーム

過去2年、株価を動かしたものは何か?

ロードスターキャピタルは、空室率の高さ、管理状態の悪さ、複雑な権利関係などを理由に市場で敬遠されやすい東京都心部の中規模オフィスビルを取得する。修繕やリーシングで収益性を引き上げ、売却益と保有期間中の賃料を収益化するモデルである。

3482 vs TOPIX · 24か月 · 日足+出来高
ピーク ¥3,158 · 2026-03-02 安値 ¥2,248 · 2026-06-04 現在 ¥2,750
ロードスターキャピタル・日足 60日移動平均 TOPIX リベース (1308.T) 出来高

01 · 2026年3月までの上昇 同社は2025年12月期までの3年間、売上高を年23.6%伸ばした。利益成長が株価上昇を上回ったため、株価は上昇しても利益倍率はむしろ切り下がっていた。2026年2月13日の引け後、同社は2025年12月期の売上高29.7%増となる44,633百万円と営業利益13,415百万円を発表した。2026年12月期は増収25.8%・営業増益19.1%を予想した。株価はさらに上げ、3月2日に¥3,158を付けた。

02 · 6月までの下落 2026年4月30日の引け後、同社は第1四半期の売上高65.2%増となる18,261百万円と営業利益10.2%増を発表した。翌営業日から下げが始まり、6月4日の¥2,248まで続いた。売上の伸びに利益が追いつかなかったのには理由がある。前年の同じ四半期、同社はビル1棟を売上総利益率60.0%で売っていた。今回はより大きなビルを36.6%で売った。市場は、良好な四半期を前年の例外的に高採算な四半期と比較していたことになる。

03 · 6月の決議 2026年6月12日の引け後、取締役会は1株につき0.2株の株式の無償割当てを決議した。原資は長年買い戻してきた自己株式で、5月31日時点で発行済株式総数の21.13%にあたる。取締役会は同時に、増えた株式数の上で期末配当予想を¥98に据え置いた。6月25日には品川区のオフィスビルの売却を決議し、金額は2025年12月期売上高の10%を超え、6月30日に引き渡した。株価は6月下旬から7月に戻した。

04 · 現在の位置 2,750円の株価は、株式時価総額558億円、企業価値1,188億円を意味する。会社予想の営業利益15,976百万円の7.4倍である。経営陣は第1四半期の後もこの予想を据え置いた。予想配当¥98の利回りは3.56%である。試されていないものが二つある。8月1日に募集の始まる初のセキュリティトークン・オファリング(STO)と、3月に取得した同社史上最大のビルGINZA PREX Eastの売却である。

02 · 投資家論点

市場で割れている論点

使用資本に対して13.7%のリターンを上げる会社が、会社予想営業利益の7.4倍、含み益反映後純資産の約0.9倍で評価されている。その理由を説明する論点は3つある。いずれも、いまから2027年12月期の決算までの間に同社が公表する数字で検証される。

論点 01 · スプレッド
13.7%のROCEと1.93%の調達金利の差は保たれるか。

同社は使用資本から13.7%を得て、その資本を賄う借入に1.93%を払う。同社の投資採算は、この差に集約される。日本銀行は利上げを進めており、同社の借入の多くは変動金利であるため、まず調達コストが上昇しやすい。論点は、賃料とビルの価格がそれより速く上がるかである。

強気 強気派は、インフレがこれまで同社にとって負担よりも追い風だった点を指摘する。東京のオフィス賃料もビルの価格も上がってきた。同社は借入の一部を固定金利に換える契約を銀行と結んでおり、金利上昇が織り込まれた第1四半期に、この契約の価値は107百万円増えた。同じ四半期の支払利息は340百万円である。強気の見方が成立するのは、加重平均の借入金利が2.5%を超えてもROCEが13%を上回り続ける場合である。
弱気 弱気派は、二つの数字の向きを見る。ROCEは2024年12月期の14.6%から13.7%へすでに下がった。同じ2年で加重平均の借入金利は1.64%から1.93%へ上がった。リターン低下と資金コスト上昇が同時に進めば、スプレッドは縮小する。同社は借入でビルを買い、賃料を期待利回りで割り戻して取得価格を決める買い手に売る。金利が上がれば買い手はより高い利回りを求め、払う額は減る。弱気の見方が説得力を増すのは、膨らんだ保有残高の上で2026年12月期のROCEが13%を割る場合である。
論点 02 · 成長計画
販売用不動産をほぼ倍増させる計画は、価値創造につながるのか。

中期経営計画では、2027年12月期までに販売用不動産を2024年12月期の815億円から1,500億円へ拡大する方針を掲げている。2026年3月末では991億円である。2025年12月期の積み増しは110億円、残り7四半期で年換算約290億円の積み増しが必要になる。焦点は、増やした物件がどれだけの採算を生むかである。

強気 強気派は、残高が大きいほど中身も良くなると考える。保有を続けるビルから受け取る賃料は2025年12月期に20.6%増の3,525百万円となり、経営陣は賃料の利益だけで固定費のすべてを賄えるだけのビルを持つことを目標に掲げている。売らなくても費用を賄える会社は、値段を待てる。計画は売上高を2024年12月期の34,421百万円から2027年12月期の600億円へ引き上げる。強気シナリオを裏付けるのは、賃貸利益だけで固定費を吸収できる状態の実現である。
弱気 弱気派は利益率を見る。計画は2027年12月期の税引前利益率を25〜30%と置くが、2025年12月期は26.2%だった。2026年12月期予想は24.1%と、自社の下限を割る。予想が達成されても、売上高は計画が求める増加分の約85%を消化する一方、税引前利益は約半分である。売上は借入でビルを増やせば伸びる。利益は1棟あたりの採算に左右されるが、その改善はまだ明確ではない。弱気シナリオが現実味を帯びるのは、2027年12月期の税引前利益率が25%を下回ったままの場合である。
論点 03 · ライセンス
Hash DasH買収は新たな基盤投資か、単発案件のための高コストか。

2025年12月、同社はHash DasH Holdingsを買収した。第一種金融商品取引業の登録とブロックチェーン基盤が付いてきた。この登録により、グループは自社のビルを裏付けとする証券を仲介業者を通さずに売れる。販売費及び一般管理費は41.0%増を見込む。ただし、現時点では実績はまだない。

強気 強気派は、同社が不動産と証券ライセンスの双方をグループ内に取り込んだ点を評価する。不動産会社にはビルがあり、証券のライセンスがない。証券会社にはライセンスがあり、ビルがない。同社はビルを出し、商品を組み立て、トークンを売り、資産を管理する。初回の募集は399室のチサンホテル横浜伊勢佐木1棟に対して3,830百万円を集め、その取得に借入は使っていない。この買収がプラットフォーム投資だったと確認できるのは、追加取得ではなく新たな組成力による2回目の募集条件が決まった時である。
弱気 弱気派は、固定費を伴う単発取引にすぎないと見る。横浜のホテルは2016年から信託を通じて保有しており、初回のトークンは既に持つ資産で資金を集める。置き換える対象のクラウドファンディング事業は売上の1.9%にすぎず、グループはのれん約10.6億円と23人の増員を抱えた。既存保有物件のトークン化は資金調達手段の置き換えに近く、それだけでは新たな利益源とは言い切れない。見るべきは、2027年12月期までに第三者のビルがトークン化されるかである。
03 · 変化の兆し

株主構成、ビルの買い手、競争優位はどう変わりつつあるか

株主構成
誰が株主で、構成は動いているか
2026-07-01 · 株式の無償割当て

すべての株主が、1株につき0.2株を自己株式から受け取った。持分の比率は誰も変わらず、新株も発行されていないため、この割当て自体は価値を1円も動かしていない。1株当たりの数字が16,910,899株から20,293,078株へ置き換わるだけである。価値を動かしたのは、増えた株式数の上で¥98の配当を維持するという別の決定であり、支払う現金は約20%増え、配当性向は18.0%から21.7%へ上がった。実質的な増配である。次の確認:なお自己株式に残る1,150,922株のうち、報酬に充てられるのは何株で、残りは消却されるか。

2025-12-31 · 1社が売り、創業者は売らなかった

Capital Generation株式会社は2025年12月期中に、自己株式を除く発行済株式に対する保有比率を6.64%から4.96%へ下げた。持っていた株のおよそ4分の1にあたるが、理由は示していない。2012年に同社を創業し、いまも経営している岩野達志氏は、期末時点で3,429,000株、20.36%を保有し、売っていない。2024年12月期の数字は、同期の有価証券報告書の株主表による。次の確認:Capital Generationが2026年12月期の株主表に残るか。

2025-11-28 · 会社が確認できなかった5%株主

三井住友DSアセットマネジメントは、同日時点で1,078千株、5.03%とする大量保有報告書を提出した。同社は12月31日時点の実質株主を確認できず、上位10位の表にこの運用会社を載せなかったため、公表された株主表はその分だけ機関投資家の保有を少なく見せている。信託銀行3口座が、自己株式を除く発行済株式の約15.8%を持つ。信託銀行は年金基金などに代わって株式を保有するため、その背後にいる名前は開示されない。外国人の保有比率は12.11%、上位10位の合計は51.79%である。次の確認:2026年12月期の有価証券報告書でこの運用会社が表に載るか。

顧客関係
誰がビルを買い、誰が戻ってくるか
2025年12月期 vs 2024年12月期 · 買い手は1社も戻らない

2025年12月期の販売先上位3社は、いちご地所株式会社が8,800百万円、合同会社ウェルネス21が7,500百万円、JR西日本不動産開発株式会社が6,380百万円である。3社で売上高の50.8%を占めた。2024年12月期の上位3社はSanshin、Fukuhara、Shimizuで、合わせて48.6%だった。2024年12月期の名前は1社も2025年12月期に現れない。いずれも通常の意味での顧客ではない。それぞれがビルを1棟、1度だけ買った。売却の後、同社にはどの相手とも続く取引関係がない。繰り返される関係は、案件を最初に持ち込む仲介会社との間にあり、同社はその名前を一つも開示していない。次の確認:2期続けて現れる買い手が出るか。

2026-03-26 · GINZA PREX East

同社はGINZA PREX Eastの取得を完了した。これまで買ったなかで最大のビルで、中央区築地の角地に建つ2024年竣工、一部内装付きのオフィスビルであり、売主は住友商事のPREXシリーズである。同社が自分の得意を身につけたのは、もっと小さなビルでのことだった。価値を素早く見極め、直し、テナントを埋め、売る。大きなビルは埋まるまでに時間がかかり、出口で買える相手も少ない。次の確認:売却した時の売上総利益率と保有期間。

恒常 · 運営を他社に任せたホテル

同社は6施設のHIRAMATSU HOTELSを6つの特別目的会社を通じて保有し、運営には株式会社ひらまつに対価を払っている。ホテルを運営する能力が自社にあるとは言っていないためである。2025年12月期のホテル売上は157.4%増の4,261百万円だが、これは通年と期の一部を比べた数字である。2026年12月期の第1四半期は3.5%減で、条件の揃った初めての比較であり、唯一後退した事業でもある。稼働率と客室単価を決めるのは別の会社で、ビルと借入を抱えているのは同社である。次の確認:中間決算でホテル売上が再び伸びるか。

競争優位・陳腐化リスク
競争優位はまだ効いているか、何が置き換え得るか
2026年12月期1Q · 競争優位が生む利益率

売ったビルの売上総利益率は、同社がいまも十分に安く買えているかどうかを示す。この利益率は2024年12月期に35.1%、2025年12月期に31.8%、2026年12月期の第1四半期は同社史上最大の売却で36.6%だった。2025年12月期の第1四半期に出た60.0%は例外的な1棟から生まれたもので、今期の四半期が見劣りして見える理由はそれだけである。2025年12月期の通期平均と並べれば、直近の四半期の方が良い。次の確認:2026年12月期通期の販売用不動産の売上総利益率が31.8%以上か。

2026-08-01 · 初のセキュリティトークン

募集は8月1日に始まり8月27日に締め切られる。対象はチサンホテル横浜伊勢佐木、金額は3,830百万円で、運用は8月28日に始まる。1口¥500,000で7,660口を売る。期間はおよそ10年、分配金の総額を集めた金額で割った想定の利回りは年約4.1%である。ホテルの取得に借入を使っていないため、受け取る賃料を貸し手と分ける必要がない。置き換える対象は、2014年に始めたクラウドファンディングのOwnersBookである。年間の投資額は2024年12月期に134億円、2027年12月期の目標は200億円である。計画はこの目標を、一度掲げて届かず二度目に掲げたものだと説明している。次の確認:2回目の募集が続くか。

2025年12月期 → 2026年12月期1Q · 受託資産残高が減った

同社は2024年12月期の受託資産残高(AUM)1,400億円から計画を始め、2027年12月期に3,000億円を目指している。この数字は2025年12月期末に1,100億円あまりまで減り、2026年3月31日には新しい受託を得て1,200億円超まで戻した。どちらも各時点で会社自身が示した数字である。それでも手数料収入は2025年12月期に47.9%増えた。同社の手数料は2種類ある。預かった資産に毎年かかる管理報酬と、顧客のためにビルを売買するたびに得る一度きりの報酬である。残高が減るなかで手数料が増えたのだから、効いたのは一度きりの報酬である可能性が高く、それは繰り返さない。次の確認:中間決算時点の受託資産残高。

04 · きっかけ

開示と資本政策の打ち手

外部株主の評価を変え得る未開示情報は3つある。直近取得した大型物件の採算、自己株式の残余分の扱い、そしてアセットマネジメント事業の収益が残高拡大に基づくものなのか、取引手数料に依存しているのかである。

打ち手 01 · 開示
平均しか公表されないなかで、追加の1棟は何を稼いでいるのか
報告期間別・販売した不動産の売上総利益率
2024年12月期 · 通期
35.1%
2025年12月期 · 通期
31.8%
2025年12月期1Q · 1棟
60.0%
2026年12月期1Q · 1棟
36.6%
取得年度別のリターン
なし
どの数字も、その期間にたまたま売れたものを混ぜた平均である。1棟ごとのリターンも、取得年度別のリターンも公表されていない。
計画は販売用不動産を815億円から1,500億円へ増やす。その1円ごとが、ビルをもう1棟買うという判断である。会社の外にいる株主には、いちばん新しく買ったビルがすでに持っているビルより稼いでいるのかどうかが分からない。公表される利益率が、その四半期にたまたま売れたものを混ぜた平均だけだからである。取得した年ごとに実現した売上総利益率と保有期間を並べた表は、経営陣にとって1ページの手間であり、社外の者が、資金に払う1.93%と最新の案件とを突き合わせて判断できるようになる。
経営の負担
決算資料の表1枚
最短の契機
26年12月期2Q決算 · 2026年8月
打ち手 02 · 資本
自己株式に残る1,150,922株はどうなるのか
2026年7月1日の前後で見た自己株式(株)
2026年5月31日時点の保有
4,533,101
2026年7月1日に株主へ割当て
3,382,179
なお保有 · 報酬向け
1,150,922
1株配当 · 25年12月期実績
¥86
1株配当 · 26年12月期予想
¥98
自己株式は2026年5月31日時点で発行済株式総数の21.13%だった。割当ての後は約5.4%であり、¥98の予想配当は20,293,078株に対して支払われる。
残った株式はなお発行済株式総数の5.4%にあたるが、会社が述べたのは、ストックオプションの行使と譲渡制限付株式の付与に充てるということだけで、株数も時期も付いていない。この株式を消却しても、1株当たり利益も1株当たり純資産もROEも、まったく変わらない。日本の会計は自己株式をすでに純資産から控除し、1株当たりの株式数からも除いているからである。消却が閉じるのは、再び市場へ出すという選択肢の方である。足りないのは、報酬にいくら残し、いくらを消却するのかを、期限を伴って示すことである。
経営の負担
取締役会決議のみ、現金は不要
最短の契機
26年12月期決算 · 2027年2月
打ち手 03 · 成長
受託資産残高は増えるのか、手数料だけが働き続けるのか
受託資産残高と2027年12月期目標(億円)
2024年12月期 · 計画の出発点
¥1,400億
2025年12月期末
約¥1,100億
2026年3月31日
¥1,200億超
2027年12月期目標
¥3,000億
手数料収入 · 25年12月期
1,763百万円 · +47.9%
手数料収入 · 26年12月期1Q
292百万円 · +72.0%
受託資産残高は丸1年、計画の出発点である2024年12月期の水準を下回ったままだった。その間に手数料収入は47.9%増えている。1,100億円は2025年12月期末、1,200億円超は2026年3月31日の数字である。
手数料を生むはずの資産が減るなかで、手数料は増えた。これが起こり得るのは、顧客のためにビルを売買するたびに得る一度きりの取引報酬がこの数字を支えた場合だけであり、その報酬は繰り返さない。2027年12月期の目標までの差は約1,800億円で、残りは7四半期である。計画のなかで最も開いた差であり、逆の方向へ動いた唯一の目標でもある。手数料収入を、毎年入る管理報酬と一度きりの取引報酬に分けて示せば、この事業のどちらの半分が積み上がるのかが株主に分かる。
経営の負担
収益の1行を分けるだけ
最短の契機
26年12月期2Q決算 · 2026年8月
05 · バリュエーション

シナリオ

¥2,750(2026年7月22日)、2026年12月期の会社予想営業利益15,976百万円に対する企業価値1,188億円は、予想ベースのEV/EBITで7.4倍にあたる。以下の3シナリオはJIIの試算であり会社計画ではない

弱気シナリオ
¥2,000 – ¥2,300
−27% 〜 −16%
想定倍率 · 26年12月期予想営業利益に対しEV/EBIT ~6.5〜6.9倍
計画達成より先に、金利上昇が保有残高の採算を圧迫する。同社は1,500億円の目標へ向けてビルを買い続け、その間に借入金利は2.5%を超える。ビルの買い手はより高い利回りを求めて払う額を下げ、税引前利益率は会社自身の下限である25%を割り込む。大きなビルほど買い手は減り、株価は簿価ベースの純資産まで戻る。
成立の条件
  • 2027年12月期中に加重平均の借入金利が2.5%を超える。
  • 2027年12月期の税引前利益率が25%の下限を下回ったままとなる。
  • 販売用不動産が増える一方でROCEが13%を割る。
  • GINZA PREX Eastが売上総利益率30%未満で売れる。

¥2,000では、市場は1株当たり純資産¥1,720の1.16倍、含み益を反映した¥3,069に対しては0.65倍を払うことになる。

基本シナリオ
¥2,750 – ¥3,100
0% 〜 +13%
想定倍率 · 26年12月期予想営業利益に対しEV/EBIT ~7.4〜7.9倍
会社予想を達成し、市場は現在の評価倍率を維持する。売上高は56,150百万円、営業利益は15,976百万円に届き、税引前利益率は24%近辺に着地する。第1四半期には年間売上高の32.5%が入っており、均した進み方を上回っている。投資家は引き続き、含み益を反映した純資産のおよそ1倍で株式を評価する。
成立の条件
  • 2026年12月期の売上高・営業利益予想が修正なく達成される。
  • 販売用不動産の売上総利益率が通期で31.8%近辺を保つ。
  • ¥98の配当が増えた株式数の上で支払われる。
  • 受託資産残高が1,400億円の出発点へ向けて戻る。
強気シナリオ
¥3,400 – ¥3,800
+24% 〜 +38%
想定倍率 · 26年12月期予想営業利益に対しEV/EBIT ~8.3〜8.8倍
2027年12月期計画を達成し、既存保有物件に依存しないトークン化案件を組成する。売上高600億円、税引前利益167億円という2027年12月期の目標を達成し、利益率のレンジを保ち、すでに保有しているのではないビルを対象とする2回目のセキュリティトークン・オファリングの条件が決まる。
成立の条件
  • 2027年12月期の税引前利益が25%以上の利益率で167億円に達する。
  • GINZA PREX Eastが売上総利益率36%超で売れる。
  • 2027年12月期までに2回目のセキュリティトークン・オファリングが値付けされる。
  • 新しい受託で受託資産残高が2,000億円を超える。

¥3,800では、市場は含み益を反映した純資産¥3,069の1.24倍を払う。ビルだけの価値を上回る金額であり、手数料事業とトークン事業がその上に価値を足すという見方に立つことになる。

サム・オブ・パーツ · 不動産の稼ぎ
会社予想の営業利益だけで見た事業の価値
26年12月期営業利益予想15,976百万円
26年12月期売上高予想 · 成長率56,150百万円 · +25.8%
営業利益率30.1%実績 · 28.5%予想
販売用不動産(2026年3月31日)99,122百万円
想定EV / EBIT7〜9倍
想定事業EV ~1,118〜1,438億円。下限はサンフロンティア不動産が付いている水準、上限は利益率のレンジが保たれる前提である。
サム・オブ・パーツ · 資産の検算
開示された比率一つから逆算した物件含み益
自己資本(2026年3月31日)34,912百万円
総資産131,117百万円
開示された含み益反映後の自己資本比率39.3%
= 逆算した税引後の含み益約274億円
= 調整後1株当たり純資産約¥3,069
含み益そのものは年1回開示され、2025年12月期は税引前で379億円、2024年12月期は340億円だった。上の274億円は、同じ含み益の税引後である。
サム・オブ・パーツ · 有利子負債と第三者の資金
株主の前に立つもの
現金及び預金13,276百万円
借入金(短期・長期)76,252百万円
= ネット負債(2026年3月31日)62,976百万円
匿名組合預り金12,514百万円
自己資本比率 · 目標レンジ26.6% · 25〜30%
匿名組合預り金は、投資ビークルの内側にある第三者の資金である。これを加えると企業価値は1,313億円、倍率は8.2倍になる。
類似企業倍率 · 予想EV / EBIT
国内上場の不動産自己勘定投資、安い順
ロードスターキャピタル(3482)~7.4倍
サンフロンティア不動産(8934)~7.5倍
トーセイ(8923)~12.3倍
JINUSHI(3252)~12.5倍
スター・マイカ・ホールディングス(2975)~13.9倍
いちご(2337)~19.7倍
2026年7月22日時点。各社それぞれの営業利益と直近終値による。サンフロンティア不動産は3月、トーセイとスター・マイカは11月、いちごは2月が決算期であり、いずれも同社の12月決算とは期がそろっていない。
類似企業 · ROCEとその背後の事業
比較が妥当な理由と、そうでない点
ロードスターキャピタル(3482)13.7% · 東京のオフィス
サンフロンティア不動産(8934)11.9% · 同じ循環、借入は少ない
トーセイ(8923)8.8% · 資産の幅が広くホテルも
スター・マイカHD(2975)7.7% · 賃借人付きマンション
JINUSHI(3252)7.0% · 土地のみ、建物を持たない
いちご(2337)5.4% · REITスポンサー、太陽光
ROCEは各社の営業利益を、平均した使用資本で割った数字である。JINUSHIは土地を買い、改修はしないため、修繕による利ざやは生まれない。
株主価値ブリッジ · 1株あたり試算
事業EV−ネット負債 ÷ 自己株控除後株式数
事業EV(26年12月期予想営業利益7〜9倍)1,118〜1,438億円
− ネット負債630億円
= 株主価値489〜808億円
÷ 自己株控除後株式数(割当て後)20,293,078株
= 1株あたり試算¥2,408〜3,982
現値¥2,750比−12% 〜 +45%
調整後1株当たり純資産¥3,069は、¥2,408〜3,982のレンジのなか、中心よりやや上に位置する。収益力から見た評価と資産価値から見た評価は、おおむね近いレンジに収れんしている。
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