東証プライム · 4194 · 7月期 株式会社ビジョナル

Visional, Inc.

人材・採用支援 · HCM SaaS
直近終値
¥7,3372026年5月12日
−40% 25年8月の高値から · +16% 2月の安値から
時価総額 / EV
¥2,940億 / EV ¥2,290億
ネットキャッシュ ¥700億(時価総額の24%)
EV / EBIT · 翌12ヶ月
9.8
3年中央値 ~13倍 / 同業中央値 ~12倍
ROCE · TTM
~35%
FY7/22 27% → FY7/24 35% · 3年平均 32%
営業利益率 · 連結
29% · 連結 / 33% HR事業
セグメント利益率は業界トップ水準
発行株数 · 浮動株
4,020万株 · 浮動株比率 64%
1日平均売買代金 ¥23億
01 · 株価動向

この2年間、株価を動かしてきたものは何か

同じ期間にTOPIXが+49%となる一方、ビジョナルは−7%。市場全体や人材関連株の動きだけでは説明しにくい下落です。何が見直され、どこに評価差が残っているのかを整理します。

4194 vs TOPIX · 24ヶ月 · 日次ローソク足 + 出来高
高値 ¥12,310 · 2025-08-21 安値 ¥6,347 · 2026-02-24 直近 ¥7,337
ビジョナル · 日次ローソク足 60日移動平均 TOPIX 連動 ETF(1308.T、基準合わせ) 出来高

A · 2025年4月〜8月 · +67% この上昇は、単一の決算に対する反応というより、会社の見方が変わった局面でした。2025年6月発表のFY7/25第3四半期では、BizReachが前年同期比+19%、セグメント営業利益率42.7%で成長を続ける一方、3年間赤字だったHRMOSが年度累計で黒字化し、ARRは89.5億円に達しました。既存事業が高収益を維持し、次の成長事業も黒字化に近づいたことで、投資家は「採用支援の単一事業」ではなく、複数の収益源を持つ人材事業群として見始めました。8月の高値12,310円は、翌12ヶ月EV/EBITで約14倍を織り込む水準で、ビジョナルが継続的に維持してきたバリュエーション水準を上回っていました。

B · 2025年8月〜2026年2月 · −48% その後の下落は、決算が大きく外れたからではありません。9月発表のFY7/25通期決算は堅調で、FY7/26の会社計画も増収増益でした。問題は、増益幅よりも投資負担の見え方でした。社内版BizReach、Thinkings/sonar ATSの統合、Incubation事業への再投資が前倒しされ、売上成長ほどには営業利益が伸びない計画になったためです。12月のFY7/26第1四半期では、利益率拡大を期待していた株価に対し、開示はむしろ利益率の低下を示しました。そこからバリュエーションの切り下がりが進みました。一つは、HRMOSの黒字化が既存事業の成長によるものなのか、sonar ATSの連結効果によるものなのか、市場が切り分けられなかったこと。もう一つは、金利上昇観測を背景に国内企業の採用意欲が慎重化し、BizReachの景気感応度が意識されたことです。

個別要因か、市場要因か 重要なのは、この下落が市場全体の動きだけでは説明できないことです。同じ24ヶ月でビジョナルは−7%、TOPIXは+49%。市場対比では56ポイントの差があります。単に景気循環や人材関連株の弱さで片付けるには大きすぎます。見直されたのは、成長投資と資本効率の関係が十分に読み取れない会社に対して、投資家が許容するバリュエーションでした。

C · 2026年3月 · 底値から+16% 3月17日のFY7/26第2四半期決算で、最悪ケースへの懸念はいったん後退しました。第2四半期累計売上は466億円(前年同期比+26.2%)、HR事業の営業利益率は33%を維持し、HRMOSは累計・四半期ともに黒字でした。ARRは89.5億円、通期会社計画も据え置かれました。株価は6,347円の安値から+16%戻しましたが、バリュエーションはまだ戻っていません。直近7,337円から2025年8月高値までの差は、業績そのものよりも開示の問題です。HRMOSの既存事業ベースの収益力を、市場がM&A連結効果と切り分けて確認できるまで、EV/EBITは8倍前後にとどまり、14倍近辺には戻りにくいと考えられます。

02 · 論点

市場が確認したい3点

足元の株価、会社の開示、IR説明会のQ&Aから浮かぶ論点は3つです。いずれも、ビジョナルにどの程度のバリュエーションを付けるべきかに直結します。

論点 01 · 利益の質
HRMOSの黒字化は、既存事業の成長によるものか、sonar ATSの連結効果によるものか。
強気 強気側は、ARR89.5億円、低い解約率、有料顧客9,974社、費用を全配賦しても累計で黒字という点を評価します。確認したいのは、第3四半期の既存事業ベースARR成長率が前年同期比+25%以上かどうかです。
弱気 弱気側は、第2四半期からsonar ATSが3ヶ月分連結された一方、既存事業ベースのARRが開示されていない点を懸念します。第3四半期の既存事業ベースARR成長率が前年同期比+12%以下であれば、連結効果による見かけ上の押し上げが大きかったことになります。
論点 02 · 投資ペース
今期の投資負担は一時的なものか、それとも今後も続く前提なのか。
強気 強気側は、複数の投資を自己資金で進めながら売上が前年同期比+26.2%で伸び、FY7/26の減価償却費も29億円にとどまる点を評価します。確認したいのは、FY7/26の連結営業利益率が26%以上で着地するかどうかです。
弱気 弱気側は、Incubationや社内版BizReachへの投資について、回収基準や投資判断のハードルが明確に示されていない点を問題にします。FY7/26の連結営業利益率が22%以下に下方修正されれば、利益率の重しが一時的ではないとの見方が強まります。
論点 03 · 採用市況への感応度
BizReachの成長は、どこまで構造的な強さで、どこからが採用市況の追い風なのか。
強気 強気側は、直接採用企業41,800社超、稼働ヘッドハンター9,700人超、16年分のデータ蓄積によるネットワーク効果を評価します。確認したいのは、国内採用が弱い局面でもBizReach売上が前年同期比+15%以上を維持できるかです。
弱気 弱気側は、会社自身が有価証券報告書で採用需要の変動を主要リスクとして挙げている点を重視します。日本のPMIが47程度まで低下する局面でBizReachの成長率が前年同期比+8%以下に落ちるなら、市況感応度の高さが意識されます。
03 · 評価改善

IRと資本政策でできる3つの打ち手

利益成長を待たなくても、市場の理解が進めばバリュエーションが変わり得る点はあります。ビジョナルの場合、打ち手は主に3つです。

打ち手 01 · 開示
HRMOS ARRの既存事業成長と連結効果の内訳
ARR構成の見えにくさ(億円)
開示ARR
¥89.5
既存事業ベース推計
~¥70.0
sonar ATS 寄与
~¥19.5
この内訳が分かれば、HRMOSのバリュエーションの見え方は大きく変わる
バリュエーションを押し下げた大きな要因は、この内訳が見えないことです。開示ARRを既存事業の成長分とsonar ATSの連結効果に分ければ、HRMOSが自力で伸びているのか、M&Aによる押し上げが大きいのかを投資家が判断できます。どちらの結果であっても、不明確さに対する割引は小さくなります。
経営側のコスト
脚注ひとつ
最短の実行時期
Q3決算 · 2026年6月
打ち手 02 · 開示
社内版BizReachの導入・本稼働指標
試験導入から本稼働まで(イメージ)
1年目の試験導入
未開示
本稼働への移行
未開示
稼働までの期間
~12ヶ月
売上化する前に投資が先行する
大企業向けの社内版BizReachは、試験導入から本稼働までおよそ12ヶ月を要します。四半期ごとに試験導入件数、本稼働への移行率、既存顧客への導入率を示せば、先行投資として見えにくかった取り組みが、投資家にとって追跡可能な先行指標に変わります。
経営側のコスト
KPI表
最短の実行時期
Q4決算 · 2026年9月
打ち手 03 · 資本政策
約700億円のネットキャッシュと株主還元方針
ネットキャッシュの構成(億円)
現預金
¥699
有利子負債
¥3
ネットキャッシュ / 時価総額
24%
自社株買い・配当なし、方針も未開示
ネットキャッシュは時価総額の24%に達していますが、株主還元方針は明示されていません。たとえば2年間で100億円規模の自社株買い枠や、一定の現金水準を超えた分を還元に回す方針が示されれば、EVと時価総額のギャップが縮まります。同時に、Incubation投資にも明確な投資規律を置いているというメッセージになります。
経営側のコスト
取締役会決議
最短の実行時期
FY7/26通期決算 · 2026年9月
04 · バリュエーション

向こう4四半期の見方

今後4四半期について、弱気・中立・強気の3ケースを置きます。いずれも予想ではなく、業績と開示の組み合わせで株価レンジがどう変わるかを整理するための分析上の幅です。

弱気ケース
¥6,000 – ¥7,000
−18% 〜 −5%
想定マルチプル · EV/EBIT 約7–8倍
不明確さへの割引が残るケースです。ARRが合算ベースのまま開示され、採用市況への感応度が意識され、株主還元方針も示されない場合を想定します。
これが起こる条件
  • 第3四半期のHRMOS既存事業ベースARR成長率が、連結効果を除いて前年同期比+12%以下にとどまる。
  • Incubation投資の負担増を理由に、FY7/26会社計画が連結営業利益率22%以下へ下方修正される。
  • BizReachの売上成長率が2四半期連続で前年同期比+10%以下となる。
  • 第4四半期または通期決算時点でも、自社株買い等の資本政策が示されない。
中立ケース
¥8,500 – ¥10,500
+16% 〜 +43%
想定マルチプル · EV/EBIT 約10–12倍
3つの打ち手のうち1〜2つが前進するケースです。既存事業ベースのARRによってHRMOSの成長が確認され、社内版BizReachの導入指標も一部開示され始める場合を想定します。
これが起こる条件
  • 第3四半期決算で、HRMOSの既存事業ベースARR成長率が前年同期比+18〜25%程度と示される。
  • 複数の成長投資を継続しつつ、FY7/26の連結営業利益率が24〜26%で着地する。
  • 通期までに、社内版BizReachの導入・本稼働に関するKPIが少なくとも1四半期分開示される。
  • 通期決算の資本配分方針で、ネットキャッシュの水準や使い道に言及がある。
強気ケース
¥11,500 – ¥12,500
+57% 〜 +70%
想定マルチプル · EV/EBIT 約12–13倍
3つの打ち手がすべて前進し、バリュエーションが同業の中位水準に近づくケースです。2025年8月高値の水準が再び視野に入ります。
これが起こる条件
  • HRMOSの既存事業ベースARR成長率が前年同期比+25%以上で開示され、sonar ATSの連結効果も分離される。
  • FY7/26の連結営業利益率が26%以上で着地し、社内版BizReachのKPIも併せて開示される。
  • 2年間で100億円以上の自社株買い枠、または一定の基準に基づく株主還元方針が示される。
  • 国内採用が弱い局面でも、BizReach売上が前年同期比+15%以上を維持する。
事業別評価 · BIZREACH
採用支援事業 · 高収益フェーズ
第2四半期累計売上(年換算)770億円
セグメント営業利益率42.7%
想定EBIT約330億円
同業マルチプル(6098, 2379)EV/EBIT 11–18倍
中位想定EV: 約4,300億円(EV/EBIT 13倍)
事業別評価 · HRMOS + INCUBATION
HCM SaaS · 黒字化初期
HRMOS ARR(開示ベース)89.5億円
Incubation 第2四半期累計売上25億円
同業マルチプル(4435, 4478)EV/Sales 6–10倍
Incubation評価簿価
中位想定EV: 約750億円(EV/Sales 8倍)
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