J|I Japan Investor Interface · Compounder 銘柄レポート
東証グロース · 7378 · 10月決算 ASIRO Inc.
株式会社アシロ
弁護士費用を払って探される「ベンナビ」の弁護士紹介サイト群を運営し、弁護士から月額の掲載料を得る事業会社
終値
¥1,4492026年6月9日
2025年9月のピーク¥2,379比 39%下
時価総額 · EV
約103億円 / EV 約88億円
純現金 約15億円 · 有価証券なし · 創業者26%+AVI 35%
EV · 営業利益(予想)
5.8
FY26予想営業益 15億円(+5.7%)· FY25基準で約6.2倍
使用資本利益率(ROCE)· 直近
~42%
ROEは37.8%(FY25)· 資本が軽い
営業利益率 · 連結
21.4% · FY26予
メディア事業は32.6% · 第1四半期は17.0%まで低下
発行済株式数 · 流通比率
708万株 自己株控除後 · 発行738万株
創業者26% · AVI 35%(アクティビスト)· 薄い流通株
はじめに

アシロとは何か

アシロは、法律情報サイト上の広告を売る。中核商品は「ベンナビ」——離婚・交通事故・相続・労働・刑事・債権回収・債務整理・ITの8分野ごとに一つずつ設けたサイト群で、法律問題を抱える人が、その分野を扱う弁護士を見つけられる。閲覧は無料である。弁護士は、保有する広告枠ごとに固定の月額料金をアシロへ払うため、収益は枠数の増加とともに増え、毎月更新される。アシロはほかに、問い合わせ件数に応じて課金する「派生」メディア(転職サイトと探偵・人探しサイト)、弁護士・会計士を成功報酬で紹介する人材紹介、そして小規模な保険事業を運営する。

法律サイト群がこの会社の核である。月額料金が積み上がり、事業用資産をほとんど要さず、グループの利益を担う。FY2025のメディア事業の営業利益率は32.6%だった。枠が更新されるため、アシロが弁護士を増やし、枠単価を引き上げ続ける限り、事業は静かに複利で育つ。利益を最も動かすのは二つ——サイトへの集客と新規広告主の獲得にいくら使うか、そして赤字の保険事業と新たなAIリーガルチェックという新しい賭けが、どれだけ早く収益に変わるか、である。

FY2025(2025年10月期)は飛躍の年となった。売上収益は41.6%増の66.5億円、営業利益は3倍超の14.2億円・利益率21.4%に達した。投資先行のFY2023に利益率が1.7%まで落ちた後の反転である。当期純利益は10.2億円、ROEは37.8%に達し、資本をほとんど使わないため使用資本利益率(ROCE)はさらに高い。アシロは純現金約15億円を持ち投資有価証券はなく、FY2022に配当を始めて以来、毎年増配している。

2026年に株価を作り直す出来事が二つあった。第1に、英国のアクティビスト投資家アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)が35%の株式を取得し——創業社長・中山博登氏の26%を上回った——以後、経営陣は配当方針を利益の30%から40%超へ引き上げ、中間配当を新設し、5億円の自己株式取得を始めた。第2に、アシロはFY2026を売上+5%・小幅減益の「準備の年」として、成長再開前の助走と位置づけ、第1四半期の営業利益は30%減った。中心の問いはこうだ——アシロは予想営業利益の約5.8倍で取引される、1年だけ休む積み上げ型の法律メディアか、それとも外国アクティビストが3分の1の株式を握るなか、成長が本当に鈍る会社か。

本レポートはこの問いを、まず株価がここに至った経緯、次に市場で割れている論点、その差を縮め得るカタリスト、最後に事業の各部の価値という順で読み解く。

01 · 株価レジーム

過去2年間、株価を動かしてきた要因は何か

アシロの収益の大半は、弁護士が広告枠ごとに固定の月額料金を払う法律情報サイト群「ベンナビ」から生まれる。法律問題を抱える人は無料で使い、弁護士が探されるために払う。枠は毎月更新され資本をほとんど要さないため、利益は広告主の純増と集客費用に左右される。

7378 vs TOPIX · 24か月 · 日足ローソク足+出来高
ピーク ¥2,379 · 2025-09-09 大底 ¥570 · 2024-08-05 現在 ¥1,449
アシロ · 日足ローソク足 60日移動平均 TOPIX(指数化・1308.T) 出来高

01 · 2024年の底 株価は2024年8月5日、その月の全面安のなか¥570で底入れした。その後は業績改善とともに回復し、2024年12月13日のFY2024決算で売上47%増・営業利益の反転が示されると急騰した。2024年末までに株価は約¥1,610へ達した。投資家は、始まったばかりの回復に対価を払っていた。

02 · 2025年の飛躍と9月の急落 2025年を通じて四半期決算は前回を上回り続け、株価は2025年9月9日に2年来高値¥2,379まで上昇した。その数日後の9月12日、会社は業績予想と配当をともに引き上げる第3四半期決算を開示したが——株価は急落した。強い上昇の後では、含意される第4四半期が弱く映ったためである。10月までに株価は約¥1,241となった。

03 · アクティビストと株主還元による再評価 FY2025は営業利益262%増・ROE 37.8%で締まり、2025年12月11日に5億円の自己株式取得とともに開示された。同じ頃、AVIが筆頭株主と開示で判明し、2026年3月にアシロは配当方針と配当を引き上げた。株価は2026年2月までに約¥2,114へ戻り、回復と新たな株主還元を織り込んだ。

04 · 「準備の年」によるリセット アシロは2026年6月9日に¥1,449で引け、9月のピークから約39%下となった。経営陣はFY2027の加速へ立て直す年として、FY2026を売上+5%・小幅減益と見込み、第1四半期の営業利益は前年比30%減った。修正後予想で、現金控除後の事業は予想EV/営業利益約5.8倍で取引される。今後1年の焦点は、計画された休止か実際の減速かである。

02 · 論点

市場で交わされる論点

高成長・現金創出・創業者経営の法律メディア企業が、同業のなかでも低い倍率で取引される理由を説明する論点は3つ。FY2026の減速は意図した休止か実際の失速か、創業者を上回る外国アクティビストは少数株主を助けるか脅かすか、低い倍率は割安か警告か、にまたがる。

論点 01 · 休止 vs 減速
FY2026の横ばい利益は準備の年か、減速の始まりか。

アシロは法律メディアの収益を月額掲載料として計上する。だがFY2026は高単価商品の整理と、保険・AIへの先行投資を選び、いまの利益を下げた。論点は、これがFY2027の成長を仕込む計画された休止か、実需の減退かである。

強気 強気は意図した休止とみる。アシロは高単価の法律メディア商品の整理を選んだため、投資のさなかでも中核セグメントの営業利益は横ばいを保ち、第1四半期の売上はなお8.9%、派生メディアは31%伸びた。経営陣はFY2025の3倍となる売上200億円のFY2030目標を掲げ、高成長はFY2027に再開するとする。法律サイトは広告主を積み増し、掲載顧客数は1,204社である。見方が成立するのは、2026年後半に示されるFY2027計画が二桁増収へ回帰する場合である。
弱気 弱気は成長の失速とみる。5年平均で40%超の増収を続けた後、アシロはFY2026を売上わずか+5.3%・純利益4%減と見込み、第1四半期の営業利益は30%減った。中核法律サイトの掲載枠数はこの1年ほぼ動かず(3,332→3,295)、保険事業は赤字を続ける。数字を作るために採算商品を整理した会社は、掲げる目標よりも天井に近いのかもしれない。見方が成立するのは、FY2026の売上が控えめな70億円計画すら下回る場合である。
論点 02 · アクティビスト
AVIの35%保有は価値を解放するか、支配の重しを生むか。

英国ファンドのアセット・バリュー・インベスターズはアシロの35%を保有し、創業社長・中山氏の26%を上回る。届出は「重要提案行為等」を行い得るとする。大株主は還元拡大を促し得るが、小型企業の3分の1を持つ者はいずれ売らねばならない。論点はどちらの効果が勝るかである。

強気 強気は既に出た成果を指す。AVIの取得以降、アシロは配当方針を利益の30%から40%超へ引き上げ、中間配当を新設し、年間配当を¥42から¥65へ増やし、5億円の自己株式取得を始めた。AVIは自らの手法を、少数株主と利害が一致する、資本効率とガバナンスへの建設的な対話と称する。創業者がなお26%を持つため会社は買収の対象ではないが、より多くの現金還元を促されている。見方が成立するのは、自社株買いと配当の拡大が続く場合である。
弱気 弱気は需給の重しとみる。創業者を上回る35%を一ファンドが持てば、いずれ売却を迫られ、その大口の放出は長く株価を圧する。AVIが表明する「重要提案行為等」の権利は、戦略や取締役の席をめぐる創業者との衝突も招き得る。増配を勝ち取った同じ対話が公の争いに転じかねず、これほど保有が偏った株は薄商いで動く。見方が成立するのは、AVIが経営陣に反対する提案を出すか、保有を削り始める場合である。
論点 03 · バリュエーション
営業利益の約5.8倍で、アシロは割安か割安の罠か。

アシロは現金控除後で予想EV/営業利益の約5.8倍——日本のリーガルテック・メディアプラットフォーム同業(約5〜16倍)のなかでも下位にある。その安い倍率は、ROE38%だが鈍る売上と赤字の保険事業を抱える事業に付く。論点は、その割引が誤値づけか妥当な警告かである。

強気 強気は、積み上がる中核だけで会社の大半の価値があるとみる。アシロの法律メディアは利益率33%・月額更新の売上で営業利益20.4億円を稼いだ。ピアの下限である5〜6倍を当てても、その一事業だけで足元のEV(事業価値)を上回り、人材紹介・保険・純現金約15億円が上乗せ余地として残る。ROE38%がこれほど安く取引されるのは、市場が衰退を見込むときに限られる。見方が成立するのは、FY2027に成長が戻り倍率が同業中央値へ近づく場合である。
弱気 弱気は、安いのには理由があるとみる。グループ利益は、昨年1.6億円を失いなお赤字の保険事業に抑えられる。売上の約4割は、グーグルの検索順位に依存し連動して動き得る問い合わせ型の「派生」メディアである。今期は減益予想で、35%保有の株主はいずれ売り得る。低い倍率は、成長が鈍り保険損失が続くなかで低いまま留まり得る。見方が成立するのは、利益成長が再開せず保険損失も縮まらない場合である。
03 · カタリスト

資本効率レバー

高成長への回帰がなくても、経営陣が3つを証明すれば割引は縮まり得る。いずれも経営の判断の範囲か、少なくともより明確に開示できる事項である。

レバー 01 · 成長
FY2027の成長再開と200億円目標の現実味を示す
売上収益 — 実績→予想→目標(億円)
FY2021
16億円
FY2025
66億円
FY2026予
70億円
FY2030目標
200億円
5年間ほぼ40%成長、横ばいのFY2026「準備の年」、その後FY2030に3倍の目標
アシロはFY2021からFY2025まで年40%超の増収を遂げ、立て直しのためFY2026を+5.3%へ抑えた。割引を縮める最も明快な道は、その休止の終わりを示すこと——二桁成長へ戻すFY2027計画と、売上200億円のFY2030目標への目に見える進捗である。法律サイトの広告主は緩やかにしか増えないため、成長の多くは枠単価、新たなAIリーガルチェック、隣接市場への展開から生む必要がある。確認材料は、経営陣がFY2027計画を示す2026年12月のFY2026決算である。
経営の負担
実行+開示
最短の契機
FY26決算 · 2026年12月
レバー 02 · 事業運営
保険事業とAIツールを費用から利益へ転じる
FY2025のセグメント営業利益(百万円)
メディア
+2,035
人材紹介
+71
保険
−160
法律メディアのエンジンが全てを支える——保険は会社が選んで負う損失である
グループ利益は保険事業に抑えられる。法人向け商品「bonobo(ボノボ)」と新たなAIリーガルチェックを構築するなか、FY2025に1.6億円、第1四半期に0.5億円を失った。メディアのエンジンは利益率33%のため、保険損失が損益分岐へ向かう1円ごとに、ほぼそのままグループ利益へ落ちる。経営陣はこれを大きな市場——法的費用に対し保険が不足するとみる300万社超の中小企業——への投資と位置づける。確認材料は、FY2026を通じて保険損失がさらに拡大せず縮小するかである。
経営の負担
メディア利益で賄う
最短の契機
各四半期決算
レバー 03 · 資本政策
新たな40%超の配当方針のもと還元を広げ続ける
1株あたり配当(¥)
FY2022
¥12.45
FY2024
¥24.18
FY2025
¥42.20
FY2026予
¥65.00
配当は4年で5倍、配当性向は30%から40%超へ、加えて5億円の自己株式取得
2026年3月、アシロは配当性向を利益の30%から40%超へ引き上げ、中間配当を新設し、FY2026の配当を前年の¥42から¥65へ増やし、株式の約6%にあたる5億円の自己株式取得を始めた。これはAVIの取得を受けたもので、資本の軽い事業が必要としない現金を費やすことなく還元を高める。明示された増配方針は、投資家が現金還元を一時的でなく恒常的なものと捉える助けになる。確認材料は、自社株買いが更新され配当性向が40%超を保つかである。
経営の負担
取締役会の決議一つ
最短の契機
FY26決算 · 2026年12月
04 · バリュエーション

シナリオ別の道筋

¥1,449(2026年6月9日)、FY2026の営業利益予想15億円・純現金約15億円に対し、事業価値約88億円は予想EV/営業利益で約5.8倍となる。以下の3シナリオはJIIの試算であり会社計画ではない

弱気シナリオ
¥1,050 – ¥1,270
−28% 〜 −12%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~4〜5倍
成長は鈍り続け、保険損失は残り、AVIの35%保有は市場が割り引く需給の重しとなる。投資家は事業を営業利益の4〜5倍でしか評価せず、安い倍率は割安ではなく妥当な警告だったと判明する。
成立の条件
  • FY2026売上が70億円計画を下回る。
  • FY2027予想が一桁成長に留まる。
  • 保険損失が再び拡大する。
  • AVIが保有を削り始める。

ここでも純現金約15億円と増配が下値を支える。

基本シナリオ
¥1,500 – ¥1,700
+4% 〜 +17%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~6〜7倍
FY2027の成長が二桁へ戻り、保険損失は縮み始め、自社株買いが1株価値を支える。投資家は事業を1桁台半ばの倍率で評価し、増配をより高く評価する。
成立の条件
  • FY2026営業利益が15億円予想を達成。
  • FY2027が二桁成長へ回帰。
  • 保険損失が縮小し始める。
  • 配当性向が40%超を保つ。
強気シナリオ
¥2,100 – ¥2,540
+45% 〜 +75%
想定倍率 · 予想EV/営業利益 ~9〜11倍
法律メディアの成長が再加速し、保険は損益分岐に達し、AVIの対話が還元を高め続けるなか倍率は同業中央値へ切り上がる。投資家は事業を9〜11倍で評価し、ROE38%が示す高採算のフランチャイズ並みにアシロを評価する。
成立の条件
  • FY2027が二桁成長へ回帰。
  • 保険が損益分岐に達する。
  • 倍率が同業中央値へ切り上がる。
  • 自社株買いが更新・拡大される。

強気は、投資家がアシロを、そのリターンが示す高採算・資本軽量のフランチャイズ並みに評価することに依る。

サム・オブ・パーツ · 事業
法律メディア・人材紹介・保険——FY2026予想の連結営業利益ベース
FY26予想営業利益15億円
弱気 · 4〜5倍 EV/EBIT60〜75億円
基本 · 6〜7倍 EV/EBIT90〜105億円
強気 · 9〜11倍 EV/EBIT135〜165億円
連結営業利益は全社費用と保険損失を引いた後のため、事業別ではなく事業全体を一つの倍率で評価する。
サム・オブ・パーツ · セグメント別(妥当性)
営業利益の源泉——FY2025のセグメント営業利益
メディア(ベンナビ+派生)20.4億円
人材紹介0.7億円
保険(bonobo)−1.6億円
全社・その他−5.3億円
積み上がる法律メディアのエンジンがグループ全体を上回る。人材紹介は小さく改善中、保険は投資損失、全社費用がグループ利益との差である。
サム・オブ・パーツ · 現金・負債
事業価値に加える純現金(2026年1月31日)
現金・現金同等物18.3億円
有利子負債−3.3億円
投資有価証券0億円
純現金15.0億円
アシロは投資有価証券のポートフォリオを持たない。過去の買収によるのれん11.4億円は事業価値に含まれ、ここで再計上はしない。
類似企業倍率 · 予想EV/営業利益
日本のリーガルテック・メディアプラットフォーム運営会社——参考レンジ
じげん(3679)· 業種特化リードジェン~4.7倍
PR TIMES(3922)· プレスリリース配信~6.7倍
ワンキャリア(4377)· 採用メディア~9.3倍
ビジョナル(4194)· HRプラットフォーム~11倍
弁護士ドットコム(6027)· リーガルテック~16倍
アシロ(7378)~5.8倍
各社の現在株価・純現金・営業利益計画から算出した予想EV/営業利益(2026年6月9日時点)。じげんのみがより安く、アシロは残り4社を下回る。
株主価値ブリッジ · 1株あたり試算
事業価値+純現金 ÷ 自己株控除後株式数
事業価値(FY26予想営業益の4〜11倍)60〜165億円
+ 純現金15億円
= 株主価値75〜180億円
÷ 自己株控除後株式数7,083,413株
= 1株あたり試算¥1,060〜2,540
現値¥1,449比−27% 〜 +75%
中心値は1株約¥1,650。JIIの試算であり予測・目標ではない。主たる変数は、FY2027の成長が再開し倍率が同業群へ切り上がるかである。
重要なご注意

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JII Compoundersは、教育・調査を目的とする編集コンテンツです。各銘柄レポートは、日本の上場企業が公表している情報をもとに、その情報が市場でどのように受け止められてきたかを考察するものです。想定読者は、IR実務者、金融を学ぶ方、報道関係者、企業開示に関心のある方です。掲載内容は、いかなる有価証券、デリバティブその他の金融商品の取得・売却・保有を推奨、提案、勧誘するものではありません。株価水準、シナリオ、評価倍率、類似企業比較は分析方法を示すための例であり、JIIの投資判断を示すものではありません。

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