J|I Japan Investor Interface · Compounder 銘柄レポート
東証プライム · 9722 · 12月決算 FUJITA KANKO INC.
藤田観光株式会社
ビジネスホテル、宴会、リゾートを展開。利益の大半は賃借物件中心の34拠点チェーンが稼ぎ、主な自社所有資産は東京・箱根の2施設に限られる。
終値
¥1,9572026年7月21日
12か月レンジ ¥1,757〜¥2,780 · 1日の売買代金¥491M
時価総額 / EV
¥1,173億 / EV ¥1,261億
ネット負債 ¥88億 · 将来賃料¥654億は含まず
EV / EBIT · 予想
10.5
26年12月期会社予想営業利益¥120億 · 有価証券控除後コア9.6倍
ROCE · 実績
20.9% · 25年12月期
NSSK取得価格¥2,603を24.8%下回る · 取得価格ベースでは13.7倍
営業利益率 · 全社
16.8% · 25年12月期
会社予想は営業利益¥120億・13.0%減で14.5% · 自己資本比率40.4%
WHG 客室数
10,841· 34拠点
2028年目標12,000室 · 23年12月期から14室増
はじめに

藤田観光は何をしている会社か

藤田観光の事業は大きく3つに分かれる。主力はWHG事業で、ワシントンホテルとホテルグレイスリーを中心とするビジネスホテルチェーンである。2026年5月時点の規模は34拠点・10,841室。駅近の宿泊需要を取り込む一方、ホテルは原則として賃借で、国内WHGの土地は保有していない。第2の柱は、文京区の庭園を擁するラグジュアリーホテル、ホテル椿山荘東京。客室に加え、婚礼・宴会が収益源となる。第3の柱は、箱根の温泉リゾートである箱根小涌園だ。この2施設については、藤田観光が土地を所有している。

25年12月期の業績は、近年では最も強い内容だった。売上高は820億円、営業利益は13,795百万円、営業利益率は16.8%。ROCEは20.9%、ROEは25.2%と、2028年目標の10%を大きく上回った。5年前には20,611百万円の営業赤字を計上し、自己資本比率も1.2%にすぎなかった会社である。回復をけん引したのはWHG事業だ。25年12月期の売上高の60.0%を占め、営業利益率は23.3%と、ホテル椿山荘東京の7.3%、箱根小涌園の8.2%を大きく上回った。2025年8月には、コロナ禍で発行したA種優先株式を取得・消却し、普通株主に優先する請求権も解消した。

2026年2月10日、DOWAホールディングスは、自己株式を除く発行済株式の25.00%を日本産業推進機構(NSSK)に売却した。売却価格は1株2,603円。DOWAの持株比率は31.83%から6.83%へ低下し、約70年続いた資本関係は大きく後退した。NSSKは、定款変更、株式・新株予約権の発行、重要資産の売却などについて事前承諾権を得たほか、取締役2名を指名できる。うち1名は2026年3月の定時株主総会で選任された。

2026年7月21日の終値は1,957円。NSSKが5か月前に支払った2,603円を24.8%下回り、26年12月期会社予想営業利益に対するEV/EBITは10.5倍である。乖離が生じた理由は二つある。一つは、人件費増と改装影響により、会社が26年12月期営業利益を前期比13.0%減の12,000百万円と予想したこと。もう一つは、NSSKが評価したはずの5か年計画の実行がまだ見えないことだ。設備投資は350億円の枠に対して88億円、WHGの客室数は23年12月期比で14室しか増えていない。焦点は、NSSKが藤田観光で何を実現しようとしているのかである。地域の宿泊施設を集約する恒久的なプラットフォームを作るのか、それとも過去案件と同様に非公開化の布石なのか。次に確認すべきは、会社予想5,100百万円に対する上期営業利益、最初の買収開示、自社所有2施設のセグメント利益率である。本レポートでは、株価レジーム、投資家論点、株主構成・提携・競争力の変化、資本面のレバー、バリュエーションの順に整理する。

01 · 株価レジーム

過去2年、株価を動かしたものは何か

藤田観光の収益源は、賃借物件中心の34拠点ビジネスホテルチェーンであるWHG事業、客室と婚礼・宴会を組み合わせるホテル椿山荘東京、そして温泉リゾートの箱根小涌園である。WHGは借りた箱で回転率と単価を追う事業であり、椿山荘と箱根は創業来の資産を活用する事業である。

9722 vs TOPIX · 24か月 · 日足+出来高
ピーク ¥2,780 · 2026-02-10 安値 ¥1,757 · 2026-06-12 現在 ¥1,957
藤田観光・日足 60日移動平均 TOPIX リベース (1308.T) 出来高

01 · 動かなかった筆頭株主 DOWAホールディングスは約70年にわたって藤田観光株を保有し、直近では31.83%を持つ筆頭株主として、同社を持分法適用会社にしていた。議決権でDOWAを上回る株主はいなかった。営業損益は2020年12月期の20,611百万円の赤字から、25年12月期には13,795百万円の黒字へ回復した。それでも株主構成は変わらなかった。2025年8月にはコロナ期に発行した優先株式が消却されている。2026年2月9日の終値は2,593円だった。

02 · 取引の日、そして12か月高値 2026年2月10日、DOWAは25.00%の持分を1株¥2,603でNSSKに売却した。同日、藤田観光の取締役会も保有するDOWA株の一部の譲渡を決議し、2月12日に実行して特別利益を計上した。市場は、事前承諾権と業務提携を伴うコントロール投資家の登場を評価し、株価は12か月高値の2,780円まで上昇した。ただし、NSSKの取得価格は前日終値を約0.4%上回る程度であり、プレミアムを織り込んだのは市場の側だった。

03 · 反落と、引け後に出た減益予想 翌営業日の2026年2月12日、株価は14.7%安の2,370円となり、追加開示がないまま前日の上昇分を吐き出した。25年12月期決算と26年12月期予想が公表されたのは、同日15時の引け後である。市場が反応できたのは翌営業日以降だった。内容は減益予想で、26年12月期の営業利益は12,000百万円。直前期の13,795百万円を13.0%下回る見通しで、理由は人件費の上昇とホテル改装だった。株価は3月31日に2,038円まで下落した。

04 · 現時点 2026年5月14日の引け後に公表された第1四半期決算は、費用が売上より速く伸びたことを示す。売上高は3.5%増の¥19,424M、営業利益は12.5%減の¥2,586Mで、箱根小涌園は¥2Mの営業赤字だった。株価は6月12日に12か月安値の¥1,757まで下げ、7月21日には¥1,957まで戻した。26年12月期会社予想営業利益の10.5倍、2月にNSSKが払った価格を24.8%下回る水準だ。

02 · 投資家論点

市場で割れている論点

株価が、5か月前にNSSKが支払った価格を24.8%下回っている背景には、主に3つの論点がある。いずれもNSSKの次の一手に左右され、今後1年程度の開示で検証される可能性が高い。

論点 01 · NSSKが買ったもの
NSSKは恒久的な買収基盤を作るのか、非公開化の準備か。

NSSKは25.00%を取得し、取締役2名を指名できる。どちらの読み方も出発点は同じで、持分を取得し、取締役会に席を得て、ホテル取得を進める。見方が分かれるのは、その取得基盤を最終的に誰が持つのかという点である。NSSKは本件を上場維持を前提とする初の出資案件と説明しており、双方に先例がない。

強気 強気派は、この提携を、上場企業である藤田観光を買収主体として活用する構想と見る。公表された施策には、ホテルオペレーターの買収支援と、地域宿泊施設の一括取得が並ぶ。1件の取引ではなく、物件を一つずつ積み上げる基盤である。これは会社側の説明ではなくJIIの解釈だが、宿泊施設を継続的に積み上げるには、通常のファンド保有期間を超える時間軸が必要になる。ファンドが退出した後も買い続ける運営主体が必要だ。強気の見方が成立するのは、最初のバルク取得に署名するのが藤田観光であって、NSSK自身ではない場合である。
弱気 弱気はNSSKの上場企業での実績を挙げる。2022年に鴨川グランドホテルを公開買付けで非公開化し、2025年にはウィザス全株式に公開買付けを実施した。2026年6月には牧野フライス製作所の非公開化を含む法的拘束力のない提案を認めた。JIIの読みでは、将来の買付者であれば、新株発行や資産売却に対する拒否権を欲しがる理由がある。一方、純粋な提携相手にとって、その権利の必要性は相対的に低い。リスクが顕在化するのは、NSSKが結んだ追加取得の制限が失効または変更される場合である。
論点 02 · 買収そのもの
地域の宿泊施設の買収は価値を生むか、最弱の事業を広げるか。

提携の公表施策には、ホテルオペレーターの買収支援と、地域宿泊施設の一括取得が含まれる。藤田観光はすでに地域の宿泊施設を持つ。箱根小涌園がリゾート事業である。論点は、運営能力の有無ではなく、取得後に十分な利幅を確保できるかにある。

強気 運営力はWHG事業に表れている。25年12月期は売上¥49,200Mに対し営業利益率23.3%、26年1Qはグループ営業利益¥2,586Mのうち¥2,477Mを稼いだ。買収に必要な基盤を持ちながら、ほとんど使っていない。設備投資は¥350億の枠に対し¥88億、客室は2028年目標12,000室に対し23年12月期比14室増にとどまる。この差を埋めるには、買収を使う必要がある。強気が裏付けられるのは、客室数と価格を伴う最初の買収が開示される場合である。
弱気 一方で、地域宿泊施設に最も近いリゾート事業の収益性は低下している。箱根小涌園は25年12月期の営業利益率8.2%に対し、26年1Qは¥2Mの営業赤字である。ホテル椿山荘東京も同じ比較で7.3%から2.4%へ下がった。人件費の上昇は25年12月期の利益を¥1,591M、1Qを¥439M押し下げ、親会社の給与は10.7%増えた。この段差は戻らない。セグメント別の資本利益率の開示はない。弱気の見方が説得力を増すのは、下期のセグメント利益率が人件費増を吸収できない場合である。
論点 03 · 所有する土地
売却を強制できない少数株主に、所有地の価値はあるか。

ホテル椿山荘東京は文京区の49,000㎡に建ち、土地の帳簿価額は¥49Mである。箱根小涌園は795,000㎡で¥1,770M。いずれも1955年に藤田興業の観光部門が分離・独立した際に藤田観光へ移った。公表された鑑定評価はない。

強気 強気派は、帳簿価額だけでは土地の価値を測れないと見る。藤田観光は2施設を自社利用の事業用資産として開示しており、時価の注記は求められず、145ページの有価証券報告書にも記載はない。記載がないのは開示制度の帰結であって、価値がない証拠ではない。NSSKは重要資産の売却に事前承諾権を持つため、土地の価値が顕在化する売却には、事実上、筆頭株主の同意が必要になる。この見方が決着するのは、いずれかの施設について鑑定評価または売却が公表される場合である。
弱気 弱気は、用途規制が売却に及ぼす影響を指摘する。ホテル椿山荘東京の敷地は第二種風致地区に指定され、建てられるものに上限がある。箱根小涌園がある国立公園の箱根地域は96%が特別地域で、建築には自然公園法上の許可が要る。どちらもホテルが建つ土地そのものであり、土地の現金化は、そこで営む事業を閉じることを意味する。NSSKの事前承諾権は売却への拒否権であって、売却を強制する権限ではない。評価が開示されない限り、2施設の価値は稼ぐ利益にとどまる。
03 · 変化点

株主構成、提携、競争力に何が起きているか

株主構成
いま誰が株主で、その株主は何に投資したのか。
2025年8月25日 · 優先株式が消えた

コロナ下の資本増強で発行されたA種優先株式は、2025年8月に取得・消却された。この消却により、25%の持分取得は普通株主として意味を持ちやすくなった。新たな株主が優先株式の請求権に劣後しなくなるためである。自己資本比率も2020年12月期の1.2%から25年12月期末の37.3%、2026年3月時点の40.4%へ回復した。次の確認点: 回復した貸借対照表を何に使うか。

2026年2月10日 · 二重の解消

DOWAホールディングスは14,980,000株——自己株式を除く発行済株式の25.00%——をNSSK-GAMMA2合同会社に売却した。価格は1株¥2,603、総額¥38,992,940,000である。自身の保有は31.83%から6.83%へ下がった。同日、藤田観光の取締役会は保有するDOWA株の一部をDOWAの自己株式取得に応じて譲渡することを決議した。売却は2月12日に成立し、第1四半期に¥5,999Mの特別利益を計上している。両社は約70年続いた株式持ち合いを、実質的に数日で解消した。次の確認点: DOWAに残る6.83%の行方。

2026年3月25日 · NSSKのパートナーが取締役会に入る

定時株主総会で、NSSKのパートナーである松永安彦氏が社外取締役に選任された。賛成率は90.9%で、中央値が約97.4%だった11名の候補のうち2番目に低い。同社は同氏を、東京証券取引所の独立性要件を満たす4名の取締役には挙げていない。NSSKは合計2名の取締役指名権を持つ。次の確認点: NSSKの2人目の候補が議案に載るか、その賛成率がどうなるか。

提携関係
誰と組み、何が変わったのか。
2026年2月12日 · ワシントンホテルとの提携

藤田観光はワシントンホテル株式会社と業務提携契約を結んだ。名称は似ているが、藤田観光自身のWHG事業とは別の会社であり、NSSKの取引とも関係がない。藤田観光のチェーンは東日本、ワシントンホテルは西日本を地盤とし、合わせて76拠点・約20,000室を運営する。狙いは相互に送客し、稼働率と直販比率を高めることにある。次の確認点: 同社が一度も開示したことのない直販比率の公表。

2026年4月1日 · 会員プログラムの相互開放

両チェーンの会員は相互に相手方ホテルを利用できるようになり、43施設が加わることで、合計約90施設、約150万人の会員基盤が一体化した。提携のなかで最も費用のかからない一歩である。資本を必要とせず、効果が出れば新しい売上の科目ではなく稼働率に現れる。次の確認点: 上期と比べた下期のWHG稼働率。

2026年5月1日 · 出資比率の引き上げ

藤田観光は少数株主からワシントンホテル株を追加取得し、保有比率を7.1%から10.2%——861,280株から1,239,680株——へ引き上げた。価格は開示されず、業績への影響は軽微と説明されている。1割を持つ以上、藤田観光はワシントンホテルの取引相手というより一部の所有者に近い。次の確認点: 連結に向けて保有比率がさらに上がるか。

競争力/陳腐化
競争力はどこにあり、何がそれを削っているか。
26年12月期 · 人件費増は戻らない

親会社の給与は10.7%増え、人件費の上昇は25年12月期の営業利益を¥1,591M、26年第1四半期を¥439M押し下げた。四半期の減益のうち約¥550Mはホテルの改装によるもので、客室の売り止めが¥420M、投資一時費用が¥130Mである。これは工事が終われば消える。人件費増は消えず、工事が残す¥120Mの減価償却の増加も消えない。四半期の売上の伸びは総費用の伸びを3.0ポイント下回った。25年12月期は0.9ポイント上回っており、通期予想は2.9ポイント下回る前提である。次の確認点: 下期にこの差が縮まるか。

2024年2月14日〜 · 超過達成、しかし未実行

2024年2月に公表された中期経営計画2028は、2028年の目標として売上高¥800億、営業利益¥80億を掲げた。25年12月期は¥820億と¥13,795Mを出し、経営陣は2026年2月12日の決算説明で数値計画はすでに達成したと述べた。達成されていないのは実行である。設備投資は¥350億の枠に対し¥88億、WHGの客室は12,000室の目標に対し10,841室——23年12月期比で14室増にとどまる。次の確認点: 後継計画の公表か、買った客室数。

継続中 · 賃借では再現しにくい部分

WHG事業は34のホテルを賃借し、その敷地を所有していない。競合も同様の賃貸借契約を確保できれば、似たチェーンを構築できる。例外が自社所有の2つの土地である。文京区の49,000㎡と箱根の795,000㎡で、いずれも同社を生んだ1955年の分離・独立以来保有し、帳簿価額は¥49Mと¥1,770M、鑑定評価の公表はない。次の確認点: いずれかの土地に公の評価が付くか。

04 · カタリスト

開示と資本のレバー

NSSKの登場をどう評価すべきかは、今後の3つの開示で見えてくる。いずれも時期を特定しやすく、うち2つは経営陣が公表タイミングを握っている。

レバー 01 · 買収
客室数と価格を伴う最初のホテル取得を開示する
2028年目標に対するWHGの客室数
19年12月期
10,476
23年12月期
10,827
2026年5月 · 34拠点
10,841
2028年目標
12,000
設備投資の実行額
¥88億
5か年の投資枠
¥350億
23年12月期から2026年5月までの増加は14室。12,000室までの差は買って埋めるほかない
経営陣は2028年の客室目標を買収による目標とは呼んでいない。WHGの客室は23年12月期から2026年5月までに14室しか増えておらず、12,000室までの距離を残る期間で自力で埋め切ることは難しい。提携では、地域宿泊施設の一括取得が施策として掲げられている。1件の取引ではなく、物件を一つずつ積み上げる基盤である。客室数と価格を伴う開示が出れば、提携の文言は、実行速度を測れる材料に変わる。試金石は、26年12月期決算より前に1件の買収が開示されるかである。
経営の負担
取締役会決議と現金
最短の契機
26年12月期上期決算
レバー 02 · 業績予想
経営陣が織り込んだ人件費増を、下期で吸収できることを示す
営業利益、23年12月期→26年12月期予想(¥M)
23年12月期
6,636
24年12月期
12,309
25年12月期
13,795
26年12月期予想
12,000
上期に置いた減益幅
¥1,777M
通期の減益幅
¥1,795M
上期の営業利益予想は¥5,100M、25.8%減。通期の減益幅のほぼ全てがここに置かれている
経営陣は通期の減益幅¥1,795Mのうち¥1,777Mを上期に置き、下期に残したのは¥18Mである。これは願望ではなく検証できる主張だ。約550百万円の改装影響は工事終了とともに剥落する一方、人件費増と¥120Mの減価償却の増加は残り、第1四半期はすでに開示されている。下期が予想どおりに着地すれば、26年12月期の減益はトレンドの悪化ではなく一時的な段差であり、現在の10.5倍は谷の年の利益に付いた倍率となる。確認材料は、会社予想¥5,100M以上の上期営業利益である。
経営の負担
決算発表1本
最短の契機
26年12月期上期決算
レバー 03 · 株主還元
配当性向10%と未消化の投資枠を、明文の資本政策に変える
1株配当、株式分割後ベース(円)
25年12月期 実績
¥14.00
26年12月期 予想
¥20.00
25年12月期 配当性向
9.4%
26年12月期 予想配当性向
10.4%
自己資本比率 · 26年12月期1Q
40.4%
配当はいずれも2026年1月1日効力発生の1株→5株の株式分割後ベースである
25年12月期の配当は株式分割後ベースで1株¥14、提出会社ベースの配当性向は9.4%だった。26年12月期は同じベースで¥20を予想する——42.9%増、配当性向10.4%、¥1,957に対する利回りは1.02%である。稼いだ利益の約9割を残しながら、自己資本比率は40.4%、設備投資は¥350億の枠に対し¥88億にとどまる。株主がこの内部留保を評価できるのは、それが何に使われるかを見てからである。注視すべきは、明文の資本政策か、留保した現金が充てられる買収である。
経営の負担
取締役会決議
最短の契機
26年12月期決算 · 2027年2月
05 · バリュエーション

シナリオ

2026年7月21日の¥1,957において、企業価値¥1,261億は26年12月期の会社予想営業利益¥12,000Mの10.5倍にあたる。投資有価証券¥11,329Mを企業価値から控除すれば9.6倍である。NSSKが2月に払った¥2,603は、同じ予想利益に対し13.7倍だった。以下の3シナリオはJIIの試算であり会社計画ではない

弱気シナリオ
¥1,550 – ¥1,750
−21% 〜 −11%
想定倍率 · 会社予想ベースのEV/EBIT ~8.5〜9.5倍
人件費増が吸収されず、NSSKの登場が具体的な取引につながらない。営業利益は会社予想¥12,000M以下にとどまり、箱根小涌園とホテル椿山荘東京は損益均衡近辺が続き、株価は6月12日の安値¥1,757へ向かう。
成立の条件
  • 上期営業利益が会社予想¥5,100Mに届かない。
  • 箱根小涌園が損益均衡以下にとどまる。
  • 26年12月期を通じて買収の開示がない。
  • 人件費増が27年12月期予想にも続く。

この場合でも貸借対照表は懸念ではない。自己資本比率40.4%、ネット負債¥88億である。

基本シナリオ
¥1,950 – ¥2,250
横ばい 〜 +15%
想定倍率 · 会社予想ベースのEV/EBIT ~10.5〜12.0倍
下期が経営陣の予想どおりに着地し、提携が最初の取得を生む。投資家は26年12月期を谷の年として評価し続けるが、信用して受け取るしかない提携ではなく、目に見える実行速度を手にする。
成立の条件
  • 上期営業利益が¥5,100M以上となる。
  • 地域の宿泊施設の最初の買収が開示される。
  • 26年12月期売上が会社予想¥830億に達する。
  • 26年12月期配当が分割後¥20で支払われる。
強気シナリオ
¥2,450 – ¥2,700
+25% 〜 +38%
想定倍率 · 会社予想ベースのEV/EBIT ~13.0〜14.2倍
買収による拡大が目に見えるものになる。価格を伴う取得が公表され、WHGは12,000室の目標へ進み、市場は、2月にNSSK自身が支払った13.7倍に近い倍率を許容する。
成立の条件
  • 価格を伴う宿泊施設の取得が2件以上開示される。
  • WHGの客室数が11,000室を上回る。
  • 下期の利益率が25年12月期の16.8%へ戻る。
  • 後継計画が実行の目標を示す。

レンジ上限の14.2倍は、共立メンテナンスの14.4倍をわずかに下回る。同社は最も近い上場比較対象であり、やはりホテルを賃借するチェーンである。

サム・オブ・パーツ · WHG、賃借のチェーン
営業利益のほぼ全てを稼ぐチェーン
25年12月期売上 · 全社比¥49,200M · 60.0%
25年12月期営業利益率23.3%
26年12月期1Q営業利益率20.9%
26年12月期1Q営業利益全社¥2,586M中¥2,477M
巡航ベース営業利益(JII)~¥100億
共立メンテナンスの14.4倍で~¥1,440億
第1四半期は婚礼・宴会の季節的な谷であり、WHGの通期の利益シェアは、四半期に示した¥2,586M中¥2,477Mより低くなる。
サム・オブ・パーツ · 自社所有の2施設
貸借対照表が示す土地の価額
ホテル椿山荘東京 · 土地49,000㎡ · ¥49M
ホテル椿山荘東京 · 建物¥11,306M
箱根小涌園 · 土地795,000㎡ · ¥1,770M
箱根小涌園 · 建物¥16,330M
連結の土地(全拠点)¥5,990M
公表された時価なし
2施設はいずれも自社利用の事業用資産であり、時価の注記は求められず、145ページの有価証券報告書にも記載はない。JIIは土地に価値を置いていない。
貸借対照表 · 事業の外にあるもの
ネット負債、有価証券、そして預り金
有利子負債(2026年3月31日)¥25,723M
現金(2026年3月31日)¥16,901M
= ネット負債¥8,822M
投資有価証券¥11,329M
有価証券控除後のコアEV¥114,754M
÷ 会社予想営業利益¥12,000M = cEV/EBIT9.6倍
会員預り金¥10,025M
有価証券はDOWA株の売却により¥16,716Mから減った。残るのはDOWA株996,000株で、7月21日終値では¥8,237Mである。会員預り金は、通常のEV計算には含まれない。
類似企業 · 予想EV/EBIT
2026年7月21日の終値 · 各社の予想営業利益ベース
ロイヤルホテル(9713)7.0倍
藤田観光(9722)10.5倍
リゾートトラスト(4681)11.0倍
平和(6412)14.3倍
共立メンテナンス(9616)14.4倍
帝国ホテル(9708)47.8倍
各社の直近の会社予想営業利益と7月21日の終値による。ロイヤルホテルの企業価値には優先株式¥6,275Mを含む。
類似企業 · 各社の位置づけ
比較が成り立つ点と、成り立たない点
共立メンテナンス(9616)賃借中心のドーミーインと、寮事業の安定収益
ロイヤルホテル(9713)資産保有が薄い比較対象。2023年に大阪の土地を売却
リゾートトラスト(4681)会員権事業。ホテルの利益率は5.1%
平和(6412)ゴルフ場の不動産。EVの73%が負債
帝国ホテル(9708)東京の希少な土地、再開発の途中
最も近い比較対象は共立メンテナンスである。帝国ホテルの47.8倍は利益の倍率ではなく資産の代替指標であり、上限を示す目安としてのみ並べている。
相殺要因 · ¥654億の賃借義務
共立メンテナンスとの比較が無条件ではない理由
WHGが国内で所有する土地なし
未経過の賃借料¥65,369M
¥1,261億のEVに含まれるか含まれない
開示ベースのネット負債¥8,822M
自己資本比率 · 26年12月期1Q40.4%
この賃借義務を企業価値に加味すれば、共立メンテナンスの14.4倍に対する割安感の大半は薄れる。単純比較は、藤田観光を実態より有利に見せやすい。
株主価値ブリッジ · 1株あたり試算
WHGを類似企業のレンジで評価し、2施設をゼロとし、ネット負債を引く
WHGの巡航ベース営業利益~¥100億
× 11.0〜14.4倍(リゾートトラスト〜共立)¥1,100億 – ¥1,440億
+ 自社所有の2施設¥0
− ネット負債− ¥88億
= 株主価値¥1,012億 – ¥1,352億
÷ 自己株控除後株式数59,918,510株
= 1株あたり試算¥1,689 – ¥2,256
終値¥1,957比−14% 〜 +15%
2施設は土地も25年12月期のセグメント利益¥2,408Mもゼロとして扱っており、レンジは保守的である。JIIの試算であり、予測でも目標でもない。
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