要点

  • TOPIXは、もともと東証一部の全銘柄を対象とする浮動株時価総額加重型の指数だった。市場区分再編後も投資家への影響を抑えるため既存銘柄をいったん継続採用し、段階的に見直してきた。
  • 第1段階(2022年10月~2025年1月)では、流通株式時価総額100億円未満の銘柄について、構成比率を四半期ごとに10回に分けて引き下げた。構成銘柄数は約2,200から約1,700へ減少した。
  • 第2段階では、2026年10月に初回の定期入替を行う。新規採用と継続採用で異なる基準を設け、プライム・スタンダード・グロースの3市場から銘柄を選ぶ。移行完了時の構成銘柄数は約1,200と試算されている。

なぜTOPIX改革は市場区分改革と一体なのか

旧TOPIXは、東証一部の銘柄を広く網羅する指数として設計されていた。東証一部に上場すれば原則としてTOPIXにも組み入れられ、TOPIX連動資金の買い需要を受ける。この仕組みは市場全体を捉えるうえでは分かりやすい一方、東証一部の銘柄数が増えるにつれて、指数の構成と投資対象としての流動性が必ずしも一致しなくなった。

2019年12月の金融審議会「市場構造専門グループ」報告書は、市場区分とTOPIXの構成を切り分ける方向を示した。市場区分は上場会社の位置づけと上場維持基準を定める制度であり、指数は運用資金が実際に売買できる銘柄群を表す投資指標である。両者を同じ基準で動かし続ける必然性はない。

JPXは、この考え方に基づき、TOPIXの市場代表性と投資対象としての機能性を両立させる改革を進めている。2024年3月末時点でTOPIXへの連動運用資産は約110兆円に達しており、構成銘柄を一度に大きく入れ替えれば市場への影響も大きい。このため、改革は二段階に分けて実施されている。

第1段階(2022年10月~2025年1月)――既存銘柄を段階的に絞り込む

2022年4月の市場区分再編時、JPXは旧TOPIXの構成銘柄を、移行先がプライム、スタンダード、グロースのいずれであるかにかかわらず継続採用した。指数の連続性を優先したためである。

そのうえで、所定の判定により流通株式時価総額が100億円未満となった銘柄を「段階的ウエイト低減銘柄」に指定した。対象銘柄の構成比率は、2022年10月末から2025年1月末まで、四半期ごとに10段階で引き下げられた。2023年10月には再評価も行われ、流通株式時価総額の改善を反映できる仕組みが設けられた。

この移行によって、TOPIXの構成銘柄数は改革前の約2,200から約1,700へ減少した。小型銘柄を直ちに除外するのではなく、時間をかけてウエイトを低減したのは、指数連動ファンドの売買を分散し、個別銘柄への急激な市場影響を抑えるためである。

第2段階(2026年10月以降)――市場区分から独立して定期入替を行う

第2段階では、TOPIXの母集団がプライム市場だけでなく、プライム・スタンダード・グロースの3市場に広がる。市場区分そのものは採用条件ではなくなり、売買のしやすさと浮動株時価総額に基づいて銘柄を選ぶ。

初回の定期入替は2026年10月、2回目は2028年10月に実施され、その後は毎年10月に定期入替を行う予定である。初回入替で継続採用されない銘柄は、2026年10月から2028年7月まで、四半期ごと8段階でウエイトが引き下げられる。2027年10月には再評価があり、継続基準を満たした銘柄は、その後のウエイト低減が停止される。

新規採用と継続採用の基準

次期TOPIXでは、構成銘柄でない会社に適用する追加基準と、すでに構成銘柄である会社に適用する継続基準が分けられている。

指標 追加基準 継続基準
年間売買代金回転率 0.20以上 0.14以上
浮動株時価総額の累積比率 上位96%以内 上位97%以内

継続基準を追加基準より緩くしているのは、わずかな数値変動で構成銘柄が頻繁に入れ替わるのを防ぐためである。指数の安定性を保ちながら、流動性の低い銘柄を徐々に入れ替える設計となっている。

年間売買代金回転率は、単純な「年間売買代金÷期末時価総額」ではない。直近12か月の月次回転率を合計して算出し、各月の回転率には東証の売買立会における日次売買代金の中央値、営業日数、月末の浮動株時価総額を用いる。浮動株時価総額の累積比率も、回転率基準を満たし、整理銘柄や特別注意銘柄でない銘柄群の中で計算される。

「流通株式」と「浮動株」は同じではない

市場区分の上場維持基準で使う流通株式と、TOPIXの算出に使う浮動株は、似た考え方ではあるが同一ではない。流通株式は東証の上場制度に基づく定義であり、上場維持基準の判定に使われる。一方、TOPIXではJPX総研の算出要領に基づく浮動株比率を用い、指数ウエイトを調整する。

そのため、流通株式比率が改善したからといって、TOPIXの浮動株比率や採用判定が同じ幅で動くとは限らない。政策保有株式の売却や大株主構成の変化は両方に影響し得るが、IR部門はそれぞれの算定方法を別に確認する必要がある。

第1段階と第2段階のスケジュール

時期 内容 構成銘柄数の目安
改革前 東証一部の銘柄を原則として採用 約2,200
2022年10月~2025年1月 第1段階。対象銘柄のウエイトを10回に分けて低減 約1,700
2025年2月~2026年9月 第1段階完了後の移行期間 約1,700
2026年10月 次期TOPIXの初回定期入替 ―
2026年10月~2028年7月 移行措置銘柄のウエイトを8段階で低減 約1,200へ縮小する試算
2027年10月 移行措置銘柄を再評価 ―
2028年10月以降 2回目の定期入替。その後は毎年実施 約1,200を想定

約1,200という数字は試算であり、実際の構成銘柄数は定期入替時の市場状況や非定期の追加・除外によって変わる。それでも、改革前に比べて銘柄数が大きく絞られ、売買のしやすさを明示的に反映する指数へ変わる方向は明確である。

上場会社にとって何が変わるのか

最も重要なのは、市場区分と指数採用が別の評価になることである。スタンダード市場やグロース市場の会社でも、追加基準を満たせばTOPIXに採用され得る。一方、プライム市場の会社でも、流動性や浮動株時価総額が継続基準に届かなければ、TOPIXから外れる可能性がある。

ただし、会社が短期的な施策だけで指数採用を確実に「取りに行ける」と考えるべきではない。売買代金は投資家の需要に左右され、浮動株比率の判定にも独自の算定方法がある。株式分割や株式併合は、株主構成や企業価値が変わらなければ、通常は浮動株時価総額そのものを増やさない。指数対応は、株主基盤の分散、情報開示の充実、投資家との継続的な対話、事業価値の向上といった中長期の取組みの結果として捉えるのが適切である。

IR担当者への示唆

  1. 市場区分とTOPIX採用を別々に管理する。 プライム上場であることとTOPIX構成銘柄であることは、今後は独立した状態になる。社内資料でも二つを混同しない。
  2. 追加基準と継続基準を取り違えない。 既存構成銘柄には0.14・上位97%、新規採用候補には0.20・上位96%が適用される。
  3. 流通株式と浮動株の算定を分けて確認する。 上場維持基準の数値を、そのままTOPIX判定に流用しない。必要に応じて指数算出要領と浮動株比率の算定方法を参照する。
  4. 2026年10月の初回入替と2027年10月の再評価を日程に入れる。 移行措置銘柄に該当する場合、ウエイト低減の進み方と再評価の条件を投資家に説明できるようにする。
  5. 指数採用を短期的な株価対策として扱わない。 流動性の向上は、情報開示、投資家層の拡大、株主構成、企業価値の積み重ねで生まれる。IR、財務、経営企画が共通の前提で取り組む必要がある。

出典・参考資料

関連記事

  • 3.1――4区分から3区分へ:TOPIX改革と同時に進んだ市場区分の見直し。
  • 3.2――流通株式比率:上場維持基準で使う流通株式の定義と算定。
  • 3.3――経過措置終了後の上場維持ルール:市場区分側の移行措置と改善期間。
  • 4.1――PBR1倍割れをどう読むか:市場評価と資本効率をめぐる東証の要請。
  • 1.1――「ROE8%」が改革の基準になった理由:資本効率を政策課題として捉えるようになった経緯。